- Pegasus開発元の元トップ、各国政府に米AI企業への依存を減らすよう呼びかけ
- 政府は外部事業者が提供するインフラよりも、ソブリンAIと国家安全保障に注力すべきだと主張
- Pegasusは政治家、ジャーナリスト、企業幹部などの監視に使われた
米国のAI企業にデータを預けるべきではなく、ソブリンAI(主権AI)の構築を目指すべきだ――。イスラエルのスパイウェア企業NSO Groupの元最高経営責任者(CEO)で共同創業者のShalev Hulio氏は、こう訴えています。
Hulio氏は、世界中の政治家、企業幹部、ジャーナリストを標的にしたスパイウェア「Pegasus」の開発を主導した人物です。現在はAIサイバー防衛企業Dreamを創業し、キャリアを大きく転換しています。
商用スパイウェア企業の元トップは、国家安全保障に関わるデータを米国のAI企業に渡すのではなく、各国政府が自らAIモデルを運用・開発すべきだと考えています。
スパイウェア企業の元トップからソブリンAIの伝道師へ
「あらゆる政府が独自のモデルを持つべきです」。Hulio氏はFinancial Timesにこう語りました。「AIは重要インフラです。ある日突然、誰かがモデルを停止してしまうリスクを負うべきではありません。自分たちのAIは自分たちで管理したいはずです」
この発言は、興味深い立場から出たものです。Hulio氏が率いた商用スパイウェア企業は、米国政府のブラックリストに載り、WhatsAppの脆弱性を悪用して数千台のデバイスにPegasusを仕込んだとして、現在も国連やEUから批判を受けています。
Hulio氏はFTに対し、「世論はどうあれ、各国政府はNSOの製品を使って、長年にわたりテロ攻撃を未然に防ぎ、数十万人の命を救ってきました」と述べました。さらに、「各国政府は、私たちがかつて築いていた関係を高く評価してくれていると思います」と付け加えています。
Dreamは2022年、Hulio氏とオーストリアの元首相Sebastian Kurz氏が共同で設立しました。当初は、AIを活用したサイバー防衛ツールを政府向けに提供することを目指していました。同社は、世界初とされる、AIによる自律的なエンドツーエンドの攻撃を検知した企業としても知られています。この攻撃では、中国のハッカーがオープンソースのAIモデルを使って脆弱性を発見・連鎖させ、原子力安全機関を含む台湾の政府機関に侵入しました。
現在Dreamは、複数の製品を提供しています。AIを活用した国家規模のサイバー防衛システム、AIによるソフトウェア脆弱性の発見プラットフォーム、そして外部インフラに依存しないソブリンAIモデルを政府が構築するためのAIプラットフォームです。
Dreamが提供するモデルは、政府での利用に合わせて個別に作られています。顧客のデータで学習させることで、政府のニーズにより的確に合うよう調整でき、コストの抑制にもつながるといいます。Hulio氏は「政府機関には、非常に範囲が狭くても高性能で、1~3基のGPUで高速に動作するモデルを持つよう勧めています」と語りました。
Dreamはこれまでに4億ドルの資金調達・投資を受けており、今年初めの評価額は30億ドルでした。同社の製品はすでに、欧州、アジア、中東の12か国以上に販売されています。