毎年10月は、セキュリティの基本を見直す公式の機会となります。しかし、基本は季節限定のテーマであってはなりません。毎月のように発生する侵害の原因は、まさにこの基本的な課題にあるからです。
ここで挙げる内容は、AIを使っているかどうかにかかわらず当てはまります。攻撃者はすでにAIを活用しているため、防御を素早く回す最短の道でもあります。AIの導入が遅れている組織であっても、このリストは変わらず有効です。当社の調査では、AIツールの50%が把握されないまま稼働しています(いわゆるシャドーAIです)。AIワークロードはランタイムで特定され、クラウド上で動作し、他のワークロードと同じ方法で保護されます。
データが示す現実:基本の欠落が今も侵害を招いている
「何をすべきか」に入る前に、なぜこれらの対策が必要なのか、その根拠から確認しましょう。
Verizonの「2026年データ侵害調査報告書(DBIR)」は、確認された2万2,000件超の侵害をもとに作成されました。システム侵入とソーシャルエンジニアリングを合わせると、侵害全体の78%を占めます。さらに、脆弱性の悪用が認証情報の不正利用を上回り、初期侵入経路の首位となりました。侵害の31%で確認され、前年比で55%増加しています。
また、人的要因は依然として侵害の62%に関与しています。サードパーティやサプライチェーンの関与は前年比60%増となり、侵害全体の48%に達しました。原因として挙げられるのは、MFAの未導入、ローテーションされていない、あるいは露出した認証情報、最小権限の不徹底です。
アイデンティティは共通項です。Google Cloudの「Threat Horizons Report H1 2026」によると、2025年下半期のクラウドおよびSaaSへの侵入の83%で、侵害されたアイデンティティが確認されました。Sysdigの「2026年クラウドネイティブセキュリティ・利用状況レポート」では、クラウドサービスプロバイダー(CSP)内の管理対象アイデンティティの97.2%をマシンが占めていました。2024年版レポートによれば、付与された権限のうち実際に使われているのはわずか2%でした。残る98%のアクセス権は、攻撃者に利用される余地としてそのまま放置されています。
基本を怠れば、そのツケは大きい
IBMの「2026年データ侵害のコスト調査」によると、世界平均は500万ドルに迫り、前年比で12%増加しました。米国の平均は1,150万ドルという巨額です。ここまで膨らむ理由として、DDoS攻撃や、まれに起きる破壊型ランサムウェア攻撃のようなケースでは、ダウンタイムによる損失が含まれることが挙げられます。ITICの「2024年版 1時間あたりのダウンタイムコスト調査」によると、大企業では1時間のダウンタイムだけで10万ドルを超えます。金融、医療、メディア、通信などの業界では、1時間あたり500万ドルをはるかに上回ることもあります。つまり、平均的な就業日と同じ長さの重要サービス停止が起きれば、復旧までに数千万ドルの損失が生じかねません。
必要なセキュリティの基本をひとまとめに
お気づきかもしれませんが、これらすべてのレポートに共通するパターンは同じです。基本が一貫して実行されておらず(そもそも実行されていないケースもあります)、その隙を突いて攻撃者が侵入を続けているということです。以下に挙げる内容に新しさや独自性はありませんが、それこそが要点です。全リストは次のとおりです。
アイデンティティとアクセス管理
- 昇格権限を持つすべての人間のアカウント、特にクラウド管理者とルートにMFAを強制する。「この管理者だけ」という例外は認めない。
- サービスアカウントには、長期有効なキーではなく、短期間で失効する認証情報とワークロードアイデンティティを使う。
- 人間・非人間を問わず、すべてのアイデンティティに最小権限の考え方を適用する。サービスアカウントやCI/CDパイプラインへの過剰な権限は、人間のアカウントへの過剰な権限と同等か、それ以上に危険である。脅威アクターによる標的化が増えているためだ。
- アクセス権の監査と取り消しは、思いつきではなく定期的なサイクルで行う。移行作業、インシデント調査、マーケティング施策のために付与した一時的なアクセスは、半年も残らず自動的に失効させる。(アクセスレビューのプロセスは、全面的な自動化を真剣に検討してください。)
- 認証情報とAPIキーは決まったサイクルでローテーションし、人事異動やサードパーティサービスの契約終了の際にも直ちに実施する。(これも自動化できます。)
- 初回ログイン時だけでなく、ランタイムでも異常なアイデンティティの挙動を監視する。有効な認証情報であっても、これまでにない操作、未経験の場所からのログイン、不自然な時間帯の利用は、依然として警告シグナルである。
脆弱性とパッチの管理
- CVSSスコアだけでなく、悪用可能性と露出度に基づいてパッチを適用する。インターネットに面したワークロードにある中程度の深刻度の欠陥は、三層奥に埋もれた重大な欠陥よりも先に悪用される。
- 修復のギャップを埋める。CISAのKEVカタログに掲載された重大な脆弱性のうち、昨年に完全に修復されたのは26%にとどまる。修復までの時間は、補足事項ではなくKPIとして追跡する。
- イメージと依存関係は本番環境に到達する前にスキャンし、稼働中のワークロードも継続的にスキャンする。今日クリーンなイメージでも、明日には新たなCVEが見つかる可能性があるためだ。
- 正確なソフトウェアインベントリ(SBOM)を維持し、新たなCVEが公開された際に、実際に何が稼働しているかを把握できるようにする。見えないものにパッチは当てられない。
クラウドとKubernetesの構成
- 企業全体のすべてのアカウントに対して、継続的にポスチャチェックを実施する。構成は静的スキャンの合間にずれる可能性があるため、継続的にスキャンする。
- ストレージはデフォルトで閉じ、必要な場合にのみ公開する。パブリックバケットやオープンなBLOBは、クラウドサービスプロバイダーで頻発する、防げるはずの露出経路である。
- ネットワークの露出を制限する。未使用のポートを閉じ、セキュリティグループを絞り込み、急いでいたという理由で許容的なファイアウォールルールが標準になることを許さない。Kubernetesでは、Podの通信がデフォルトで名前空間をまたいで開放されているため、ネットワークポリシーを追加する。
- KubernetesのRBACは最小権限にスコープする。可能な限り、クラスタ全体のロールではなく名前空間単位のRoleを使う。cluster-adminのバインディングは、いずれも担当者が必要な例外として扱う。cluster-adminを安易に配れば、横展開の問題を招くことになるからだ。
- Podの権限昇格、hostPathマウント、特権コンテナは、正当な理由がない限り無効化するか、厳しくスコープする。理由がある場合は、異常な使われ方がないか挙動を監視する。
ランタイムでの検知と対応
- すべてのワークロードにランタイムセンサーを配備する。ビルド時の静的スキャンでは、デプロイ後に起きることを捉えられないためだ。
- ドリフトは発生した瞬間に検知する。元のイメージに含まれていなかったバイナリをコンテナが実行し始めたら、それは危険信号である。
- 検知結果をMITRE ATT&CKにマッピングすれば、「何かが作動したが、何が起きたのか」ではなく、どの手法を相手にして対応しているのかをチームが把握できる。
- アラートは、自社環境の実際の挙動ベースラインに合わせて調整する。アラート疲れはトリアージの速度を落とし、誤検知は貴重な時間を無駄にする。
- 確度の高いアラートが発生したときにすぐ実行できる、検証済みの封じ込め措置を用意しておく。対応プレイブックのない検知は、侵害が進行する様子を記録するだけで、ただ眺めることになる。
ログ、監視、可視化
- クラウド、コンテナ、アイデンティティの各レイヤーのログを一元化する。ログが分断されていれば調査も分断され、対応は遅れる。
- あらゆる場所で監査ログを有効にし、想定どおりの内容が実際に記録されているかを確認する。
- 調査に足りる期間、ログを保持する。特定と封じ込めにかかる平均時間は247日であり、30日間のデータ保持ではその12%しかカバーできない。
- レイヤーをまたいでシグナルを相関させる。同じワークロードで起きたIAMの異常とランタイムの異常は、それぞれ単独で見る場合とは意味が異なる。
サプライチェーンとCI/CDの管理
- サードパーティの依存関係とコンテナのベースイメージは、取り込み時だけでなく継続的にスキャンする。
- CI/CDの認証情報とパイプラインの権限は、本番環境へのアクセスと同じ厳しさで扱う。パイプラインが侵害されれば、本番環境も侵害される。
- ベンダーやパートナーのアクセスを審査し、監視する。現在、サードパーティは侵害の48%に関与している。
- パイプライン全体でアーティファクトに署名して検証し、未検証のものがランタイム環境に到達しないようにする。
ガバナンス
- このリストにある基本事項のすべてに、明確な担当者を割り当てる。「セキュリティは全員の責任」で止まってしまうと、対策は抜け落ちる。
- 承認されたものを文書化する(AIツールも例外ではない)。承認済みツール、入力してよいデータ、新規ツールの承認者に関するポリシーを定める。AI関連のインシデントを経験した組織のうち、68%はAIガバナンスポリシーを持っていなかった。
- 定めたポリシーは徹底する。利用状況を検知できない禁止措置は、単なる提案にすぎない。
- 例外を認める場合は、担当者と有効期限を設定する。
- 確立されたフレームワークを拠り所にする。たとえば、AIリスクにはNIST AI RMFを使い、OWASP Top 10 for LLM Applicationsを補完的な脅威チェックリストとして活用する。
- これらの基本は、毎年10月だけでなく、実際に定めたサイクルで見直す。
人とプロセスの管理
- メールの添付ファイルだけでなく、ボイスフィッシング、MFA疲労攻撃、ヘルプデスクへのなりすましなど、現在実際に見られるソーシャルエンジニアリングを想定して訓練する。
- インシデントが起きる前に、実際に対応にあたる担当者とともにインシデント対応を演習する。
- 経営層には定期的に指標を報告する。特権アカウントのMFA適用率、最小権限になっているアイデンティティの割合、既知の悪用された脆弱性の修復までの時間などを含める。
まとめ
ここまでに挙げた提案は、いずれもすでに存在し、すでに効果が実証されている対策に行き着きます。MFAは有効です。最小権限は有効です。パッチ適用は有効です。ランタイムの可視化は有効です。それでも侵害が後を絶たないのは、これらの基本が毎日実践すべき規律ではなく、年に一度見直すチェックリストとして扱われているからです。
サイバーセキュリティ意識向上月間は、よい注意喚起の機会です。ただし、それだけに頼ってはいけません。
翻訳元: https://webflow.sysdig.com/blog/why-cybersecurity-awareness-month-still-comes-back-to-the-basics

