スマートフォンや一部のデジタルカメラで撮影した写真には、撮影場所を含む隠れた情報が埋め込まれていることがあります。写真を誰かに共有する前にこのデータを削除すれば、位置情報の保護に役立ちます。しかし、画像そのものが手がかりとなって居場所を突き止められる可能性は残ります。
Graylarkという企業は、同社のAIツール「Raven」が、視覚的な手がかりだけで室内写真を特定の物件と照合できると説明しています。GPSデータも、窓からの眺めも必要ありません。
Graylarkは以前にも取り上げた企業です。同社のツール「GeoSpy」は、植生や建物、ランドマークといった画像内の特徴を分析し、写真の撮影場所を割り出すことができました。
Graylark自体は、創業者のDaniel Heinen氏とその兄弟が行った実験から生まれました。AIを使って、ストリートレベルの画像から撮影場所を当てる地理ゲームGeoGuessrを攻略する話を読んだことがきっかけです。
同社はその後、技術をさらに発展させました。404 Mediaによると、Graylarkはツールの名称をRavenに変更し、屋内の場所も特定できるように拡張しました。位置情報のメタデータは不要で、画像内の視覚的な手がかりを利用します。
このツールは、画像を物件の写真と照合する仕組みです。コーナーに置かれた洗濯機と乾燥機のようなありふれたものが写っているだけでも、ランク付けされた結果のリストが返ってきます。ツールの「Short-Term Rental ID」機能は、室内写真や動画の1フレームを使って、Graylarkが「世界中の数百万件」と説明する賃貸物件の掲載情報を検索できます。
ただし、このシステムの対象は賃貸物件だけではありません。「Find Property」機能は、外観写真、そして対応都市では室内写真を使って物件を検索します。
これは単なる逆画像検索とは異なります。逆画像検索は、目の前の写真がほかの場所で使われていないかを調べるものです。一方、このサービスは、壁タイルの形状から部屋の構造、表面の色まで、さまざまな特徴を識別することで、同じ物件を別のアングルから撮った写真同士でも照合できます。
すでに法執行機関がこのツールを利用しています。創業者のHeinen氏は8月に、このツールで1,070万ドルのシード資金を調達しました。404 Mediaによると、マイアミ・デイド郡保安官事務所とロサンゼルス市警察がこの製品へのアクセス権を購入したということです。
Heinen氏のSNS投稿によれば、Ravenは今では1枚の写真から宿泊したホテルを特定することもできます。同氏は「HotelID」という機能に言及しましたが、この機能はまだ公式サイトには掲載されていません。Ravenのサイトには、ほかの用途も紹介されています。たとえば、車内の写真から、その車のメーカー、モデル、年式を正確に割り出せます。
このツールは、メールアドレスなどの識別子からも調べることができます。捜査官は、関連付けられたアカウントで公開されている写真を見つけ、その写真から場所の手がかりを探せます。Graylarkは、これによって捜査官が非公開アカウントやメッセージにアクセスできるようになるわけではないとしています。
Heinen氏によると、短期賃貸機能は世界中の数百万件の賃貸物件の掲載画像を利用しています。404 Mediaによれば、AirbnbはGraylarkとは関係がないと述べ、Zillowはスクレイピングは自社の利用規約に違反すると述べました。ただし、これらの声明は、Graylarkがどのように画像を入手したのかを裏付けるものではありません。
Heinen氏の野心はこれにとどまらないようです。9月8日には、数万台のドライブレコーダーの最新映像で実験していると明かしました。
同氏は、この種のシステムが人身取引の撲滅に役立つと主張しています。ジョージ・メイソン大学の研究が明らかにしたところでは、2018年と2019年に捜査中だった連邦の性的人身取引事件の約80%で、被害者はホテルやモーテルで搾取されていました。また、AIは適切に使えば未解決事件の解決にも役立つかもしれません。ただし、AIが示した場所は、ほかの証拠と突き合わせて確認する必要があります。
一方で、技術は悪用される恐れもあります。特にストーカー行為が懸念されます。Heinen氏はXで、Ravenは企業、政府、法執行機関のみが利用できると述べました。GeoSpyの名称を使う別のウェブサイトやコンシューマー向けアプリも存在しますが、Graylarkは、その名称を使うサードパーティ製品は同社が運営するものでも、同社と提携するものでもないと説明しています。
そこで、誰かがこうしたツールを悪意を持って使った場合に備え、自分でできる対策を見ていきましょう。
自宅のプライバシーを守るには
自宅の室内や外観の写真をオンラインに公開する前に、よく考えましょう。Google フォトでさえ、ランドマークや、位置情報が判明している他の写真との類似点を手がかりに、写真の撮影場所を推定できると、Googleは説明しています。
投稿前に、フレーム内に特徴的なものが写っていないか確認してください。特徴的なタイル、部屋の間取り、窓越しの景色、番地、住所が書かれた郵便物などに注意しましょう。可能であれば、これらをトリミングで除外してください。
写真を見られる相手を限定しましょう。過去の投稿も含め、SNS投稿やフォトアルバムの公開範囲を見直してください。旅行中は、宿泊先がわかる写真の投稿を、その場所を離れてからにすることも検討しましょう。
過去の物件掲載情報を見直しましょう。不動産業者や関連する不動産サイトに、過去の掲載情報から室内写真を削除してもらえないか問い合わせてください。ただし、すでにダウンロードされたり収集されたりしたコピーまでは回収できません。賃貸物件を掲載する場合は、利用できるなら概略の位置を表示する設定を使いましょう。それでも、掲載写真そのものから物件が特定される可能性があることには注意が必要です。
共有前に位置情報メタデータを削除しましょう。これで視覚的な照合を防げるわけではありませんが、撮影場所を割り出す手段の一つをなくせます。すべてのサービスが自動的に削除してくれると思い込まないでください。
- AppleユーザーはiOS上で直接設定できます。「写真」から共有する際にオプションをタップし、位置情報をオフにします。
- Google フォトでは、推定された位置情報や手動で追加した位置情報は削除できますが、カメラが記録した位置情報は削除できません。アルバム、リンク、会話ごとに位置情報共有の設定を確認してください。Google フォトの外にダウンロードして共有した写真には、元の位置情報が残っている場合があります。
- Samsungユーザーは、Samsung ギャラリーから共有する際、オプションが表示される場合に位置情報を削除することを選べます。