新たに悪用される脆弱性の数は着実に増加していますが、深刻度の高い脆弱性に対する概念実証(PoC)エクスプロイトはそれを上回る勢いで急増しています。Rapid7によると、攻撃者の好みも明確になっています。
攻撃者は、ごく限られた範囲の重大な脆弱性に狙いを絞る傾向を強めています。早ければ3日以内に脆弱性をエクスプロイト化し、攻撃に利用しています。
Rapid7の最新の四半期脅威情勢レポートによると、2026年第3四半期に新たに悪用が確認された脆弱性は43件で、前年同期比19%増でした。
ただし、Rapid7で脆弱性インテリジェンス担当ディレクターを務めるDouglas McKee氏は、この19%増を「悪用が緩やかに着実に増えている」ことの表れと捉えるのは誤りだと述べています。
McKee氏は次のように説明します。「深刻度が7から10と評価される新たな高リスクのCVEは前年比で133%増加しました。公開されているPoCコードも同じ期間に約86%増えています。つまり、悪用され得る脆弱性の山は、攻撃者が実際に悪用対象に選ぶ脆弱性の数よりもはるかに速いペースで膨らんでいるのです」
加速するエクスプロイトの生産ライン
Rapid7はさらに、アンダーグラウンドフォーラムへの投稿の大半が、脆弱性の公開から数日以内に、ベンダーのセキュリティ情報や米サイバーセキュリティ・インフラストラクチャセキュリティ庁(CISA)の既知の悪用された脆弱性(KEV)カタログに掲載済みのCVEを取り上げていたことも明らかにしました。
Rapid7は、これは真に新しいゼロデイの売買が広がっているのではなく、既知の脆弱性が素早く商品として再パッケージされていることを示すものだと指摘しています。
McKee氏は「AIツールによって、どのチームも現実的には対処しきれない速さで脆弱性が見つかっています。それでも攻撃者は、どの脆弱性を拾って武器化するかを慎重に選んでいます」と述べています。
攻撃者は、選んだ深刻度の高い脆弱性を平均3日以内に悪用していました。Rapid7が追跡した悪用事例の71%は、1週間以内に発生しています。認証が不要で、ユーザー操作もほぼ不要な脆弱性は、リモートからの悪用で特に好まれています。
防御側は適応する必要があります。深刻度の高い脆弱性が数週間ではなく数日でエクスプロイト化される時代になっているからです。
McKee氏は次のように話します。「深刻度の高い新たな脆弱性が公開されると、実環境で悪用が始まるまでの猶予はおよそ72時間です。しかも攻撃者は、広く網を張るようなことはしていません」
攻撃者が最も狙う脆弱性の特徴
今の攻撃者が買い物をしているのは、ただ一つの売り場です。リモートから、認証なしで、ゼロクリックで悪用できるエクスプロイトです。
Rapid7の調査では、今四半期に悪用された脆弱性のうち80%近くが、ログインなしでリモートから到達でき、しかも被害者がクリックする必要もありませんでした。
McKee氏は「パッチ適用のサイクルに今でも『月次』という言葉が入っているなら、はるか以前にそのスケジュールを捨て去った攻撃者を相手に防御していることになります」と警告します。
セキュリティチームは、すべてを今より速くパッチ適用しようとするのではなく、リスク管理の観点と自社環境に固有の事情に基づいて優先順位を付けるべきです。攻撃者の現在の傾向を踏まえ、セキュリティ責任者は、リモート・認証不要・ゼロクリックという攻撃者好みの特徴を持つ攻撃にさらされているシステムを洗い出す必要があります。そのうえで、各システムについて何日間の露出なら許容できるのかを検討することが求められます。
高まるAI主導型攻撃への懸念
CSOの親会社であるFoundryが近く公表するセキュリティ優先事項レポートによると、セキュリティ責任者の脅威に対する懸念の第1位はAIを悪用した攻撃でした。CISOの45%が、懸念の度合いを「高い」と評価しています。
ただしRapid7の調査では、人工知能が攻撃の運用面で役割を果たしていたのは、追跡した攻撃のうち約8%にとどまりました。
McKee氏は、Rapid7が確認した攻撃者によるAI利用について、こう述べています。「AIは攻撃の戦術的な中間段階を担っていました。次に使う手法を選んだり、労力をかける価値のある標的を絞り込んだりといった役割です。誰を狙うのか、なぜ狙うのかを決めていたわけではありません。その判断は依然として人間が下していました」
それでも、ほかのセキュリティ専門家は、AI主導型攻撃の波が拡大していると警鐘を鳴らしています。
エージェント型AIセキュリティベンダーUnderDefenseのCEO、Nazar Tymoshyk氏は、ロシアのAPTグループがすでにAIを使った攻撃を実行していると述べ、今後さらに増えると予測しています。
同氏によると、ロシアなどのAPTグループは、制約やガードレールが少ないDeepSeekなど中国製モデルを使うことが多く、攻撃の最中にモデルを切り替えられることも少なくありません。
Tymoshyk氏はさらに、ハッカーはエージェント型の攻撃を実行することで、データベース管理やCI/CDパイプラインなどに関する、従来の人間だけの攻撃チームが通常は得られないほど深い技術的知識を活用できると付け加えています。
人間のチームは、Webアプリのセキュリティやマルウェア開発など、特定の技術に特化した複数の個人で構成されるのが一般的です。これに対し、エージェント型ツールを悪用すれば、攻撃者は複数のスキルを併せ持つ存在をすぐに利用できます。人間の形では容易に採用できない人材を、手元に確保できるわけです。