9月の5日間にわたり、中国語を話す攻撃者が3種類のAIハーネスと、オープンウェイトモデルおよび公開AIモデルの両方を使い、105のECサイトを標的にしました。
この自律型ハッキングシステムは、早ければ数時間、長くても1日以内に、少なくとも27社を侵害しました。このキャンペーンを発見したGambit Securityによると、悪意あるエージェントは、うち2社から少なくとも60万件の決済カード情報を盗み出し、5社のWebサイトにはクレジットカードスキマーを仕込みました。残る企業にもある程度の不正アクセスを成功させており、その中には少なくとも1社のFortune 500企業が含まれています。
攻撃者が負担した費用の総額は、標的1件の攻略完了あたり平均25.46ドルでした。
Gambit Securityの共同創業者で最高研究責任者のSa’ar Elias氏は、次のように述べています。「わずか1週間でこれだけの規模と成果を上げたことは驚異的です。被害企業の中に大企業が含まれていることを考えれば、なおさらです。以前なら熟練した攻撃者のチームが連携して初めて可能だった作業を、今では事前知識の乏しい1人でも実行できてしまいます」
このクレジットカードとデータを盗む自律型キャンペーンは、例外的なケースではありません。エージェント型AIは脆弱性研究を加速させ、CVE割り当ての急増を招いています。攻撃者はAIを使って攻撃を自動化し、システムをより素早く悪用するようになっており、完全自律型のハッカーとして動かす例も増えています。
別の事例もあります。AIサイバー防御企業Silverfortの研究者は、オーケストレーション用エージェントと公開されているClaude Opusを使ったラボテストを実施しました。自律型AIが初期アクセスをどれだけ速く完全な侵害へ発展させられるかを調べるためです。この「攻撃者」は、8分でドメインを完全に掌握しました。Silverfortで脅威ハンティングおよびインシデント対応を率いるColin Ferris氏はこう説明します。
総費用は約12ドルでした。
Ferris氏は「参入障壁は下がっています。必要なのは特殊な技術ではなく、基本的な足がかりだけです。だからこそ、この手口は高度な攻撃者だけにとどまらないでしょう」と指摘します。
低コストな防御策を探すセキュリティチーム
ダークマーケットの価格にも、攻撃者側のコスト低下が表れています。脅威インテリジェンス企業Flashpointの数値によると、地下市場の供給増加により、初期アクセスの平均販売価格は1,400ドル強から429ドルに下落しました。同社によると、身代金を支払う企業は2026年上半期に28%へ減りましたが、ランサムウェアの活動は45%増加を続けています。
Flashpointのインテリジェンス担当バイスプレジデントであるIan Gray氏は、次のように話します。「価格の下落を確認できたのは初期アクセスです。攻撃チェーンのほかの段階でも、AIによって作戦が高速化し、規模の拡大も容易になっていると見ています」
この状況は、現在の戦場に多くの点で似ています。ドローンによる安価な自律攻撃や遠隔操作の攻撃によって、高価な防衛手段が採算に合わなくなっており、防御側はより安価にシステムを守り、堅牢化する方法を見つけなければなりません。Gambit Securityによると、今回のキャンペーンで攻撃者は、エージェント型AIシステムのHermesと、2種類のAIペネトレーションテスト用フレームワークであるStrixおよびCairnを使用しました。
Gambit SecurityのElias氏は次のように述べています。「攻撃者は今や、きわめて低い限界費用でますます高度な攻撃を仕掛けられます。一方の防御側は、複雑な環境全体で高い信頼性を維持しなければなりません。個々の試みすべてに対処し続けることは、経済的に持続不可能な選択肢になりかねません」
同氏は、既存のセキュリティプロセスにAIを適用することは必要ですが、それだけでは不十分だと言います。企業は自社の業務プロセスを見直し、最も重要なものを見極めたうえで、それらを守り、事業の中断を防ぐ方法を探すべきだとしています。
AIから逃れられる場所はない
過去20年にわたり、サイバーセキュリティの専門家は警鐘を鳴らしてきました。目立たない事業を営んでいる、あるいは攻撃対象領域が比較的小さいからといって、攻撃を避けられるとは期待できないという警告です。攻撃的セキュリティ企業XBOWの最高情報セキュリティ責任者(CISO)であるAlbert Ziegler氏は、インターネットに接続されている部分や、インターネットに接続されたパートナーとつながっている部分は、企業のどこであっても攻撃されると語ります。
同氏は「決して高額な攻撃ではありません。それでも成功するのは、サイトの堅牢化が十分でないからです。特に懸念している重要なサイトをいくつか守るだけでは足りません」と述べています。
防御を強化する方法の一つとして、SilverfortのFerris氏は、AIエージェントが悪用しやすい基本的な経路に注力することを挙げます。具体的には、過剰な権限を持つアカウント、使い回された認証情報、管理されていないサービスアカウントです。あわせてアクセス判断を自動化し、人間が対応を遅らせないようにすべきだといいます。Silverfortの研究者が認証やアクセスを中心に制御を強化したところ、数分でドメインを掌握したのと同じエージェントが、21回行き止まりに突き当たり、最終的に諦めたと同氏は説明しています。
Ferris氏は「AIがこうした弱点を生み出したわけではありません。ただ、より速く見つけ出すだけです。アクセスの時点で攻撃を止める制御のほうが、事後の復旧作業よりも安上がりです」と話します。
Gambit SecurityのElias氏は、企業は攻撃からの復旧にかかる経済的負担と、事業を最低限継続するためのプロセスをどう守るかに目を向けるべきだと言います。経営層は、どの投資が事業に最も大きな効果をもたらすかに注力する必要があるとしています。
残念ながら、AIの経済性に適応するには予算の増額が必要になるかもしれないと、同氏は指摘します。ただし、「支出は、セキュリティプログラムがどれだけ多くの脅威やツールを管理できるかではなく、事業運営をどれだけ効果的に守れるかで測るべきです」と述べています。
翻訳元: https://www.darkreading.com/cybersecurity-operations/ai-tools-massive-attacks-little-cost