AIドリブンなセキュリティの未来は、完全なデータにかかっている

私はもともと、断片的な証拠から事件全体を再構築していく刑事ドラマ風のドキュメンタリーに惹かれる性分です。突破口が開けるのは、単一の手がかりからではありません。動き、関係性、タイミング、そして意図——あらゆる要素をつなぎ合わせたときに初めて真相が見えてきます。ピースが一つでも欠ければ捜査は行き詰まり、最悪の場合は間違った容疑者を追いかけることになります。

サイバーセキュリティも、これとまったく同じ仕組みで成り立っています。

以前の記事で私は、セキュリティオペレーションセンター(SOC)が苦戦している原因は人員不足ではなくアーキテクチャにあると指摘しました。私たちは、AIが本来必要とするもの——すなわち完全で高精度なデータ——を与えられない設計のシステムに、AIを次々と重ねているにすぎません。この土台がなければ、どれほど高度なモデルであっても、その真価を発揮することはできません。

「完全なデータ」が本当に意味するもの

この25年間、セキュリティの世界における「データ」とは、ログとイベントのことを指してきました。しかしログというものは、現実を損失を伴う形で表現したものにすぎません。セキュリティ製品はテレメトリを転送する前に事前フィルタリングと正規化を行うため、SIEMに届くログやアラートは、実際に環境内で生成された情報のおよそ10~20%程度にとどまります。プロセス生成イベント一つとっても、届いた時点ですでに完全な文脈と、隣接イベントとの時間的な関係性がそぎ落とされているのです。

AI時代の到来は、この課題の深刻さをさらに引き上げました。現代のAIを駆使した攻撃は、複数のドメインにまたがるようになっています。これを検知し、点と点をつなぎ合わせるには、複数製品にまたがる完全なデータが不可欠です。

退職を控えた従業員が、競合分析資料を開き、ダウンロードし、個人のクラウドストレージにアップロードし、さらに社外へメールで送信するケースを考えてみましょう。この攻撃連鎖は4つの異なるシステムにまたがっています。従来型のSIEMでは、ダウンロード時のDLPアラートやアップロード時のCASBフラグといった、ばらばらの断片しか捉えられません。文書の来歴——中身は何だったのか、他に誰がアクセスしていたのか、この従業員の過去6か月間の行動ベースラインと比べてどう違うのか——がなければ、意図を再構築することは不可能です。来歴とタイムラインを通じて分析することで、一見無関係に見える異常な活動が、進行中の攻撃シーケンスであることが明らかになるのです。

AIによってサイバー攻撃の実行ハードルが下がっている今、私たちは「攻撃者はすでに侵入している」という前提に立ち、正常な状態からの微妙な逸脱を検知することに注力する必要があります。しかし、こうしたパターンは少量のサンプルでは浮かび上がってきません。深夜1時のログイン一件だけでは、判断がつきません。しかし同一アカウントによる半年間の50回のログインを、デバイステレメトリやアクセスパターンと突き合わせれば、それが海外出張中のCFOによるものなのか、それとも盗まれた認証情報を使う攻撃者によるものなのかが分かります。

つまり、AIを活用したセキュリティには、発生源からフィルタリングされていない、完全かつフル精度のデータが求められるのです。セキュリティテレメトリだけでなく、環境の一部を構成するインフラおよび運用データ——ネットワーク、OTセンサー、IoTデバイス、SaaS、クラウド——も必要です。また、あるイベントがどのユーザー、サービスアカウント、APIキー、トークンに紐づくのかを把握するために、人間・非人間を問わないアイデンティティ情報も欠かせません。さらに、ユーザー、サーバー、アプリケーションを行き交うファイルやドキュメント、コンテンツといったエンドユーザーデータも必要です。そして理想を言えば、企業にとっての「至宝」ともいえる独自データも必要になります。

「至宝」データの重要性

あらゆる企業において最も価値の高いデータは、往々にしてセキュリティシステムから最も見えにくい場所に存在しています。業務文書、ソースコード、知的財産、顧客記録、財務モデルなどがそれにあたります。これらはまさに攻撃者が真っ先に狙う資産であるにもかかわらず、プライバシー上の懸念や規制上の制約、あるいは単に「CISOが自社の独自データをサードパーティのクラウドに送りたがらない」という(理解できる)事情から、セキュリティ分析の対象から日常的に除外されています。

ソースコードリポジトリを見えないAIでは、退職前にコードベース全体を丸ごとクローンして競合他社へ移る開発者を検知できません。財務モデルを見えないAIでは、四半期予測を持ち出す内部関係者を見逃してしまいます。これは、財務記録の閲覧を禁じられた不正調査官のようなものです。調査自体は続けられても、不正そのものは発見されずに終わってしまいます。

こうした除外は、技術的な限界ではなく、アーキテクチャ上の選択にすぎません。セキュリティシステムが機密データを対象外とするのは、クラウド依存型のアーキテクチャでは、GDPRや米国CLOUD Act、DORA、HIPAAといった規制の下でそのデータを安全に扱えないからです。この依存関係を取り除き——AIを組織自身の環境の中で、自らの管理下で稼働させれば——ようやく「至宝」データもAIを活用したセキュリティ分析の一部に組み込めるようになります。

データの完全性と主権は表裏一体

どんな優れた捜査においても、成否を分けるのは欠けていたピース——すべてを一変させるあの一つの詳細です。サイバーセキュリティにおいては、データとその細部のすべてが重要な意味を持ちます。データの完全性こそが、優れたAIドリブンなセキュリティの成果と平凡な成果を分ける決定的な要因です。フィルタリングされたログ一つ、切り詰められたデータセット一つ、除外されたシステム一つ一つが、盲点を生み出すからです。

しかし、完全性を追求すれば、必然的に「管理」という問題に直面します。ソースコード、財務モデル、顧客記録、セキュリティデータ、ネットワークテレメトリ、外部のSaaSやクラウドデータをAIに与えた瞬間から、そのデータがどこで分析されるのか、出力の所有権は誰にあるのか、どのモデルが使われているのか、そしてどの国の政府がそのデータへのアクセスを強制できるのか——こうした問いに答えなければならなくなります。

完全性と主権は、いわば同じ要件を二つの角度から見たものです。一方は「AIに何を見せられるか」を問い、もう一方は「AIが見るもの・生み出すものを誰が管理するのか」を問います。データプライバシーに加え、自社のデータ、モデル、重みに対する主権を確保することは、AIをセキュリティ分野で活用しようとするあらゆる組織・国家にとって、今や欠かせない要件になりつつあります。

最終的に、AIドリブンなセキュリティの未来を決定づけるのは、最も洗練されたモデルを持つ者ではありません。フル精度で、深い運用文脈を備え、なおかつ管理権限を手放すことなく、自社のAIに最も完全なデータを与えられる者こそが、その未来を制するのです。

翻訳元: https://www.securityweek.com/the-future-of-ai-driven-security-depends-on-complete-data/

本記事は securityweek.com の記事を翻訳・要約したものです。