まず、良いニュースからお伝えします。企業の防御力は回復傾向にあります。ただし、その回復は限定的で、一筋縄ではいきません。現在、組織は「派手な攻撃」を阻止する能力は向上させているものの、「静かな攻撃」に対してはほとんど改善が見られていないのです。
このデータをはじめとする詳細は、Picus Labsが発表した年次総合調査の第4弾「Blue Report 2026」から得られたものです。2026年上半期に実際の本番環境で実施された3億3,800万件を超える攻撃シミュレーションに基づき、同レポートでは企業の防御・検知が実際の攻撃に対してどのように機能したかを測定しています。境界線でどのような対策が攻撃を食い止めたのか、そして侵入されてしまった後に攻撃者が何を達成できるのかまでを網羅しています。
繰り返しになりますが、回復傾向自体は本物です。ただし手放しで喜ぶのはまだ早いでしょう。その内訳を見ると、回復の度合いがいかに不均一かがわかります。ここでは特に重要な点を紹介します。
境界線での防御は強固、しかし内部は脆弱
表面的な数字は良好に見えます。防御の平均有効性は62%から69%へと上昇し、2024年のピーク水準に戻りました。
ただし、この69%が何を意味するのかは正確に理解しておく必要があります。これは、境界防御からエンドポイント保護ツールに至るまでのセキュリティ対策が、実際にテストされた攻撃者の行動をどれだけ阻止できたかを示す数値です。スタック全体で見れば強力な平均値と言えます。
より重要な問いは、攻撃者がすでに内部に侵入した後に何が起こるかです。

Picus Labsは今回初めて、境界を突破された後に何が起こるかについても測定を行いました。自律型ペネトレーションテストを用いて、すでにネットワーク内部にいる攻撃者として振る舞わせたのです。
ここからが本当に興味深いところです。侵害後、攻撃者の行動のうち阻止できたのはわずか37%でした。
ドメイン内部では、防御がおよそ3回に1回の割合でしか行動を阻止できず、残る2回は攻撃者の行動を許してしまっているのです。この37%と境界線での69%との差こそが、今回の重要な発見です。境界防御やエンドポイント対策は強化されているものの、「それを突破した攻撃者は封じ込められる」という前提は、実際の環境では残念ながら成り立たないのです。
内部では「派手な動き」は捕まえるが「静かな動き」は見逃す
コードを実行したり端末間を移動したりする「横方向移動」や「権限昇格」といった行動は、85~90%の割合で阻止されていました。しかし、ドメインをマッピングし共有フォルダやセッションを列挙する「偵察」行動が阻止された割合はわずか約10%、メモリからの認証情報の読み取りが検知された割合も約22%にとどまりました。
つまり攻撃者は、アラートを発生させるような「騒がしい」段階に入る前に、ほとんど抵抗を受けることなく環境をマッピングし、認証情報を収集できてしまうのです。

Picus Blue Report 2026, Autonomous Pentesting Actions
この実態は、防御の平均スコアだけでは見えてきません。なぜなら、それらは攻撃の異なる段階を別々に測定しているに過ぎないからです。この実態を可視化するには、実際に攻撃を実行してみる必要があります。それこそが自律型ペネトレーションテストが行っていることです。ネットワーク内で実際の攻撃経路を実行し、侵入者が内部で実際に何を達成できるのかを明らかにします。
同じツールでも、使い方次第で阻止率は94%にも3%にもなる
シミュレーション全体を通じて、認証情報窃取ツールの一つであるMimikatzは、使用方法によって著しく異なる結果を示しました。
- LSASSプロセスメモリから認証情報をダンプする、いわば定番のシグネチャ検知経路は、94%の割合で阻止されました。
- それ以外のメモリ領域から抽出する手法では、阻止率はわずか17%でした。
- ローカルレジストリから読み取る手法に至っては、阻止率はたった3%でした。
同じツール、同じ目的、同じ環境。唯一の変数は、その手法がどれだけ「見覚えのあるもの」だったかという点だけでした。

その理由は、シグネチャがこの種の攻撃の「有名なバージョン」には一致しても、その根底にある挙動そのものには一致しないためです。LSASS経由の手法は目立ちやすく、監視の目も行き届いていますが、レジストリからの読み取りは一見すると通常の特権操作のように見えてしまいます。
さらに言えば、94%という数字自体も、Mimikatzの既知の1つのビルドに対して測定されたものにすぎません。再コンパイルしたり、メモリ上で読み込ませたり、署名済みのWindowsユーティリティを使ったりすれば、挙動自体は同一のままフィンガープリントだけが変わってしまいます。これこそが、シグネチャに依存した防御スコアが抱える根本的な限界です。それは「すでに見たことのあるもの」をどれだけ捕捉できるかを示す指標であって、その挙動自体が阻止されているかどうかを示すものではないのです。
このMimikatzの数値も、同じ自律型テストから得られたものであり、これが示す教訓の一つでもあります。よく知られた手法だけでなく、攻撃者が取り得るあらゆる手法を実際に試してみて初めて、自社の対策がどこで密かに機能不全に陥っているかが見えてくるのです。
マルウェア防御力は境界線ですら低下傾向
マルウェアのダウンロードに対するIOCベースの防御率は今年50%まで低下しました。2025年の60%、2024年の71%からの下落です。セキュリティ業界において最も理解が進んでいるはずの攻撃ベクトルの一つで、2年間で21ポイントも低下したことになります。これは決して良い兆候とは言えません。

では、なぜこうなったのでしょうか。
その原因は、特定の製品の不備というよりも構造的なものです。
VirusTotalだけでも1日あたり約200万件もの新規ファイルを受け取っています。指標の数は攻撃者側のビルドパイプラインの規模に比例して増え続けます。ペイロードは無数の方法でパッケージ化でき、シグネチャはそのすべてに対応しなければなりません。一方で挙動は目的に応じて決まるものであり、実際に認証情報を窃取する方法はそれほど多くはありません。
これが、指標ベースのテストと挙動ベースのテストが根本的に異なる問いに答えている理由です。
- IOCベースのテストは、ファイアウォールやWebプロキシ、セキュアメールゲートウェイといった境界防御が果たす役割である「既知の悪意あるコンテンツを認識できるかどうか」を問うものです。
- 挙動ベース(TTPベース)のテストは、攻撃者がすでに内部に侵入し行動を実行している段階で、エンドポイントおよび検知スタックが果たす役割である「どのような経路であれ、根本となる行動そのものを阻止できるかどうか」を問うものです。

両方とも不可欠であり、どちらか一方が他方を効果的に代替することはできません。侵害・攻撃シミュレーション(BAS)ソリューションには、その両方を提供することが求められます。
IOC面では、実際のマルウェアサンプルをダウンロード試行として送り込むことが、ファイアウォールやWAF、セキュアメールゲートウェイといった境界防御を「既知の悪意あるもの」に対して検証する上で、依然として最も実用的な方法の一つです。
挙動面では、効果的なBASプラットフォームは、EDR、XDR、SIEMといったエンドポイント保護・検知ツールに対してもTTPベースのテストを実行し、それらの対策が「既知のファイル」だけでなく「行動そのもの」を阻止できているかを確認する必要があります。
防御が最も弱い脆弱性は、ベンダーではなく「弱点の種類」で共通している
防御率が最も低い脆弱性トップ10は、いずれもエクスプロイト試行の阻止率が25%を下回りました。私たちはこれらを、製品やメーカー別ではなく、コアライブラリにおけるメモリ安全性・入力処理の問題、そしてOSコンポーネントにおけるローカル権限昇格といった、弱点の種類別に分類しました。
同じエクスプロイト手法が、異なるCVEにまたがって繰り返し成功し続けているのです。

このことは、CVSSスコアだけに基づいてトリアージを行うことの危うさを浮き彫りにしています。
本当に重要な問いは、攻撃者が自社の環境において、自社固有の防御策を相手に、その脆弱性の各手法を実際に連鎖させて悪用できるかどうかです。

エクスポージャー検証は、TTPチェイニングによってこの問いに答えます。CVEを攻撃者が連鎖させなければならない手法へと分解し、実際にエクスプロイトを発火させることなく、開示当日にそれぞれを自社の対策に対してテストするのです。
その成果として得られるのは、そのCVEが公表された当日に下せる、根拠のある判断です。事業上重要なシステムやエアギャップ環境、まだ武器化されていないシステムなど、実際のエクスプロイトを安全に届かせることができない対象についても、この判断は有効です。
ロギングは増加も、アラートへの転換はほぼ進んでいない
ここまで述べてきたのは、攻撃そのものを完全に食い止める「防御」に関する内容でした。もう一方の柱が「検知」です。防御が破られた際に、人間の対応を呼び込むのがアラートの役割です。今年、アラート発生率は昨年と同様、憂慮すべき低水準の14%にとどまりました。

ロギングのスコアはわずかに上昇し58%となりましたが、アラートのスコアは14%のまま横ばいでした。つまり、シミュレートされた攻撃の7件に1件未満しかアラートを発生させられていないということです。各チームはかつてないほど多くのテレメトリを収集していながら、その増加分をほとんど実際のアクションに転換できていないのです。
この「ログとアラートのギャップ」は、もはやデータ収集の問題ではなく、検知エンジニアリングの問題になっています。
強固な防御力は「所有」ではなく「レンタル」にすぎない
これが、これまでの内容すべてを結びつける結論です。
最も阻止が困難な脅威グループ上位10のうち9グループに対して防御力は低下しており、ランサムウェアの主要ファミリーはいずれも阻止率が38%を下回りました。中でもPlayは50%から13%へと急落しています。

これらは無名の目新しい攻撃者ではありません。いずれも手口が広く分析・文書化された、素性のはっきりしたグループです。それでも防御側は後退を許してしまいました。既知のファミリーに対するシグネチャは、その運用者が実際に用いる挙動をカバーしきれないからです。彼らを阻止するには、名前を認識するだけでは不十分で、現在進行形の完全なキルチェーン全体に対してテストを行う必要があります。
これこそが本レポート全体を貫く教訓です。強固な防御力は「所有」するものではなく「レンタル」しているにすぎず、その効果が持続するのは、それを裏付ける検証を続けている間だけなのです。
レポート全文を読む
ここでご紹介したのは、今年の調査結果のほんの一部にすぎません。「Blue Report 2026」全体は、自社のセキュリティ対策を測るベンチマークとして活用でき、一本の記事で語り尽くせる範囲をはるかに超えています。
今すぐ無料で入手してください。レポートには以下の内容が含まれます。
- 業界・地域別に分けた防御・検知スコア。自社の業種が今年実際にどのような成績だったかを確認可能。
- 組織が最も阻止できていないMITRE ATT&CKの戦術・技術を、防御が崩れているポイントに対応付けたマッピング。
- 前年比で防御力が最も後退した脅威グループおよびランサムウェアファミリー。
- ロギングとアラートの間に生じている大きなギャップの原因となっている検知ルールの不備の全容。
- 境界線から見えにくい内部に至るまで、継続的な検証を通じてこれらのギャップを埋めるための実践的なガイダンス。
企業防御がどこで持ちこたえ、どこで崩れ、そして自社の対策がどこで失敗する可能性が最も高いのかを知るために、Blue Report 2026をダウンロードしてください。
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/08/12/picus-security-blue-report-2026/
