ゾンビカード:期限切れのVisaクレジットカードが決済に使われてしまう問題

期限切れになったクレジットカードを物理的に破棄しておく必要がある、意外な理由があるのをご存じでしょうか。

科学的な調査により、一部の非接触型カードにおいて、決済端末が参照する有効期限データが改ざんから十分に保護されていないことが明らかになりました。

マサチューセッツ大学アマースト校のRaja Hasnain Anwar氏、Gerard DeCunha氏、Muhammad Taqi Raza氏の研究チームは、Visa、Mastercard、Discover、American Expressの各非接触型カードを対象に、複数の決済端末や加盟店、さらに米国の主要銀行5行が発行したカードを用いて検証を行いました。

その結果、決済端末をだまして将来の有効期限を認識させられることが判明しました。端末に送信される有効期限データを未来の日付に書き換えることで、期限切れになったVisaの非接触型クレジットカードを実店舗での決済に実際に「復活」させることができたのです。これが「ゾンビカード」という名称の由来です。

ただし、この結果はすべてのカードに当てはまるわけではありません。検証対象のMastercard、American Express、Discoverの構成では改ざんされた有効期限データは拒否されましたが、Visaのカード同士でも発行者(イシュアー)によって挙動が異なりました。取引が拒否されたりカードの再発行を促されたりするケースがある一方、そのまま承認されてしまうケースもありました。

この脆弱性は、Visaの「Kernel 3」非接触決済フローに存在します。端末側に送られる有効期限(Application Expiration Date)が、カードのデータと効果的に紐付けられていなかったのです。一方、検証対象となったMastercard、American Express、Discoverの各Kernelでは、整合性チェックや認証済みデータの範囲によって、改ざんされた有効期限データが検知され、取引が拒否される仕組みになっていました。

悪用される可能性のあるシナリオ

最も現実味のある悪用シナリオは、所有者が「もう無害だ」と考えている期限切れカードや交換済みカードを盗む、あるいは拾って悪用するケースです。家庭ごみに捨てられたカード、引き出しの中のカード、紛失した財布の中のカード、あるいはセキュリティ管理が不十分な企業の廃棄プロセスなどが想定されます。基となる口座が開いたままで、発行者側の管理体制がカードの正確なライフサイクル状態を検証していない場合、攻撃者はリレー攻撃の仕組みを使って非接触決済を試みる可能性があります。

可能性としてはやや低いものの、所有者が現在も保有しているカードに対して近接リレー攻撃を仕掛けるシナリオも考えられます。ただしこの場合、決済中に持続的なNFC(近距離無線通信)の近接状態とリアルタイムのリレーが必要となるため、単に離れた場所からカードをスキャンするだけの手口に比べ、実行のハードルは格段に高くなります。

安全を確保するために

カード所有者にとって実践的な対策はシンプルです。

  • 期限切れカードや交換済みカードは必ず破棄すること。ICチップに複数回切り込みを入れる。さらにカード本体にも切り込みを入れて非接触通信用アンテナを破壊し、磁気ストライプも傷つけたうえで廃棄する。
  • 期限切れのカードを紛失した場合も、「無害だから」と放置せず、きちんと届け出ること。

これらは有効な予防策ではありますが、有効期限データの完全性を保護し、失効したカード情報を認証システムが確実に拒否できるようにする一義的な責任は、決済ネットワークや決済端末の実装、そしてカード発行者側にあります。

翻訳元: https://www.malwarebytes.com/blog/news/2026/08/zombie-card-an-expired-visa-credit-card-can-be-used-for-purchases

本記事は malwarebytes.com の記事を翻訳・要約したものです。