Gartnerのレポート「Validate the Promises of AI SOC Agents With These Key Questions」の中で、アナリストのCraig Lawson氏とAndrew Davies氏は「2028年までに、大規模SOCの70%がTier 1およびTier 2業務を補強するためにAIエージェントを試験導入するが、構造化された評価を行わない限り、測定可能な改善を達成できるのはわずか15%にとどまる」と指摘しています。
ちょうど昨年、GartnerはAI SOCエージェントを「イノベーションのトリガー」段階に位置づけ、採用率は一桁台にとどまっていました。しかし今年に入り、Gartnerの「Hype Cycle for Security Operations, 2026」では、これらのエージェントは「過度な期待のピーク」に達したとされています。
また、Prophet Securityの「State of AI in Security Operations 2026」によると、セキュリティチームの40%が現在AIを日常的に使用しており、56%が自社環境での評価または試験導入を進めている一方、導入予定がないと回答したのはわずか4%にとどまっています。

セキュリティ運用のハイプサイクル、2026年版(出典:Gartner)
SOCにおけるAI活用には大きな勢いがありますが、それを自社のセキュリティプログラムの成果へとつなげるには、構造化された評価が不可欠です。
そのためGartnerは、AI SOCエージェントを評価するための実践的な質問セットを提示しています。これは、セキュリティ担当者が現在市場に蔓延する「AIウォッシング」と真に有効なソリューションを見分け、導入を測定可能な運用成果に結びつける助けとなるものです。以下では、Gartnerが評価すべきとする主要な観点と、それを裏付ける最新の調査データを組み合わせて紹介します。
1.AIは実際にチームの業務負荷を軽減しているか
Gartnerが最初に挙げる質問群は、ベンダーの機能一覧からではなく、自社のボトルネックから出発すべきだという考え方に基づいています。自動化のための自動化を導入するのではなく、自動化によって反復的で単調な作業に費やす時間を有意に削減できるユースケースを洗い出すことが重要です。

AI SOCエージェントの活用状況(出典:Gartner)
ただし、自社のボトルネックと、それに対処するためにこれまで導入してきた対策を改めて見直すことも重要です。
調査データが一貫して示しているのは、多くのチームがこの問いに対して、自らの業務量を不完全にしか把握できていない状態で答えているという実態です。2026年の調査では、回答者の28%がアラートを一切調査していないと回答し、最大40%の組織がキャパシティの制約から特定の検知ルールを無効化していました。
エスカレーションに一度もつながっていないルールをチューニングして精度を高めるのは健全な検知エンジニアリングと言えますが、出力が読まれていないという理由だけでルールを無効化するのは、いずれ裏目に出やすいカバレッジ判断です。回答者の約60%が、見逃した、あるいは調査しなかったアラートが重大な結果につながったと回答しており、34%についてはそれが過去1年間に3回以上発生していました。
現行業務を基準に価値実証(PoV)の範囲を決める際には、キャパシティの制約によって抑制されてきたアラートの一部を、この検証のために改めて対象に加える価値があるかもしれない点を考慮すべきです。
2.どの成果が意味を持つか
評価は処理したアラート件数にとどまらず、TDIR(脅威検知・調査・対応)の成果を中心に据えるべきです。具体的には、平均検知時間、平均対応時間、誤検知の削減、そして最終目標としての平均封じ込め時間です。リスクが実際に低減されるのは封じ込めの段階であるためです。
この項目でほとんどの調達プロセスが省いてしまいがちなのが、自社と類似した環境における実世界のベンチマークをベンダーに求め、それらの数値がPoC(概念実証)由来なのか、それとも継続的な本番運用から得られたものなのかを確認することです。
速度に関しては、調査データは心強い結果を示しています。AIを利用しているチームのうち72%が、調査時間を少なくとも25%短縮できたと回答しています。
3.ベンダーは3年後も存続しているか
Gartnerは、一般提供の状況、顧客基盤、資金調達状況、負荷がかかった際の価格の振る舞いについて質問することを推奨しています。同時に、この分野では今後統合・淘汰が進む可能性が高いことも認めています。
この分野のベンダーの多くは、現在セキュリティ運用チームが抱える主要な課題の一つであるアラートのトリアージと調査というユースケース向けにソリューションの提供を始めています。しかし、調査結果を一貫して記録し、複数のデータソースに対してクエリを実行・連携できるシステムを導入することは、検知エンジニアリングや脅威ハンティングといった隣接ユースケースを支える追加機能を強化する強力な土台にもなります。AI SOC分野のベンダーがそうした方向へ製品を拡張していくのは自然な流れであり、想定の範囲内と言えるでしょう。
ソリューションの持続性は、ベンダーが関与しない場合であっても検討すべき事項です。「State of AI in Security Operations」調査では、この問いを内製か購入かという判断にまで広げています。AI利用者の72%が、自社独自のツール構築を試みたことがあると回答しています。こうした内製ツールは、当初は主要指標において商用製品と同等の成果を示していました。内製したチームの73%が調査時間を4分の1以上短縮できたと回答しており、これはAI利用者全体の72%とほぼ同水準です。
しかし、そのうち46%は最終的に放棄されたか、本番環境に到達しなかったか、あるいは商用製品に置き換えられました。失敗の原因は保守にありました。ツールの変化への追随、新たなアラート種別への対応、開発を担当したエンジニアの離職後も精度を維持し続けることが困難だったのです。
4.セキュリティ成果と同時にアナリストの能力も向上しているか
Gartnerは、アナリストの補強・スキルアップに関するより踏み込んだ質問群も挙げています。優れたソリューションは、アナリストの専門性を高め、継続的な学習を促し、アナリストの実効性と満足度において測定可能な改善をもたらすべきだとしています。
調査データは前向きな結果を示しています。57%が、今後2年間で人員数を変えることなくSOCの役割がシフトすると予想しており、9%は人員増加を見込んでいます。想定されているのは業務の再配分です。AIがTier 1・Tier 2の調査業務を吸収するにつれ、アナリストはインシデント対応、脅威ハンティング、検知エンジニアリング、敵対的シミュレーションへとシフトしていきます。
実際、脅威ハンティングはこうしたリソースの受け皿として有力な候補です。頻繁に実施すれば大幅なリスク低減につながるためです。全回答者のうち38%が、能動的なハンティングによって、検知ツールが見逃していた悪意ある活動を発見した経験があると回答しています。この発見率は、週1回以上ハンティングを実施しているチームでは49%まで上昇する一方、月1回未満のチームでは14%まで低下します。
5.自律性の境界線をどこに設定するか
Gartnerは、「人間がループの中にいる(human in the loop)」という各アクションに承認を必要とする状態と、「人間がループの上にいる(human on the loop)」という戦術的ではなく戦略的な監督にとどまる状態を明確に区別しています。
現時点では、実務担当者は選定したソリューションへの信頼を築きながら、かなり保守的にこの線引きを進めています。
調査データによると、57%が依然としてアラートをクローズする前にすべてのAI判断を人間が確認することを必須としています。44%はAIが対応策を提案し、それを人間が実行するという運用を許容しており、30%は低リスクのアクションを自動実行、13%は中リスクのアクションにまで自動実行の範囲を広げており、13%はAIを読み取り専用のトリアージにとどめています。完全かつ監督なしの自律性を認めている回答者は一人もいませんでした。
アクションのカテゴリごとに自律性を付与し、デフォルトでは人間の承認を必要としつつ、実績が積み上がるにつれて範囲を広げていくというアプローチは、Gartnerの提言とも、実際にチームが行っていることとも一致しています。
6.既存のスタックの中で実際に機能するか
ここでの目標は相互運用性です。
Gartnerの統合カテゴリーは、SIEM、EDR、SOAR、ID管理へのネイティブ対応という当然求められる範囲をカバーしつつ、重要なアーキテクチャ上の問いを投げかけています。それは、そのソリューションがデータの一元化を必要とするのか、それとも分散環境をまたいで動作できるのか、という点です。
Gartnerの見解と、当社自身が顧客から得た知見によれば、AI SOCエージェントは他のAIと並行して稼働するケースが増えています。GartnerはITSM、XDR、SIEM、エクスポージャー管理ツールが今や独自のLLMを搭載していることを踏まえ、あるソリューションがいくつの既存LLMと連携できるかを問うています。ここでの相互運用性とは、AI対応ツールと競合するのではなく、それらと協調して機能することを意味します。
統合に関する主張は口にするのは容易でも、検証するのは難しく、構築・維持するのはさらに困難です。この点は、自社内でソリューションを構築するより購入する方が有利だと言える理由の一つです。そのため、自社のスタック内で機能するかどうかを評価する際、顧客は以下のような点を重視する傾向にあることを当社は確認しています。統合範囲の広さよりも統合の深さ、双方向の同期、そして新しいコネクタを追加する際の容易さです。
7.ソリューションは透明性・監査可能性を備え、企業のリスク許容基準に沿っているか
透明性のカテゴリーでは、判断がどのように説明されるか、すべての自動アクションについて人間が読める監査証跡が存在するか、どのサードパーティ製LLM技術が関与しているか、顧客データがどこに送られるか、ローカルホスティングのようなより強固なデータ主権のオプションが利用可能か、そしてアナリストによる精度に関するフィードバックがどのようにチューニングへ反映されるかが問われます。
調査データでは、これらの懸念事項が導入障壁リストの上位に位置しています。データプライバシーとモデルの学習方法を挙げた回答者は44%、説明可能性を挙げた回答者は41%に上りました。幸い、どちらも契約締結後ではなく、評価の段階で検証可能な項目です。
アナリストは、システムが投げたすべての質問、すべてのソースに対して実行したすべてのクエリ、その結果として返ってきた内容、そしてそのエビデンスがどのように判定へとつながったのかを確認できるべきです。さらに、そのクエリの一つをコピーして元のツールで実際に実行し、結果を確認できることも必要です。再構築も再実行もできない調査は、監査担当者に対しても、なぜそのアラートがクローズされたのかを尋ねる相手に対しても、正当性を説明できません。
ケース管理、学習機能、契約解除条件を含む、より広範な評価基準については、エージェント型SOCプラットフォームの評価に関するこのガイドで取り上げられています。
結論
AI SOCエージェントの評価を検討しているセキュリティ責任者にとっての要点は、セキュリティプログラムの改善には構造化された成果志向の評価が不可欠だという点です。
Gartnerのフレームワークの価値は、急速に変化するこの分野において特定の勝者を安易に宣言することを避け、購入者を機能一覧ではなく成果へと向かわせる点にあります。そして調査データは、フレームワークだけでは提供できない具体性を加えています。すなわち、各チームが急速に導入を進め、自律性は慎重に付与しながらも、具体的な成果が着実に改善しているというエビデンスです。
Gartnerの評価フレームワークを自社の調達プロセスに適用したい、あるいは今年の「State of AI in Security Operations」の調査結果全体に目を通したいという組織向けに、完全版のレポートがダウンロード可能となっています。
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/09/09/prophet-security-evaluating-ai-soc-agents/