- 新たな報告書が、ベネズエラの監視ネットワークに中国製AIを導入する計画が依然として進行し得ると警告
- この計画は、ニコラス・マドゥロ前大統領が米国によって失脚させられる以前に策定されていたもの
- 報告書は政策転換の兆しがないことを指摘し、米国に対応を求める
米国が大胆な夜間作戦でベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を失脚させ拘束した際、首都カラカスは米サイバー軍によって完全な暗闇に包まれたとされています。米サイバー軍が発電施設をオフラインに追い込んだとされています。
しかし、これは単に米軍がマドゥロの拠点に侵入しやすい条件を整えたという話にとどまりません。2013年に政権を握って以来、マドゥロは反対勢力を監視し、必要とあらば鎮圧するための巨大な監視ネットワークを構築してきました。この監視網は、今回の作戦の一部始終さえも記録し得るものでした。
しかし、米国と対立する大統領であったマドゥロは、監視技術の多くを中国から調達しており、将来的には禁輸対象となっている中国製AIシステムをこのネットワークに統合する計画も立てていました。ベネズエラの体制は交代したものの、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)の新たな報告書は、この中国製AIの導入計画が依然として進められる可能性があると警告しています。
ベネズエラ、監視インフラへの中国製AI統合を模索
ASPIの最新報告書「Warning signals: Venezuela and the risk of Chinese AI-enabled digital authoritarianism(警告信号:ベネズエラと中国製AIによるデジタル権威主義のリスク)」[PDF]によると、マドゥロ失脚前、当時副大統領だったデルシー・ロドリゲス氏は「中国製AIシステムを導入する協定……既存の国家主導の監視体制を強化するために中国製AIを活用する」協定への署名を模索していたと警告しています。
マドゥロ失脚作戦のわずか2日後、ロドリゲス氏はベネズエラ大統領に就任しました。しかしASPIは、それ以降もロドリゲス氏の計画に方向転換を示す兆候は何も見られないと警告しており、これは米国が中国製AI支援の監視技術で満ちた国家を率いることになりかねないことを意味しています。
報告書は「ベネズエラは、監視・統制を目的とした中国の新世代LLMベースAIシステムを中国国外で初めて導入する国の一つとなり、西半球で最も先進的な導入国になるだろう」と述べています。
不正操作の疑いが濃厚な2024年のベネズエラ大統領選挙の直後、抗議者や反体制派はオンライン上で特定され、その後映像やドローンによる監視の対象となりました。多数の抗議運動指導者が姿を消しており、その活動を理由に当局に拘束された可能性が高いとみられています。
ベネズエラの監視ネットワークの一環として中国製AI技術を導入する計画は、国家による反対勢力の抑圧を継続させる可能性が高いといえます。報告書は「中国製、あるいはその他のAIツールは、反体制派の管理、情報統制、政治権力の維持のために既に使われている国内向け抑圧装置を、さらに強化しかねない」と述べています。
ベネズエラ向けに技術提供を模索している企業の一つがiFlytek(アイフライテック)です。米国は、中国が新疆ウイグル自治区でウイグル族イスラム教徒を拘束・弾圧しようとした際にiFlytekを責任企業とみなし、2019年に同社製品の米国内での販売を禁止しています。
ベネズエラを中国から引き離す動き
ASPIの報告書は、マルコ・ルビオ米国務長官に対し、この監視ネットワークの解体とベネズエラの体制への中国製AIシステム導入阻止に向けた取り組みを主導するよう求めています。
報告書は「中国の指導部は、自国の代表的企業の資産や投資がベネズエラでリスクにさらされていることを理解しているようだ。北京の対応は、一部において、リスク保護・管理を支援するために海外の国有資産に対する監督を強化することにあるとみられる」と述べています。
報告書によれば、ベネズエラの監視インフラを解体することは、中国製監視技術に対抗する取り組みと軌を一にするものであり、他国にも大規模監視システムの解体を促すことになるとしています。またベネズエラの監視インフラ解体は、米国が単なる旧体制の新たな顔役ではなく、解放者としてのイメージを確立する一助にもなるとしています。
もっとも、そこにはいささか皮肉な側面もあります。米国自身も現在、監視をめぐる問題を抱えており、特にFlockのカメラシステムに対する反発や、AI企業が政府による国内監視目的でのモデルへのアクセス提供を拒んでいる状況を踏まえると、なおさら際立って見えます。