暗号資産アカウントは以前から、オンライン上のハッキングや詐欺の標的とされてきました。しかし新たなレポートによると、暗号資産窃盗のうち現実世界を起点とするケースの割合が増えており、犯罪者が対面での強要によってデジタル資産を盗み出す事例が拡大しているといいます。
ブロックチェーンセキュリティ監査企業CertiKによると、暗号資産業界で「レンチ攻撃」と呼ばれる対面式の実力行使は、2026年上半期に前年同期比33%増加しました。
同社は公開情報やその他の確認済み情報源を用いて、6月までに世界全体で52件のレンチ攻撃を確認しました。2025年の同時期は39件でした。
CertiKはこのラベルを、「攻撃者が暴力、脅迫、または信憑性のある脅しを用いて、被害者にデジタル資産の送金、秘密鍵の引き渡し、ウォレットのロック解除、認証情報の開示を強要したり、第三者に圧力をかけて従わせたりする」物理的強要事案に対して用いています。
こうした犯罪は、住居侵入、誘拐、そして稀なケースでは殺人など、従来型の犯罪類型に分類されます。CertiKは、被害者の中には当局へ届け出ない者もいる可能性があり、また多くの事案は捜査が完了するまで公になっていないことから、今回の調査は実際の件数を過小に見積もっている可能性が高いとしています。
脅迫が対面で行われない場合であっても、その手口は暗号資産ウォレットやプラットフォームへの不正アクセスに通常伴うソーシャルエンジニアリングの域を超えています。
レポートは「攻撃者は、配偶者、親、子供、従業員、運転手、アシスタント、親しい友人を脅すことができれば、主要な保有者本人に直接アクセスする必要はない」と指摘しています。「代理標的となる人物は、往々にしてセキュリティ対策が甘く、行動パターンが予測しやすく、訓練も不十分であることが多い」といいます。
具体例としては、4月にフランス人の母子が誘拐された事件、2025年にミネソタ州で発生した住居侵入事件、そして2024年にコネチカット州で起きたランボルギーニの車両強奪を伴う事件などが挙げられます。
関連する被害額も急増しているとみられ、今年これまでに報告された金額は1億2,400万ドルに達しており、2025年上半期に報告された1,050万ドルと比べて大幅に増加しています。ただしCertiKは、この数字を「実際に実現した犯罪利益の指標としてではなく、レンチ攻撃全体の金銭的規模を示す指標」として捉えるよう読者に勧めています。この数字には被害者から強要された資金だけでなく、資産が凍結された可能性があるケースも含まれているためです。
セキュリティ企業や法執行機関は、ここ数年にわたりレンチ攻撃について警鐘を鳴らしてきました。ブロックチェーン分析企業のTRM Labsは昨年3月にこの現象についてレポートを発表し、英国の業界団体CryptoUKは12月に法執行機関を交えたウェビナーを開催しました。
研究者のLukasz Olejnik氏は1月、レンチ攻撃はユーザーがオフラインウォレットを自宅に保管するなど、暗号資産を「セルフカストディ(自己管理)」している場合につけ込むものだと指摘しました。この場合、銀行のような、取引を停止・遅延・取り消しできる仲介者が存在しません。
同氏は「セルフカストディの下では、ユーザーは自分一人で対処するしかない」と記しています。
翻訳元: https://therecord.media/wrench-attacks-against-cryptocurrency-holders