コメンタリー
クリス・イングリス(米国初代国家サイバー長官、Semperis戦略顧問):私のキャリアの大部分において、戦場とは目で見て手で触れることのできる具体的な場所でした。砂漠、都市、山岳地帯、海洋——地形を指差し、前線を定義し、海外の戦場と国内の日常生活を明確に区別することができました。しかし今日、最も重要な戦場のひとつはほぼ完全に目に見えません。それがサイバー空間です。サイバー空間は常に身近に存在し、持続的に機能し、現代の生活のほぼあらゆる領域に織り込まれています。
この「見えない」という性質が、現在進行中の争いの本質を多くの人に誤解させてきました。サイバー紛争は今もなお、IT部門やセキュリティチームの専門領域という狭い技術的問題として扱われすぎています。しかし、それだけでは不十分です。現代の紛争において、サイバーは周辺的な問題ではありません。国家が競い合い、犯罪者が混乱を引き起こし、社会が試される中心的な舞台なのです。そして従来の戦場と異なり、この戦場は「どこか遠く」にあるわけではありません。ネットワークが存在するところが前線であり、今日それはほぼどこにでも存在します。
私たちは現代生活の基盤をデジタルインフラに依存しています。病院は診療の調整や投薬管理にそれを頼り、電力・水道などのインフラ事業者は安定供給にそれを必要とし、金融機関は決済や商取引の維持にそれを欠かせません。地方自治体は緊急サービス、教育、社会的支援の提供にそれを活用しています。食料の購入、家族との連絡、都市内での移動といった日常的な利便性でさえ、多くの人が目にすることのないシステムの上に成り立っています。これらのシステムが機能不全に陥ったとき、あるいは意図的に妨害されたとき、その影響はもはや抽象的なものではありません。即座に、個人的に、そして社会的に現れます。
だからこそ、サイバーインシデントを「単なるITの問題」として片付けてはなりません。病院がシステムから締め出されたとき、それは単なる技術的な障害ではありません。患者ケアへの脅威であり、場合によっては人命に関わる問題です。パイプラインが停止されたとき、エンジニアが不便を強いられるだけでは終わりません。燃料不足、経済的混乱、社会不安が引き起こされます。市の行政機関が重要システムへのアクセスを失ったとき、その影響は学校、初動対応者、そしてそのサービスに依存する脆弱な市民たちへと波及します。サイバー空間における攻撃は見えないかもしれませんが、その結果は物理的な世界で確かに感じられます。
この競争の本質についても、冷静に認識する必要があります。一部の敵対勢力の目的は、データの窃取や金銭の恐喝にとどまりません。重要インフラを危険にさらし、信頼を失墜させ、侵害そのものの範囲を超えた混乱の感覚を生み出すことを狙っています。その意味で、サイバー紛争はテクノロジーの問題であると同時に、心理戦でもあります。大規模インシデント発生後に広がる恐怖、混乱、信頼の喪失は、それを引き起こした技術的な侵害と同じくらいの打撃を与えます。
この領域における最大の課題のひとつは、防御側がいまだにサイロ(縦割り)思考で動きがちなのに対し、攻撃側がシステム全体を俯瞰して動いている点です。私たちはデバイス、ネットワーク、データセンター、あるいは事業部門という単位で考えがちです。しかし敵対勢力は接続されたシステム全体を見渡し、どこが脆弱か、どこで依存関係が集中しているか、局所的な侵害がいかにして広範な混乱を生み出せるかを考えます。効果的に防御するためには、私たちもその広い視野を持つ必要があります。デジタルインフラの回復力は、孤立したノードを一つひとつ強化していくことでは構築できません。システム同士がどのように相互接続しているか、単一障害点がどこに存在するか、そして問題が起きた際——「もし」ではなく「いつ」——にどう継続性を確保するかを理解することが不可欠です。
この考え方は、国家安全保障に携わってきた者にとって決して異質ではありません。制服を着ていたとき、私たちはシステムが必ず失敗することを前提としていました。混乱に備えて計画を立てていました。冗長性、継続運用体制、代替手段に投資していました。それは回復力が贅沢品ではなく、打撃を吸収するか崩壊するかの分かれ目だと理解していたからです。同じ原則を今、サイバー空間においても適用しなければなりません。取締役会から市役所に至るまで。防御だけに目を向けるのでは、もはや不十分です。組織は防衛ラインが破られた際に、迅速に対応し、回復し、信頼を取り戻す能力を持たなければなりません。
こうした現実は、『Midnight in the War Room』において鮮やかに描かれています。この作品は、2026年8月5日にラスベガスで開催されるBlack Hatカンファレンスで世界初公開される予定です。病院内でのサイバー危機をドラマ化したこの映画では、患者ケアが危機にさらされ、リーダーたちが厳しい現実に直面します。敵対勢力が業務システムだけでなく、それを守るはずのバックアップや危機対応計画そのものをも侵害してしまっていたのです。シナリオはフィクションですが、その根底にある危険は現実のものです。世界中の組織が同様の脅威に直面しており、多くの場合、そうした局面が求める準備、連携、回復力を欠いたままでいます。
より広いメッセージはシンプルです。サイバーセキュリティは単にデータを守ることではありません。人命を、生活を、そして現代社会が依存する基盤となるシステムを守ることです。戦場は見えないかもしれませんが、戦争はすでにここにあります。多くの人がまだ十分に認識していない形で、日常生活を変え続けています。今こそ、この現実をあるべき真剣さで受け止める時です。