SAP Cloud SDKに重大な脆弱性、認証情報が窃取される恐れ 修正版にも懸念

SAP Cloud SDK for Pythonに存在する重大な脆弱性を悪用されると、攻撃者がアプリケーションの認証情報を盗み出し、連携するエンタープライズ向けクラウドサービスが危険にさらされる可能性があります。この脆弱性は、SAP Business Technology Platform(BTP)上で動作する一部のマルチテナントアプリケーションに影響します。

SAPは2026年10月13日、この脆弱性を「CVE-2026-89111」として公表し、CVSSスコアを最高値の10.0と評価しました。サーバサイドリクエストフォージェリ(SSRF)の脆弱性で、OAuth2認証リクエストを攻撃者が管理するサーバへリダイレクトさせ、アプリケーションの認証情報を露出させる恐れがあります。

SAPは修正版としてバージョン0.45.2を挙げています。しかし、独立したテストでは、その後にリリースされた6つのバージョンで、一部の認証経路に検証の欠落が見つかりました。すでにアプリケーションを更新済みの組織でも、追加の修正が必要になる可能性があります。

SAP Cloud SDKの脆弱性が認証情報を露出させる仕組み

この脆弱性はCWE-918に分類されます。OAuth2認証URLの組み立てに使われるtenant_subdomainパラメータの検証が不十分なことが原因です。

SAPのセキュリティアドバイザリによると、このパラメータを制御できる攻撃者は、アプリケーションのクライアントIDとシークレットを含むリクエストを、悪意のあるサーバへ向けさせることが可能です。盗まれた認証情報により、アプリケーションの権限に応じて、連携するサービスにアクセスされる恐れがあります。

クラウドのIDに関する弱点としては、ほかにもアカウント列挙に使われるOAuthクライアントIDのなりすましや、ブラウザ拡張機能を介したOAuthトークンの露出があります。ただし、これらは攻撃手法が異なり、今回のSAPの脆弱性とは無関係です。

悪用には、脆弱なSDK関数に渡されるテナントサブドメインの値を、攻撃者が操作できることが条件となります。2026年10月14日時点で、確認した公開情報の中に、CVE-2026-89111の悪用が確認されたとする報告は見当たりませんでした。

この脆弱性は、SAPの2026年10月のセキュリティアップデートの中で最も高いスコアの問題です。同アップデートには、新規のセキュリティノート16件とGitHubアドバイザリ4件が含まれています。

SAP Cloud SDKの修正版と影響を受けるバージョン

SAPは、0.45.2より前のSDKバージョンが影響を受けるとしています。2026年8月21日にリリースされたバージョン0.45.2では、RFC 1123のDNSラベル検証が導入され、認証URLに含まれる安全でないテナントサブドメインの値が制限されました。

ところが、The Hacker Newsによるテストでは、バージョン0.53.0から0.55.0にかけて、Destinationサービスの一部の認証経路で検証が欠落していることがわかりました。この6つのリリースはいずれも、SAPの11件の検証テストのうち9件に不合格でした。

追加の保護策はバージョン0.55.1で提供されました。また、バージョン0.58.3での別の変更により、テナントトークンURLインジェクションに関する別の問題にも対処しています。SAPは、これら6つの中間リリースがCVE-2026-89111の影響を受けるとは正式に分類していません。

組織は、以下の対策を優先して実施すべきです。

  • 影響を受けるインストールの特定:依存関係にあるsap-cloud-sdkを棚卸しし、0.45.2より前のバージョンと、0.53.0~0.55.0のリリースを確認する。
  • 更新の適用と修正の検証:修正済みの最新リリースへアップグレードし、悪意あるテナント値で認証リクエストをリダイレクトできないかをテストする。
  • 認証トラフィックの制限:登録済みのテナントサブドメインを許可リストに登録し、OAuth2リクエストを承認済みのIDプロバイダのエンドポイントに限定する。
  • 認証情報の保護強化:最小権限を徹底し、アプリケーションのシークレットを保護するとともに、認証情報のローテーション手順を維持する。
  • 不審なアクティビティの調査:認証ログと外向き通信のログを確認する。漏えいの疑いがある場合は、認証情報を失効させて更新する。
  • インシデント対応計画の検証:認証情報の失効、調査、封じ込め、アプリケーション復旧の手順を訓練する。

別の事例である悪意あるTerraformモジュールが関与したCoderレジストリの侵害は、開発基盤もクラウドの認証情報を露出させ得ることを示しています。ただし、攻撃のメカニズムは今回の脆弱性とは異なります。

SAPは、即時のパッチ適用が難しい場合の対策として、テナントサブドメインの許可リスト化を推奨しています。組織はSDKのバージョンと認証経路を確認するとともに、認証情報の露出を抑える対策を徹底する必要があります。

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翻訳元: https://www.esecurityplanet.com/news/news-sap-cloud-sdk-credential-vulnerability/

本記事は esecurityplanet.com の記事を翻訳・要約したものです。