英国は、米国から数か月にわたる外交的圧力を受け、Appleに対して暗号化されたクラウドシステムへのバックドアを作成するよう求めていた要求を撤回したと、国家情報長官トゥルシー・ギャバード氏の声明で明らかになりました。
ギャバード氏は月曜日、X上でこの決定を発表し、米国政府が英国のパートナーと緊密に協力し、「米国市民の個人データが引き続き守られ、私たちの憲法上の権利と市民的自由が保護されるよう努めた」と述べました。
この方針転換は、暗号化通信への政府アクセスをめぐる世界的な議論において重要な進展であり、米国市民のデジタルプライバシー権の保護を懸念する米国当局者にとっての勝利を意味します。
英国政府の当初の要求は、2025年1月に同国の調査権限法に基づき発行された技術能力通知を通じて出されました。この命令は、Appleに対し、英国国外のユーザーを含むエンドツーエンド暗号化されたクラウドデータへの包括的なアクセスを提供することを求めるものでした。
Appleはこの英国の要求に対し、2025年2月に英国ユーザー向けの「高度なデータ保護」機能を無効化することで対応しました。この機能はiCloudデータストレージにエンドツーエンド暗号化を提供し、Apple自身でさえデータにアクセスできなくなります。
Appleはこの要求に失望を表明し、「自社製品にバックドアを組み込んだことは一度もなく、今後もそのようなことはしない」と述べました。その後、Appleは調査権限審判所を通じて命令の合法性に異議を申し立て、英国政府による審理の非公開化の試みは却下されました。
「顧客のプライバシーに対する脅威やデータ侵害が増加し続けている中で、ADP(高度なデータ保護)による保護が英国のお客様に提供できなくなることを非常に遺憾に思います」とAppleは当時述べていました。
米国の議員らは、英国の暗号化に関する要求に大きな懸念を示していました。2月には、ロン・ワイデン上院議員(オレゴン州選出・民主党)とアンディ・ビッグス下院議員(アリゾナ州選出・共和党)がギャバード氏宛てに書簡を送り、Appleにバックドアの作成を強制することは「米国民および米国政府のプライバシーとセキュリティを深刻に脅かす」と主張しました。
議員らは、Appleが市場ごとに異なる暗号化ソフトウェアを作成していないため、英国当局向けに作られたバックドアが米国ユーザーにも影響を及ぼす可能性があると指摘しました。また、Appleが要求に従わざるを得なくなった場合、米国は英国とのサイバーセキュリティおよび情報共有の取り決めを再考すべきだと提案しました。
この論争は、Appleと政府当局との間で暗号化アクセスをめぐって過去に起きた対立を想起させます。2015年には、Appleがサンバーナーディーノ事件の実行犯が所有していたiPhoneへのアクセスを巡り、米国政府と長期にわたる法廷闘争を繰り広げました。最終的にFBIは、Appleがデバイスのセキュリティを回避するカスタムソフトウェアの作成を拒否した後、サードパーティの業者を通じてアクセスを獲得しました。
翻訳元: https://cyberscoop.com/uk-abandons-apple-backdoor-demand-after-us-diplomatic-pressure/