NCSC、AIが英国の重要国家インフラへの攻撃の規模と効率を高めると警告
AI搭載マルウェアが、今後2年以内に英国の重要国家インフラに対するランサムウェア攻撃で使用される可能性が「非常に高い」とされています。
英国政府通信本部(GCHQ)傘下の国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)のトップであるリチャード・ホーン博士は、AI技術の悪用によって、攻撃者が長年放置されてきたセキュリティ上の弱点を迅速に見つけ出し、悪用することがはるかに容易になっていると警告しました。
ホーン博士は、技術やセキュリティへの投資不足によって、組織は技術的負債を抱え込み、攻撃に対して無防備な状態にあると指摘しています。
NCSCの報告書は、「AIは今後も脅威アクターのサイバー作戦に組み込まれ続けるでしょう。ただし、攻撃を最初から最後まで自律的に実行するのではなく、既存の攻撃手法の速度、規模、効率を高める形になります」と予測しています。
NCSCによると、全攻撃の最大88%は、フィッシング、公開アプリケーションの悪用、正規アカウントの不正使用、外部リモートサービスの悪用というわずか4つの侵入経路から始まっています。
手口は同じ、変わるのは形
セキュリティ運用ツールベンダーCybaVerseのCEO、オリバー・スペンス氏は「これらの侵入経路に、目新しいものや過激なものはありません。実際、サイバー犯罪者が数十年にわたって悪用に成功してきた、同じ失敗の繰り返しです」と述べています。
スペンス氏は次のように続けています。「脅威アクターが、最も複雑で技術的な手段で攻撃を仕掛けることはまれです。多くの場合、設定ミスのあるVPNやサードパーティ製ソフトウェアプラットフォームの脆弱性など、組織のシステムで最も悪用しやすい穴を探し、実績のあるソーシャルエンジニアリングの手法を使います」
AIは攻撃者の戦略を根本から変えるものではなく、むしろ攻撃を増幅させる「フォースマルチプライヤー」です。
スペンス氏は「脅威アクターはAIを活用して、より高度な攻撃を仕掛けられるようになるかもしれません。しかし、本当の危険は、既存の弱点や組織の不備が自動的に悪用されることにあります」と締めくくりました。
対策
ホーン博士によると、AIは英国全体のサイバーレジリエンスを高める手段になり得ます。ただし、その効果が発揮されるのは、組織が長年の投資不足や基盤の弱点に対処し、より強固な土台の上に構築を進めた場合に限られます。
英国政府の「Cyber Essentials」制度は、レジリエンス向上のゴールではなく、企業のサイバーセキュリティの出発点、つまり最低基準とすべきです。
先週、英国政府は7,000万ポンドを投じる方針を表明しました。対象は、重要インフラと経済全体の脆弱性を特定する役割を担う新設の「National Exposure and Real-Time Vulnerability(NERV)センター」と、NCSCが運営する新たな「AI Cyber Security Centre of Excellence」です。