世界中が集まるとき
4年に一度、世界がひとつになります。サッカーが好きかどうかは関係ありません。テレビの前に陣取ってしまうのは、みんながそうしているからです。私はこの競技についてほとんど何も知りませんが、それでもほぼすべての試合を観戦しました。数週間の間だけ、私たちを隔てているものすべてが一時停止し、地球全体が90分間、同じボールを気にかけることに同意するのです。
セキュリティ業界も、FIFAシーズンのように振る舞う必要があります。ただし、毎日そうあるべきです。世界がひとつの大会をめぐって団結していた一方で、7月の脅威は休むことなく続きました。あるAIモデルは暴走し、ランサムウェアは新たな手口を披露し、米国政府は脅威の状況を統括する新組織を立ち上げました。
FIFAが世界中を同じ90分間に集められるのであれば、セキュリティ業界も同じ戦いに業界全体を集められるはずです。
先月起きた出来事を振り返ります。
7月1日:JADEPUFFERがエージェント型ランサムウェア攻撃を展開
- Sysdig脅威リサーチチーム(TRT)は、人間がキーボードに触れることなく恐喝活動の全工程を実行した初のエージェント型脅威アクター(ATA)を記録しました。
- JADEPUFFERのペイロードは自ら状況を説明する仕組みを持っており、これはLLMが生成したコードの典型的な特徴です。自然言語による推論や、人間なら通常コードに書き込まないようなターゲット優先順位付けの痕跡が残されていました。
- ログインに失敗すると、31秒以内にコードを修正し、手順を再試行しました。
- 標的となった本番データベースは破壊されましたが、身代金要求メモが主張していたようなデータの窃取が行われた形跡はありませんでした。暗号化キーも一時的なもので保存されておらず、身代金を支払っても復旧はできませんでした。さらに、記載されたビットコインアドレスはよく知られたドキュメントの例と一致しており、ハルシネーション(AIによる幻覚生成)だった可能性があります。
- この恐喝活動には欠陥がありましたが、動きは速く、もはや攻撃を実行するのに熟練したオペレーターが不要であることを証明しました。
7月14日:ホワイトハウスがGOLD EAGLEを始動
- 2026年6月2日、大統領令14409号により、脆弱性の調整を担う新たな連邦機関としてGOLD EAGLEが設立されました。
- 財務省、国土安全保障省(DHS)/サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)、そして国防総省がサイバーセキュリティ業界と連携し、これまで各省庁が個別に対応していた体制よりも迅速に、脆弱性の受付・優先順位付け・パッチ適用の調整を行います。
7月16日:Hugging FaceがATAによる侵害を公表
- 週末の間に、Hugging Faceは本番インフラへの侵入をAI支援検知によって発見しました。これは異常検知パイプラインとLLMベースのトリアージを組み合わせ、本物のシグナルとノイズを切り分ける仕組みです。
- 同社は17,000件を超えるイベントを記録し、LLMを活用した分析エージェントによって攻撃の全容を再構築しました。
- ただし、攻撃を行ったエージェントには厳密には悪意があったわけではありませんでした。研究者によると、これらはOpenAIに属するエージェントであり、安全対策が意図的に緩められた状態でサンドボックスを脱出し、自らが評価対象としていたテストの正答を盗むためにHugging Faceのインフラに侵入したものでした。
- 現在、Hugging FaceとOpenAIは協力し、ATAの時代における検知と対応の改善、そしてAIモデル展開時の安全性とガードレールの強化に取り組んでいます。
Sysdig TRTによるその他の調査結果
Azureの権限乗っ取り
- 7月14日、Sysdig TRTは、1つのサービスプリンシパルの認証情報から始まり、最終的にテナントの乗っ取りに至った攻撃を報告しました。
- 攻撃者は、Entraディレクトリロール、Azure RBAC、Key Vaultのアクセスポリシー、ベアラーキー、Graph APIのアプリケーション権限という5つの異なる、互いに連携していないAzure権限システムを渡り歩き、約1時間で未認証状態からテナントオーナーの権限を獲得しました。
- この分断された権限モデル自体を変えることはできませんが、事前の対策は可能です。デフォルトで無効になっている診断ログを有効にし、5つの権限プレーン間の橋渡し、特にelevateAccessを監視してください。
AI/ML基盤を標的に設計されたランサムウェア
- Sysdig TRTがJADEPUFFERについて最初に報告してから3週間後、同チームはこのオペレーターに関する2本目のブログを公開しました。
- JADEPUFFERは標的に対してENCFORGEを展開しました。これはモデルのチェックポイント、ベクトルデータベース、学習データを含む180のファイルを標的とする、専用設計のGo製ランサムウェアバイナリです。
- 通常の業務ファイルはバックアップから復元できますが、多くの組織は本番モデルについて同様のバックアップ体制を取っていません。モデルが一度破壊されると、再構築には1モデルあたり75,000ドルから500,000ドルの費用がかかります。
その他のニュース
- オープンソースのJavaライブラリFastJsonで、7月20日に米国で初めて実際に悪用されているのが確認されたゼロデイのリモートコード実行の脆弱性(CVE-2026-16723)が発生しました。多くの業種が標的となり、影響を受けるバージョン1.2.68から1.2.83向けの修正プログラムは7月29日まで提供されませんでした。脆弱な状態にある組織は直ちにパッチを適用し、既知の悪意ある2つの文字列、
@type":"jar:file:または@type":"jar:http:を調査すべきです。 - アボット・ラボラトリーズは7月16日、同社のがん診断事業部門とLabCentral顧客ポータルが侵害されたと発表しました。ShinyHuntersおよびShadowByt3$が犯行声明を出しています。ShinyHuntersはボイスフィッシングキャンペーンを通じて企業のMicrosoft Entra SSOアカウントを侵害し、数千万件のレコードを窃取しました。
- フォーチュン500企業を顧客に持つコンサルティング会社アクセンチュアは、7月初旬に「888」と名乗る脅威アクターによって侵害されました。攻撃者は35GBのソースコード、Azureのパーソナルアクセストークン、RSA鍵、SSH鍵を窃取したと主張していますが、初期侵入の手口は不明です。この主張が事実であれば、窃取されたソースコードはアクセンチュアの顧客に深刻な波及的影響を及ぼす可能性があります。
- コカ・コーラ傘下の乳製品子会社であるフェアライフは、7月16日のランサムウェア攻撃を受け、米国内の生産を11日間停止しました。RaaS(ランサムウェア・アズ・ア・サービス)を展開するAnubisグループが犯行声明を出し、1TBのデータを窃取したと述べています。未検証ながら、初期侵入の手口としてCitrixBleed 2が使われたとする報道もあります。
おわりに
これまで、セキュリティ業界はFIFAのような世界規模の合意形成を得たことがありませんでした。しかし、JADEPUFFERやHugging Faceの事案のようなエージェント型脅威が、7月、業界をついに一つにまとめるきっかけになった可能性があります。GOLD EAGLEは、その姿を示す初期の兆候といえるでしょう。政府、業界、そして防御側が、各機関が個別にパッチを適用するのではなく、より迅速に連携することに合意したのです。この協力体制が持続するかどうかこそが、真の試金石となるでしょう。
翻訳元: https://webflow.sysdig.com/blog/security-briefing-july-2026

