独立機関とされる組織のトップを大統領が自由に解任できると認めた最高裁判決を受け、欧州連合(EU)と米国の間で結ばれている重要なデータプライバシー協定が危機に瀕しています。
ウィーンを拠点とするプライバシー擁護団体noybの創設者マックス・シュレムス氏は火曜日付の書簡で、EUから米国企業への個人データ移転を認めるEU・米国データプライバシー枠組み(DPF)の無効化を求めて提訴する方針を欧州当局に伝えました。
米国によるデータ収集手法への懸念に対応するため欧州委員会が2023年に正式採択したこの法律の最新版では、データ移転が適切に規制・制限されていることを確認する独立した米国機関による監督が求められています。これまでその役割を担ってきた中心的な組織が米連邦取引委員会(FTC)でした
。
最高裁は月曜日、ドナルド・トランプ大統領がFTC委員のレベッカ・スローター氏を正当な理由なく解任したことは合法だとする判断を示し、FTCおよび同様の機関の独立性に疑問符を投げかけました。
「EU・米国間のデータ移転協定の根拠は失われた」。シュレムス氏は火曜日に発表した声明でこう述べました。「我々は欧州委員会に対し、米国クラウドからの秩序ある撤退を開始するよう求める。容易ではないが、避けては通れない道だ」
「欧州委員会は業界からの圧力を受け、砂上の楼閣のような法的枠組みを築いてしまった」とシュレムス氏。「それが今、明白に崩れ去ろうとしている以上、委員会は責任を取らなければならない」
裁判所がシュレムス氏の主張を認めれば、欧州と米国間のデータの流れそのものが脅かされる可能性があります。実際、MetaとGoogleは、米国へのデータ移転が認められなくなった場合は欧州から撤退すると既に表明しています。
専門家によれば、DPFの存在は年間1兆7,000億ユーロ(1兆9,000億ドル)にのぼる大西洋間貿易を支えています。
シュレムス氏は、欧州から米国へのデータ移転をめぐりこれまで2度の訴訟で勝訴しており、欧州のプライバシー訴訟で勝ち続けてきた実績があります。
シュレムス氏の主張によれば、現行の枠組みの下でヨーロッパがデータの流れに関する判断を下すにあたり、FTCの独立性に依拠した事例はこれまでに259件にのぼるといいます。
当局の反応
欧州委員会の複数の広報担当者は、最高裁判決の影響にどう対処する方針かについてのコメント要請に応じませんでした。
しかし、広報担当のマルクス・ラメルト氏はPolitico Europeに対し、欧州委員会は最高裁の判断を「認識しており」、「EU・米国間の議題に及ぼしうる影響を今後慎重に分析していく」と語ったと報じられています。
欧州各国のプライバシー規制当局で構成される欧州データ保護会議(EDPB)は火曜日、最高裁判決と、それが「EU・米国データプライバシー枠組みを支える監督メカニズムに及ぼしうる影響」について検討していると述べたと伝えられています。
EDPBはまた、米国が欧州市民のデータをどう扱うかを監督する機関の独立性は、DPFの正当性にとって「極めて重要」な問題だとも指摘しました。
EDPBにはDPFを覆したり変更したりする権限はなく、それができるのは欧州委員会のみですが、EDPBメンバーの見解は依然として大きな影響力を持っています。
シュレムス氏は、判決が出るまでの間(それには数年かかる可能性があります)データ移転を停止するようEUに求めています。一方、フランスの国会議員フィリップ・ラトンブ氏は、DPFの無効化を求める訴訟を既にEU司法裁判所に提起しています。
ラトンブ氏は火曜日、LinkedInへの投稿で、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に対し、「もはや合法ではあり得ない」DPFを「直ちに撤廃する」よう求めました。
説得力を持つ主張
専門家は、今回の最高裁判決によって欧州委員会は政治的に難しい立場に追い込まれていると指摘します。
IAPPで調査・洞察部門のディレクターを務めるジョー・ジョーンズ氏はインタビューで、「欧州委員会が米国最高裁の判断と異なる米国法の解釈を示すことはできない。したがって、独立性の欠如を問題ないとする理由を説明するか――これは難しい――、あるいは問題があるとして今後どう対処するのかを説明するか、そのどちらかを迫られることになる」と述べました。
ジョーンズ氏によれば、欧州委員会はDPFが欧州経済を支えている以上、これを無効化することは望んでいません。しかし「何らかの対応を取るべきだという圧力を、さまざまな利害関係者から間違いなく受けることになる。一部の人々にとっては、まさに一夜にして状況が一変したようなものだ――昨日までは独立していたのに、今日はそうではない。だから委員会は何かしら手を打たなければならない」ともジョーンズ氏は語りました。
ジョーンズ氏によると、Metaの広告収入の約4分の1はEUから得られています。欧州市民のデータを広告ターゲティングに利用できなくなれば、Metaは欧州内にデータ保管インフラを構築するか、あるいは収益という動機なしに複雑なコンプライアンス環境に対応せざるを得なくなります。
ジョーンズ氏によれば、TikTokは現在アイルランドにデータセンターをはじめとするデータ保管インフラを構築しており、この取り組みには多大な時間がかかった上、100億ドルを超える費用が投じられているといいます。
翻訳元: https://therecord.media/supreme-court-decision-threatens-eu-us-data-sharing