- 研究者が、AIアグリゲーター「302.ai」から22.7TBのデータが露出していたことを発見。チャットログや個人情報が含まれていた
- 流出した記録には、ユーザーのプロンプトやAIの回答、メタデータ、機密性の高い企業文書が含まれていた
- 機密データをサードパーティのAIプラットフォームやサービスと共有するリスクが改めて浮き彫りに
「公開AIに機密データを入力してはいけない」。セキュリティ専門家が声を大にして訴えてきた警告が、AIアグリゲーター「302.ai」の事例によって裏付けられた形です。
Cybernewsの研究者らによると、同社は数テラバイト規模のユーザーデータと企業データを流出させていました。個人を特定できる情報(PII)や機密性の高いビジネス文書など、多岐にわたるデータが含まれていたといいます。
ハッカーにとっての「宝の山」
AIアグリゲーターとは、複数のAIモデルやツールを一か所に集約したプラットフォームです。ユーザーは各プロバイダーのサイトを個別に訪れることなく、モデルを切り替えて利用できます。
たとえば、ChatGPTで作業を始め、ボタン1つでClaudeに切り替えるといった使い方が、単一のインターフェースと単一のサブスクリプション(またはAPI)で可能になります。
AIアグリゲーターの用途はさまざまですが、最も多いのは、各モデルの回答を手軽に素早く比較することです。
302.aiは6年前、香港に拠点を置くUniverads Technology Limitedによって立ち上げられました。
Cybernewsによると、同社は暗号化もパスワード保護もされていない、公開状態のAzureストレージバケットを放置していました。バケットには1760万件のファイルが保存されており、アーカイブ全体の容量は22.72TBに達します。最も多くを占めたのは画像ファイルで、約9TBでした。動画が7.7TB、音声が5.6TBで、残り約500GBがユーザーのチャットログでした。
チャットログは14万4000件超にのぼり、.jsonファイルとして保存されていました。ユーザーのプロンプト、AIボットの返答、使用したモデル、トークン単位のコスト、タイムスタンプ、その他のメタデータなど、多くの個人情報が露出していました。ユーザー自身が入力した氏名、生年月日、性別、住所、その他の連絡先も大量に含まれているとみられます。
流出した情報の中には、かなり気まずい内容も含まれていました。研究チームは次のように記しています。「一部の企業が業務用途で同サービスを利用していることがわかりました。たとえば、著名なラブドール製造企業が運用するカスタマーサポート用チャットボットのチャットログが、複数見つかりました」
こうした非公開の、時にきわめてプライベートなデータは、サイバー犯罪者にとって宝の山です。どの企業になりすませばよいか、どのような文脈に触れ、どんな文面で誘えばよいかを正確に把握したうえで、高度にカスタマイズされたフィッシングメールを作成できるためです。被害者が反応すれば、ビジネスメール詐欺(BEC)や不正送金、ランサムウェア感染につながるのが通例です。
データベースは閉鎖
Cybernewsの研究者はUniverads Technologyに連絡を取りましたが、返答はありませんでした。一方で、同社はその間にデータベースへのアクセスを遮断し、機密ファイルは現在、露出していません。
ただし、重要な疑問は未解決のままです。このデータベースはUniverads自身が管理していたのか、それとも外部の第三者に委託していたのか。同社はいつからこのデータを収集していたのか。アーカイブは、どれだけの期間、無防備な状態だったのか。Cybernewsが発見したのは2026年8月上旬で、その1か月後には遮断されたことを確認しています。Cybernewsのチームより先に発見した者はいなかったのか。ファイルが第三者にコピーされたり閲覧されたりした形跡はないのか。悪用された証拠や、ダークウェブへの流出の証拠はないのか。
これらの疑問に答えが示される可能性は低いでしょう。同社が速やかに対応し、データベースを閉鎖したことを踏まえれば、悪意はなく、純粋な過失による流出だったと考えて差し支えありません。
残念ながら、このような偶発的なデータ流出は非常に頻繁に起きています。多くの組織は、クラウド上で生成・保存するデータを守る責任が自分たちにあることを知らないか、単に忘れています。その結果、大規模な流出に関する新たな報告がほぼ毎週のように出ており、中にはブラジルのように、特定の国の全国民に影響しかねないものもあります。