- 浙江大学の研究者らが、GPUの処理負荷が地域の電力網を不安定化させ停電を引き起こす可能性があると警告
- 攻撃者は約1,000基のGPUを悪用し、電流を消耗させながらシステム内に過剰な熱を発生させる恐れ
- この理論上の攻撃は「Bit2Watt」と命名。悪意あるパターンの検知やエネルギー緩衝システムなどの対策が挙げられている
AIデータセンターが「真剣に考え込む」ような状態になると、消費電力が急増し、機器の障害や、場合によっては停電まで引き起こすことがあります。それでは、悪意ある攻撃者がこうした事態を意図的に引き起こし、物理的な被害をもたらすことは可能なのでしょうか。
中国・杭州にある浙江大学の複数の研究者が、「Bit2Watt: A Cyber-Physical Vulnerability Exploiting GPU Workloads Across Power and Computing Infrastructures(Bit2Watt:電力・演算インフラを横断してGPU処理負荷を悪用するサイバー・フィジカル脆弱性)」と題する研究論文を発表しました。
この論文で研究者らは、悪意あるクラウドテナントが理論上、極めて負荷の高いGPUワークロードを実行させることで物理的な損害を引き起こせると主張しています。
対策の提言
研究チームは論文の中で次のように述べています。「私たちの結果は、GPUの負荷変動が6,000Hzを超える変調周波数に達し得ることを示しています。これは、エアコンなど一般的な家庭用負荷で観測されるわずか数Hzと比べて極めて高いものです」
「こうした高周波の変動は、電圧の逸脱、高調波歪み、そして減衰性能の低下を著しく引き起こす可能性があります」
攻撃者は約1,000基のGPUを使い、太陽光発電などの分散型電源を主体とする1メガワット規模の地域電力網を標的にすることで、電流をほぼ半分にまで低下させると同時に、通常より約20%多い熱を発生させることができるといいます。
論文はさらにこう付け加えています。「これは演算機器の可用性を脅かすだけでなく、-0.27という負の減衰比を生み出し、システムに不安定なモードをもたらします」
「保護機構が作動し演算負荷が遮断されると、連鎖的な障害を引き起こす可能性があり、大規模な電力システムにおいては80%を超える停電に発展する恐れもあります」
AIデータセンターが消費電力の大きな変動を生み出すこと自体は目新しい話ではなく、今日の優れた頭脳の一部がこの課題の解決に取り組んでいます。
幸いなことに、この攻撃は(今のところ)純粋に理論上のものであり、研究者らは悪用の可能性を警告するためにこの論文を発表しました。あわせて対策も提言しており、防御側は悪意ある演算パターンを検知すべきである一方、運用者側は需要の急激な変動に備えたエネルギー緩衝システムを構築すべきだとしています。