セキュリティ
戦争は平和である。自由は屈従である。プライバシーは監視である
Apple Watch Series 12の発売により、Appleは本人の同意なしに会話を録音することを容認したことになります。
最新のApple Watchには、同社のS11チップに合わせて調整されたAI音声処理機能群「Audio Intelligence」が搭載されています。この機能にはサウンド認識、Shazamによる音楽認識、ライブリワインド、Siriリキャップなどが含まれます。
「ライブリワインドを使えば、直前15秒間の会話をその場でテキストとして確認できます」とAppleは技術概要資料[PDF]で説明しています。「Siriリキャップは1日を通しての会話を要約し、Apple Intelligenceが生成した要点をまとめたメモを作成します。これにより、その場の会話に集中しつつ、後でまとめて確認できます」
デジタルクラウン(Appleが自社の時計のボタンに与えた大仰な呼び名です)を2回押すと、ライブリワインドがWatchのマイクから音声ストリームを取り込み、S11チップ上のセキュアエンクレーブで処理したうえで、近くにあるユーザーのiPhoneへデータを送信します。iPhone側ではこの15秒間の音声セグメントに対して音声テキスト変換アルゴリズムを実行します。生成されたテキストは保存され、音声データ自体は破棄されます。
録音中は、サイレントモードであっても装着者のWatchから音が鳴り、周囲の人々に知らせる仕組みになっています。また、デバイスの画面が見える人向けには視覚的な合図も表示されます。
とはいえ、この通知音を認識してその意味を理解できた周囲の人であっても、録音されることに同意したわけではありません。これは、全当事者の同意を義務付ける同意法を定める米国11州では、法律上の要件に抵触します。
Appleは、この短時間の盗聴的な仕組みについて、個人のプライバシーに配慮した実装であると位置づけています。技術資料の「ライブリワインドが周囲の人々にどう配慮しているか」と題した項では、その根拠として通知音と画面上の視覚アニメーションを挙げています。
一方のSiriリキャップは、「1日を通しての会話を要約し、Apple Intelligenceが生成した要点をまとめたメモを作成します。これにより、その場の会話に集中しつつ、後でまとめて確認できます」とされています。
Appleはこの機能についても、配慮の行き届いた仕組みであると説明しています。
「設計上、Siriリキャップは録音を作成せず、逐語的な文字起こしも行わず、話者の特定や帰属付けも行いません」とAppleの技術文書は説明しています。「出力されるのは、会話の後に人が書き残すメモのような、簡潔で要点をまとめた要約です。生の音声データが保持されないため通知音も鳴りませんし、Siriリキャップの内容から元の音声を復元したり、生の音声を第三者と共有したりする手段も一切ありません」
ここで示唆されているのは、Appleの非同意型音声処理は、Metaが自社のAIグラスで示した「中指を立てるような」姿勢に比べればまだましだ、ということです。それは事実かもしれませんが、プライバシー擁護派はやはり納得していません。
「私たちの会話上のプライバシーを守る権利には、明確なオプトイン同意なしに、他人がテクノロジーを使って私たちの発言を記録することからの自由も含まれるべきです」と、電子フロンティア財団(EFF)のプライバシー訴訟部門ディレクターであるAdam Schwartz氏はThe Register宛てのメールで述べています。「そうでなければ、人々は自己検閲するようになり、会話は自然さと親密さを失ってしまいます」
「そのため、EFFはAppleが新しいAudio Intelligence機能をリリースしたことに失望しています。報道によれば、この機能はApple Watchの周囲で交わされている会話の文字起こしや要約テキストを作成できるとされています。人々には、録音に同意したり拒否したりする現実的な手段がほとんどありません」
「私たちは、他人の会話上のプライバシーを尊重する観点から、このテクノロジーの利用を再考すべきだと提言します。州の盗聴規制法がこの新しいテクノロジーにどのように適用されるかはまだ不透明ですが、私たちの会話が常時監視の対象になることは、会話上のプライバシーに対する容認しがたい負担であることは明らかです」®