AzureStrikeは、Azure Active Directory(Azure AD)を利用する組織のセキュリティ体制を評価するために、レッドチームやペネトレーションテスターを支援するために構築されたオフェンシブセキュリティツールキットです。企業が重要なアイデンティティ基盤をクラウドへ移行する中で、攻撃者は従来のオンプレミスActive Directoryから、ハイブリッドおよびクラウドネイティブな展開へと焦点を移しています。AzureStrikeは、Microsoftのアイデンティティプラットフォームに対して現実的な攻撃者の手法をシミュレートするための偵察、永続化、認証情報悪用モジュールをオペレーターに提供します。

MimikatzのようなツールがWindowsの認証情報ストアをターゲットにし、Havoc C2がエンドポイントのコマンド&コントロールに焦点を当てているのに対し、AzureStrikeはクラウド環境内のアイデンティティ攻撃に特化しており、防御側が十分に備えられていない領域に注目しています。
特徴
AzureStrikeの主な機能は以下の通りです:
- 列挙:Azureテナント、ドメイン、ユーザーの発見による攻撃対象領域のマッピング。
- 認証情報の検証:Microsoftのログインエンドポイントに対する認証情報のテスト。
- トークン悪用:アクセス・トークンの操作や再利用によるアイデンティティのなりすまし。
- 永続化手法:長期的なアクセスのためのサービスプリンシパル、アプリケーション登録、委任権限の悪用。
- 偵察:サブスクリプション、リソース、構成情報の収集。
インストール
AzureStrikeはPythonで記述されており、最小限の依存関係で任意のレッドチーム環境にデプロイ可能です。
git clone https://github.com/dmcxblue/AzureStrike.git cd AzureStrike pip install –r requirements.txt |
依存関係のインストール後、コマンドラインからツールを実行できます。
使い方
AzureStrikeを--help
フラグ付きで実行すると、利用可能なモジュールと引数が表示されます:
$ python3 azurestrike.py —help usage: azurestrike.py [options] Options: —enum–users Azure AD usersを列挙 —enum–domains Azure AD domainsを列挙 —check–creds ユーザー名/パスワード認証情報を検証 —token–abuse アクセス・トークンの再利用または偽造 —persistence 永続化メカニズムの展開 –h, —help このヘルプメッセージを表示して終了 |
オペレーターは、偵察、認証情報の検証、または永続化の確立のためにモジュールを選択します。各機能は、クラウド向けMITRE ATT&CKフレームワークの戦術と密接に対応しています。
攻撃シナリオ
ハイブリッドな企業環境に対するレッドチーム演習は、AzureStrikeの価値を示します。
- オペレーターはまず、Azureテナント内の有効なアカウントを特定するためにユーザーを列挙します。
- 盗まれた、または推測した認証情報をMicrosoftのログインエンドポイントで検証します。
- 足場を確立した後、AzureStrikeのトークン悪用モジュールを使用して特権アカウントになりすまします。
- 永続化モジュールにより、委任権限を持つ悪意あるサービスプリンシパルを登録し、元の侵害アカウントがリセットされても継続的なアクセスを確保します。
この一連の流れは、現実世界の攻撃者の行動を反映しており、多くの組織のAzure AD導入における検知や対応のギャップを浮き彫りにします。
レッドチームにおける重要性
AzureStrikeは、アイデンティティ攻撃がクラウドへと進化していることを強調します。Meterpreterのような従来のポストエクスプロイトツールはエンドポイントで優れた性能を発揮しますが、Azureでのアイデンティティ侵害には特化したアプローチが必要です。Azure ADに特化したフレームワークを提供することで、AzureStrikeはレッドチームが組織のクラウド中心型攻撃への耐性を検証するのに役立ちます。
防御側にとっては、アプリケーション登録の監視、異常なトークン利用、条件付きアクセス制御の強化が必要であることを示しています。
まとめ
AzureStrikeは、レッドチームの武器庫にタイムリーに加わったツールです。企業が認証やアクセス制御にAzure Active Directoryをますます依存する中、攻撃者はこの重要な領域を悪用する方向にシフトしています。AzureStrikeは、これらの攻撃をシミュレートすることで、クラウドアイデンティティの耐性を現実的にテストできます。防御側にとっては、検知や強化の取り組みをAzureにも拡張する必要性を喚起するものです。従来のエンドポイント中心の制御では不十分なことが多いのです。
詳細情報やダウンロードはこちら:https://github.com/dmcxblue/AzureStrike
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