Protonは、ガイド付き移行ツール「Easy Switch for Business」をMicrosoft 365にも拡張しました。企業は、OutlookやGoogle Workspaceからエンドツーエンド暗号化のProtonプラットフォームへ、メール、カレンダー、連絡先を移行できます。その間もチームの業務を止める必要はありません。
このツールは6月にGoogle Workspace向けとして先行公開されました。今回Microsoft 365に対応したことで、英国や欧州の企業メールの大半を支えるプラットフォームも対象になります。セキュリティ部門が、米国プロバイダーへの依存を「前提」ではなく「管理すべきリスク」と捉え始めているタイミングです。
切り替え専用の週末を設けない移行
Protonによると、多くの企業が現在のプロバイダーに想定以上に長くとどまっている背景には、データ損失や受信トレイの不具合、ダウンタイムへの不安があります。Easy Switchは、こうした障壁を取り除くために設計されました。
管理者はまず移行対象を選び、ProtonをMicrosoft 365またはGoogle Workspaceのテナントに接続します。続いてドメインを設定し、移行するアカウントを選択して従業員をオンボーディングし、最後に旧プラットフォームを廃止します。移行期間中は「デュアルセンド」により、既存のプロバイダーとProtonが同期を保ちます。従業員はこれまでどおり業務を続けられ、IT部門は完全に切り替える前に新環境を検証できます。
Protonによると、多くの顧客はまず、事業継続のためのフォールバックとしてProtonを並行運用するところから始めます。障害やランサムウェア攻撃、地政学的な混乱が起きても、メールを使い続けられるようにするためです。同社が協力するCISOの大半も、この方法で移行の検証を始めているといいます。
ProtonのCOOであるRaphael Auphan氏は次のように述べています。「企業は、生産性と自社データの管理権のどちらかを選ばなければならないわけではありません。私たちは毎週のように、メールプロバイダーの切り替えには数カ月にわたる混乱が伴うと考えていたIT責任者の声を聞きます。Easy Switch for Businessは、もはやそうではないことを示しています。動機がコンプライアンスでもレジリエンスでも、あるいは外国政府の圧力に左右されないプロバイダーを求めることでも、GoogleやMicrosoftからの移行にかかる期間は数カ月ではなく数日です」
暗号化と法域
移行後のデータは、エンドツーエンド暗号化とゼロアクセス暗号化により、デフォルトで保護されます。Proton自身も顧客のメール、連絡先、カレンダーの内容を読めません。そのため、第三者に提出することも、侵害時に漏えいさせることもできません。Protonのコードはオープンソースで、第三者による監査を受けています。セキュリティ部門は、暗号化の仕組みを自ら検証できます。
Protonの本社はスイスにあり、米国の法域外です。そのため、米国当局が米国企業の保有データにアクセスする法的手段となるFISA第702条やCLOUD Actなどの監視関連法は適用されません。また同社は、非営利のProton Foundationが所有・統治しています。Protonは、顧客が離れようとしたエコシステムや法域にデータが移されかねない買収から、顧客を守れると説明しています。
Proton外部に送信するメールは、通信中はTLSで保護され、Protonのサーバー上でも暗号化されます。ただし、受信者側のプロバイダーは、そこに保存されるコピーにアクセスできます。受信者のプロバイダーにかかわらず、外部宛てのメッセージをエンドツーエンドで暗号化したままにしたい場合は、パスワード保護付きメールを送信できます。
キルスイッチへの懸念
今回の発表は、Protonが実施した調査を受けたものです。調査では、欧州の企業幹部の74%が、米国のテクノロジープロバイダーに「キルスイッチ」でアクセスを遮断されかねないと懸念していました。この割合は、ランサムウェアやサイバー攻撃を恐れる割合とほぼ同じです。英国、ドイツ、フランスの企業幹部1,500人を対象とした調査では、メールの事業継続策を整えている企業は約3分の1にとどまることも分かりました。
米国の制裁はすでに、国際刑事裁判所をはじめとする国際機関のテクノロジー利用を制限するために使われています。一方、MicrosoftはEUとEFTAの顧客向けに、Copilotの「フレックスルーティング」をデフォルトで有効にしました。管理者がオプトアウトしない限り、需要のピーク時にはEU域外でAI処理が行われる可能性があります。この決定を受け、ビッグテックが掲げるデータ主権の約束がどこまで確かなのかを疑問視する声が上がっています。
現在、報道機関、法律事務所、NGO、政府機関など10万を超える組織がProtonを利用しています。Proton Mailは、カレンダー、ドライブ、ドキュメント、スプレッドシート、ビデオ会議、パスワードマネージャー、VPNを含む、より広範な暗号化スイートの一部です。
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