AI時代の到来とともに、AIエージェントが運用するSOC、マシンスピードでの脅威封じ込め、そしてより階層の浅いセキュリティチームが、サイバー防御の実践方法を一変させる可能性があります。
AIの急速な台頭は、多くの職業を根底から変えてしまいました。中でもソフトウェアエンジニアリングと開発は、おそらく最も大きく様変わりした分野でしょう。開発者が何時間もかけてコードを書くという従来の「孤独な作業」は、多数のチャットボットとの共同作業へと取って代わられつつあります。
Google Cloudの研究者が発表した2025年版「State of AI-Assisted Software Development」レポートによると、当時すでにLLMの利用はコーダーの間でほぼ普及しきっており、回答した開発者の90%が業務の一部としてAIを使用し、80%が生産性の向上を実感していました。さらに以前のMicrosoftの調査では、AIが生産性に与える影響が明らかにされており、AIを利用した開発者は利用しなかった開発者に比べて26%多くのタスクを完了していました。
生産性向上の裏には、ソフトウェア開発者の雇用への影響という負の側面があります。データを見つけるのは容易ではないものの、状況証拠やいくつかの調査結果は雇用への影響を示しています。例えば2026年3月に発表された米連邦準備制度理事会(FRB)のワーキングペーパーでは、コーダーの雇用が減速していることが判明しています。論文の著者らは「コーダーの年間雇用成長率は、ChatGPT登場以前と比べて現在では約3%低いという、確固たる証拠が得られた」と結論づけています。
開発者の求人数が減少しつつあるだけでなく、その職務を取り巻く組織体制そのものも変化しています。Gartnerは「2030年までに、組織の80%が大規模なソフトウェアエンジニアリングチームを、より小規模でAIを活用したチームへと進化させる」と予測しています。中堅・シニアクラスの専門職が増え、マネージャーはより広範な業務領域を統括するようになり、AIガバナンス専門職やコンテキストデザイナー、AI活用型UXデザイナーといった新たな職種が生まれ、システム思考への需要も一層高まるとみられます。
専門家たちは、こうした変化がサイバーセキュリティ分野でも間もなく実感されるようになると予測しています。AIエージェントが運用するSOC、脆弱性トリアージの継続的な自動化、マシンスピードでの脅威封じ込め、そして人間が防御エージェント群を指揮するという体制などが挙げられ、情報セキュリティの姿を現状から一変させる可能性を秘めています。
とはいえ、ソフトウェア開発とサイバーセキュリティの進化を単純に同列に語ることはできません。
「私たちにとって難しいのは、エンジニアリングの世界がどこに向かっているかという話です。完全にループする自律型エージェント、フィードバックループなど、今まさに構築されているものすべてに移行し、人間はマシンを監督するだけになる、という方向です。しかしセキュリティには本当の意味で再現性が求められます」と、Contrast SecurityのCISOであるDavid Lindner氏はCSOに語りました。つまり、セキュリティ管理策には一貫性があり、繰り返し同じ結果を生み出すことが求められるということです。
さらに、サイバーセキュリティ分野での変化は、ソフトウェア開発分野で見られたほど急速には進まないとみられています。
「サイバーセキュリティがそれほど早く完全に様変わりするとは思っていません。ただ、月単位で大きな変化が見られるのは確かでしょう。そして2年後には、今日の姿とは見分けがつかないほど変わっているかもしれません」と、Cloud Security AllianceのCEO兼共同創業者であるJim Reavis氏はCSOに述べています。
自律型SOCはもう目の前
サイバーセキュリティの新時代への移行はすでに始まっており、最も明白に変化が現れている領域がセキュリティオペレーションセンター(SOC)です。多くの専門家は、今日フルスタッフのSOCが担っている業務をAIエージェントが容易にこなせるようになり、しかもより速く、より高い精度で実行できるようになると口を揃えます。
Contrast SecurityのLindner氏は「Jira経由でインシデントが上がってきた際、エージェントがGitHubからすべての情報を取得し、Datadogからもすべての情報を取得して、初期トリアージを行ってくれました」と話します。「ジュニアクラスのSOCアナリストと呼ぶのも憚られるレベルです。もはや、初期トリアージを担う一人前のSOCアナリストと言っていいでしょう」。
ただし、SOCに取って代わるAIエージェントにどこまでの権限を与えるべきかについては、意見が分かれているようです。
Menlo SecurityのCISOであるLionel Litty氏はCSOに次のように語りました。「私たちは確かにAIツールを活用していますし、以前は一次トリアージとして人間が行っていた作業の一部は、今ではエージェントが担っています。ただ現時点では、少なくとも私たちの組織においては、SOC内でエージェントを自由に動かして、『これは無視していい』『これは絶対に確認すべきだ』といった最終判断を任せるところまでは踏み込めていません。あくまでコンテキストの提供や優先順位付けの支援として利用しています」。
それでも専門家たちは、SOCアナリストが担ってきた一次対応業務の大部分がエージェントへ移行し、人間はエスカレーション対応や監督、より高度な判断業務に専念するようになると考えています。
Reavis氏は「基本的にサイバーセキュリティのすべてが、マシンスピードで動くことを求められるようになります。SOCには間違いなく、エージェントだけが判断とトリアージを行う層が生まれるでしょう。そして、そこに関わる人間はより上位の、より経験豊富な立場になっていくはずです」と述べています。
脆弱性発見は増える一方、それを消化する力が足りなくなる
サイバー防御側にとってAIがもたらす最も直接的かつ継続的な変化が、膨大な数のサイバーセキュリティ脆弱性を急速に発見できるようになったことであるのは間違いありません。業界はすでにこの変化を体感しています。しかし、この変革にも欠点があります。発見されたすべての欠陥を追跡し修正することは、防御側の時間の大半を消耗させる困難な作業だからです。
CSAのReavis氏は「問題は間違いなく、その情報をどう消化するかという点にあります。この情報をどう吸収し、どうトリアージし、どう修正するのか、という話です」と指摘します。
Menlo SecurityのLitty氏は、エンジニアリング部門が対応しきれないほど多くの検出結果を生成してしまう静的解析システムで、この問題を以前から目にしてきました。「何百件もの問題を見つけることはできますが、その何百件をエンジニアリング部門に送りつけても、その大半が的外れであれば、エンジニアリング側はあなたのことを無視するようになるだけです」と語ります。
AIはすでにソースコード内の問題を発見・検証できますが、複雑な本番環境に対する自律的な検証はより難易度が高いままです。CSA AI Safety Initiativeの議長であり、White Rabbitの創業パートナーでもあるCaleb Sima氏は、ソースコードの解析と、複雑な本番環境を自律的にテストすることを明確に区別しています。
「ソースコード内の脆弱性発見という点では、もう完成していると思います」と同氏はCSOに語ります。「しかし、実際の企業の本番ネットワークにおいて、有効な脆弱性検出とその悪用検証を自律的に行うという意味での本当の脆弱性発見については、まだ道半ばです」。
いわゆる「脆弱性の大量発生」は、サイバーセキュリティ分野全体を見分けがつかないほど変えてしまうような根本的な変化というより、防御側が身をもって知っている、ますます広がりつつある「発見」と「対応」のギャップの問題だと言えます。Lindner氏はこう表現します。「私たちには問題を見つけることに苦労した経験はありません。苦労しているのは、見つけたすべての問題をトリアージし、修正することなのです」。
マシンスピードの攻撃には、マシンスピードの封じ込めが必要になる
従来のサイバーセキュリティの実践を過去のものにしかねないもう一つの変化は、自律型攻撃が脅威環境を一変させ、マシンスピードでの対応を必要とするようになることです。
Sima氏は「もはや単独の攻撃者がネットワーク内を這い回るという話ではなく、1つのエージェントが着地した瞬間に200体のエージェントを生み出し、それらが企業内を高速に移動して脆弱性を特定し、悪用していくという世界になります」と語ります。これらのエージェントは環境を偵察し、価値の高い資産を突き止め、防御側が対応する前にデータを持ち去ってしまいます。
サイバー防御側も、同じように電光石火の速さで対応できる体制を整えておく必要があります。「クラウド、アプリケーション、エンドポイントはすべて、本番環境を止めることなく、マシンスピードで能動的に隔離・移動し、制御を調整できるようにしておくべきです」とSima氏は述べます。
Litty氏は、防御側はどのコンポーネントであっても侵害される可能性があると想定し、その被害を最小限に抑えられるように環境を設計すべきだと考えています。「これは基本に立ち返る話です。最小権限の原則と職務分離です」と同氏は言います。「コンポーネントをきちんと分離し、多層防御を実現するにはどうすればいいか。1つの脆弱性が悪用されただけで会社全体が機能停止に陥らないようにするには、どうすればいいか、ということです」。
防御側チームは、より階層が浅く、エージェント中心になる
SOCアナリストの職が消えていく中で、AI中心のサイバーセキュリティの世界が業界全体での純粋な雇用減少をもたらすと結論づけたくなるかもしれませんが、専門家たちは、実際にはそうはならないだろうと言います。
むしろ専門家たちが予想しているのは、役割の再編と、より小規模でエージェント主体のチームの出現です。「リーダーと実際に手を動かす人材との間の階層が、フラット化していくと見ています」とReavis氏は言います。「よりシニアな人材が、自ら手を動かして物を作っていく必要が出てくるでしょう」。
White RabbitのSima氏は、労働力のあり方が「バーベル型」になると見ています。一方の端には高い経験を積んだ専門家が、もう一方の端にはAIネイティブなジュニア人材が位置し、その間で調整やプロジェクトマネジメントを担う層に圧力がかかるという構図です。「トップクラスのシニアな個人と、ジュニアやインターンという構図のバーベル型になっていくと思います」と同氏は述べます。「中間層は苦しい立場に置かれるでしょう」。
Contrast SecurityのLindner氏も、最も高い知識と経験を持つ人材が今後も活躍し続けるという見方に同意しています。
「AIが決して置き換えられないもの、それが経験と判断力です」と同氏は言います。「私のチームは今、非常にシニアなメンバーで構成されていますが、それが必要なのです。AIがどのように、そしてどのタイミングで自分たちのために機能するのかを完全に理解し、その経験と判断力を持つ人材が必要です。また、AIがうまく機能しない領域に別の管理策を追加すべき場面を見極める人材も必要です。AIはすべての場面で機能するわけではないからです」。
Litty氏によれば、AIが熟練したサイバーセキュリティ専門家を置き換えることは、おそらく決してないでしょう。「そうした領域から人間がいなくなるとは、今のところ考えていません」と同氏は語ります。
AIが本格的に定着していく中で、サイバーセキュリティ市場にとって有益な再編の一つとなり得るのが、LLMが今日乱立するセキュリティツール群を「減らす」のではなく、それらを「つなぐ」インターフェースになるという点です。
Sima氏は、ファイアウォールやエンドポイントツールなど各種システムを、それぞれの製品固有のインターフェースに頭を悩ませることなく、対話形式で操作できるようになる様子を描いています。「AIが、こうしたすべての断片化したセキュリティ製品をつなぐインターフェース、いわば接着剤になるのです」と同氏は述べます。
ツールの乱立を管理できる能力は、エージェントが爆発的に増え、その入れ替わりも加速する世界において、間違いなく歓迎されるでしょう。CSAのReavis氏は「テクノロジーの裾野は爆発的に広がっており、その規模は非常に大きなものになっています」と言います。「一方では、ツールの乱立が進み、今後は無数とも言えるエージェントが存在するようになるでしょう」。
一方でLitty氏は、既存のツールが増殖するのではなく、進化していくと考えています。「現時点で見えているのは、ツールそのものが変化していくということです」と同氏は言います。「必ずしもツールの数が増えるという意味ではありません。今のところ、ツールが爆発的に増えている様子は見られません」。
CISOは今、何をすべきか
CISOは、こうした変化やその他のAI関連の変化が実際に起こるのを待つ必要はありません。専門家は、セキュリティリーダーがアラートのエンリッチメント、初期トリアージ、脆弱性の優先順位付けといった、範囲が限定された高頻度の業務を見極め、権限を制限した状態でエージェントを試験導入することを推奨しています。
「シニアな人材に伝えたいのは、『何かを作りに行ってほしい』ということです」とReavis氏は言います。「何かを作るというのは、エントリーレベルの職に戻るという意味ではありません。自分の仕事の新しいやり方を生み出すものを作りに行くということです」。
CISOはまた、利用しているすべてのエージェントとAI活用型セキュリティ機能の一覧を基盤とした、新たなガバナンス体制の構築にも注意を向けるべきです。
Menlo SecurityのLitty氏は「まず、どこでAIを使っているかを把握するレジストリを整備し、その上で出力の品質を確認することです」と述べます。「AIツールの挙動に関するドリフト検知はどのように行うのか。まだ問題なく機能しているのか。SOCの例で言えば、AIエージェントが脆弱性のトリアージをどれだけうまくこなしているかを、どうやって評価するのか、ということです」。
最後に、自律型エージェントを匿名のエージェントとして扱ってはいけません。すべてのエージェントには、責任を負う名前付きの担当者またはチームが存在するべきであり、人間によるレビューは、影響が大きい、あるいは再現が難しい状況に限定して行うべきです。
Sima氏は「名前のある所有者が必ず存在しなければなりません。その所有者がチームなのか個人なのかは、そのAIエージェントが何を担っているのか、その目的やゴールが何か、そしてどのような仕事をこなすのかによって変わってきます」と語ります。
つまりCISOに課された課題は、すべてを自動化することではありません。エージェントがどこで機能するのかを見極め、エージェントにできることを制限し、失敗したときに誰が責任を負うのかを明確にすることなのです。