この記事のポイント
- 自動コンテンツ認識(ACR)は、スマートテレビの視聴データを第三者に送信する
- VizioとSamsungのテレビは、研究者がACRをオプトアウトした後もデータを送信していた模様
- ACRのオプトアウトを完全に守っていたと考えられるのは、8種類のスマートテレビのうち4種類のみ
スマートテレビの監視をオプトアウトすれば、プライバシーが戻ってくる。そう考えていたなら、認識を改める必要があります。
Northeastern University(ノースイースタン大学)の研究者らによる調査で、一部のスマートテレビは、ユーザーがオプトアウトのボタンを押した後も、視聴内容に関する情報を第三者に送信しているように見えることがわかりました。
この調査は「Watching the watchers」と題され、10社のメーカーが販売する12機種のスマートテレビを対象に、自動コンテンツ認識(ACR)のオプトアウトがどこまで守られるかを検証しました。ACRは、スマートテレビの音声や映像(あるいはその両方)を取得し、第三者(通常はテレビメーカー)にアップロードする機能です。
第三者はこのコンテンツをデジタルフィンガープリントに変換して視聴内容を把握します。その情報を使って、ターゲティング広告を配信したり、他社に同様の配信を許可したりできます。ACRはほとんどのスマートテレビに搭載されているとみられ、米国では昨年時点で世帯の82%がスマートテレビを保有していました。
テストの対象は、米国のスマートテレビの約95%を占める8種類のOSです。それぞれについて10通りの視聴シナリオを実施しました。シナリオは、アンテナ経由のテレビ視聴から、別の端末からのスクリーンミラーリングまで多岐にわたります。メーカーのOSに無料で組み込まれた自社ストリーミングサービスの視聴や、サードパーティのストリーミングアプリを使ったセッションも検証しました。さらに、HDMIポートで別の機器を接続したセッションもテストしています。
すべてのテストは、ACRを有効にした状態と、オプトアウトを選択した状態の両方で実施しました。テスト全体で、自動化されたセッションは5,000件を超えます。
調査によると、Vizioは、ユーザーがオプトアウトした後も、自社ストリーミングサービスとアンテナ経由のテレビ視聴で、ACRとみられる通信を100%送信し続けました。アイドル状態でも同量の通信を送信していました。ただし、報告書によれば、サードパーティのストリーミングについてはACR通信を送信していません。
Samsungについては、研究者がACR機能をオプトアウトした後も、一部の通信が漏れているように見えました。ACRをオプトアウトしたうえで、同社の内蔵ストリーミングサービスを30回テストしたところ、依然として「ACRと一致する」通信が確認されました。
オプトアウト後、SamsungのTizen OSは、Netflixでは7%、YouTubeでは10%、Tubi TVでは20%の試行で、ACR関連とみられる通信を送信しました。HDMIセッションでは、60%の割合でACR通信を送信しています。Vizioのテレビと同様に、自社ストリーミングのセッションでも、すべてでACR通信を送信しました。
先月下旬には、ある研究者がSamsungのスマートテレビをリバースエンジニアリングし、ACRを無効にしても機能するのかどうかについて疑問を投げかけました。
一方で、明るい材料もあります。研究者がACRをオフにした後、4種類のスマートテレビOSは完全に沈黙しました。LGのWebOS、SonyのGoogle TV OS、AmazonのFireTV OS、SupersonicのVIDAA OSです。
暗号化が研究の壁に
Vizioは2017年、視聴履歴を1,100万台のスマートテレビからユーザーの同意なしに収集していたとして、FTC(米連邦取引委員会)との和解で220万ドルの支払いに同意しました。このとき、ACRのオプトアウトを認めることにも同意しています。
研究者がテストしたVizioのテレビは、Kinesisに通信を送信していました。KinesisはAmazonが運営するデータ取り込みサービスで、同社がスマートテレビのデータを分析するために利用しています。Vizioのテレビでは、ACRをオプトアウトしても、このドメインへの通信量に減少は見られませんでした。研究者らは次のように述べています。
「オプトアウト設定は、このエンドポイントに送信される通信に観測可能な影響を与えていません。ただし、暗号化のためペイロードを確認できず、FTCとの和解内容に違反しているかどうかは確認できません」
これは今回の調査にとって大きな課題です。Samsungを含め、ほとんどのスマートテレビはACR通信を暗号化しているためです。そのため研究者らは、通信の送信先、タイミング、量、プロトコルの詳細といった手がかりから、ACR通信だと推定する必要がありました。
例外はSupersonicのVIDAA OSで、ACRデータを暗号化せずにサーバーへ送信していました。サーバーも、認識した内容のジャンルを暗号化せずに返していました。ネットワークを監視している人なら誰でもすべて見られると、研究者らは警告しています。しかも、テスト時点ではサーバーにログインが不要だったため、他人のテレビから得られた5,700万件を超えるACR検出結果にアクセスできる状態でした。
Vizioの自社ストリーミングサービス「WatchFree+」でも、視聴中の番組やチャンネルのタイトルが、無料テレビサービス事業者とのオンライン通信に暗号化されないまま含まれていました。これをオフにする方法はないと、研究者らは警告しています。
Walmartは2024年、Vizioを23億ドルで買収しました。目的の一つは、「広告主が顧客と大規模かつ有意義につながり、商品発見を後押しする」ことの支援でした。
同社は、顧客のデータを使って他の企業が広告を配信できるようにするリテールメディア事業「Walmart Connect」も運営しています。
Walmartは特にVizioの広告事業に関心を寄せており、当時次のように述べていました。
「Walmart Connectと組み合わせることで大きな効果が生まれ、顧客のために事業へさらに投資できるようになります」
スマートテレビの所有者にできること
視聴データを外部に送信している可能性のあるスマートテレビから、身を守るにはどうすればよいのでしょうか。研究者らは次の対策を挙げています。
- LGのWebOS、Fire TV OS、SonyのGoogle TV、SupersonicのVIDAA OSは、いずれもACRのオプトアウトを守っていたと考えられます。これらのテレビであれば、オプトアウトを選択すれば安全とみられます
- テレビをインターネットから切断し、外部のストリーミング機器を使う。HDMI接続から情報を取得したとしても、テレビはデータを送り返せません
- ブロックリストを使う。やや技術的な知識が必要です。ブロックリストに対応したインターネットルーターを使っている場合は、既知のACRエンドポイントのリストを追加すれば、テレビの通信がそれらに届かなくなります。研究者らはリストをこちらで公開しています
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