AI支援を受けた研究者が単独で、公開されているモデルに20回未満のプロンプトを与えるだけで、24時間足らずのうちに影響範囲の広い脆弱性を発見しました。
Zoomは自社アプリケーション全体にわたる4件の脆弱性を修正しました。このうち2件は、会議に参加した攻撃者が、他の参加者側で何の操作も必要とせず、そのシステム上で悪意のあるコードを実行できてしまうというものです。
脆弱性のうち3件は、すべてのプラットフォーム向けZoomクライアントアプリケーションのバージョン7.1.5および7.0.6より前のものに影響します。残る1件は、Windows向けZoom Workplace VDIクライアントおよびすべての対応プラットフォーム向けVDIプラグインのバージョン7.0.11および6.6.15より前のものに影響します。また、Zoom Roomsやバージョン7.1.0より前のZoom Meeting SDKなどの製品も影響を受けます。
クライアント側の3つの脆弱性は、テキスト注釈機能におけるメモリ破損の問題であり、A SecurityのAIエージェントを利用した研究者によって発見されました。
「欠陥の発見からエクスプロイトの構築までの全工程を、A [Security]は公開されているAIモデルに対して20回未満のプロンプトを与えることで、24時間以内にやり遂げました」と同社はレポートの中で述べています。「かつてはこの種の能力は国家支援型の脅威アクターだけが持ち得るものでしたが、精鋭チームや数か月の作業、そして莫大な予算を必要とするというモデル自体が崩れ去りました。今日、たった1人の研究者が1日足らずで国家レベルのエクスプロイトを開発できたのです」。
研究者たちは、こうしたエクスプロイトが持つ影響範囲の大きさを指摘しています。Zoomはフォーチュン100企業の70%、フォーチュン500企業の大半、さらに連邦政府機関でも利用されています。加えて、このエクスプロイトが機能するには会議参加者が何らかの操作(クリックやダウンロードなど)を行う必要が一切ありません。すべては静かに進行し、攻撃者が自分のコンピューター上で悪意のあるコードを実行したことを示す兆候は何も現れません。
脆弱性の仕組み
参加者が共有画面やホワイトボード上で図を描いたり、文字を書いたり、テキストをハイライトしたりすると、そのクライアントはピクセル情報を送信するわけではありません。代わりに、その操作を表す型付きのインメモリオブジェクトを構築し、これをバイト列にシリアライズしてZoomのMultimedia Routerに送信します。Multimedia Routerはこれをすべての会議参加者に転送し、各参加者のクライアントアプリケーションがそのオブジェクトをデシリアライズします。
データのシリアライズおよびデシリアライズ処理は、アプリケーションにおけるメモリ破損の脆弱性の大きな原因となってきました。これは実装を誤りやすく、しかも入力データを攻撃者が制御できるためです。Zoomは、デシリアライズされた注釈パケットを書き込むために固定サイズ128バイトのバッファを4つ確保していますが、コード側はパケットがゼロでないことしか確認しておらず、そのサイズは検証していません。
そのため、攻撃者が4つの固定バッファを満たし、さらに超えるようなパケットを生成できれば、バッファオーバーフローの状態を作り出し、それを悪用してアプリケーションのメモリ内に悪意のあるコードを挿入できます。
A Securityの研究者は、バッファオーバーフローの脆弱性であるCVE-2026-53413と、解放後使用(use-after-free)のメモリエラーであるCVE-2026-53415を特定しました。いずれもリモートコード実行につながる可能性があります。3つ目の欠陥であるCVE-2026-53414は境界チェックの欠落によるもので、サービス拒否(DoS)状態を引き起こす可能性があります。
Zoomはまた、VDIクライアントおよびプラグインにおけるパストラバーサルの欠陥CVE-2026-53416も修正しました。この欠陥は情報漏えいにつながる可能性があります。Zoom VDI(仮想デスクトップインフラストラクチャ)は、CitrixやVMware Horizon、Azure Virtual Desktopなどの仮想デスクトップ上で動作するように設計された、Zoomアプリの特別版です。
対策
Zoomクライアントの更新に加え、組織は自社会議のエンドツーエンド暗号化(E2EE)設定を無効にすることもできます。というのも、Zoomはこの欠陥に対して、悪意のある注釈メッセージをフィルタリングするサーバー側の緩和策を展開しているためです。E2EEが有効になっている場合、サーバー側には暗号化されたメッセージしか見えず、こうしたフィルタリングを行うことができません。
もう一つの対策として、会議の設定でゲストおよびスタッフのプラットフォーム別最小バージョンを指定し、パッチ適用済みのクライアントのみが会議に参加できるようにする方法があります。
「このエクスプロイトは会議への参加さえできれば実行可能だったため、参加ルールそのものがアクセス制御になります。待機室の設定、パスコードの利用、認証済みユーザーのみへの限定、個人ミーティングリンクを公開しないことなどが重要です」と研究者たちは述べています。「そのうえで、誰も使っていない機能は無効にすべきです。オプション機能はそれぞれがもう一つのパーサーになるからです。Zoomでは、注釈機能、ファイル転送、ホワイトボード機能、リモート制御、サードパーティアプリのロックを検討し、画面共有はホストのみに限定することを考慮してください」。