GartnerのQuarterly Emerging Risk Reportで上位5位に入った企業リスクのうち、4件がAI関連でした。「AI戦略の見込み違い」と「AIによる競争上の代替」は、それぞれ3位と4位に初登場しました。「AI人材の準備不足」は5位を維持しました。
サイバー脆弱性のAIによる発見と、地政学的なエネルギー供給ショックは、2四半期連続で1位と2位でした。このランキングは、リスク管理の責任者、監査担当者、経営幹部308人の回答に基づく総合リスクスコアで示されています。
AI戦略の見込み違いが問題となる理由
AIの効果が表れるまでに想定より時間がかかったり、規模が不足したり、経済的価値が期待を下回ったりする場合があります。そうした効果を前提に重大な戦略、業務、人員の判断を下すと、企業は見込みを誤るおそれがあります。
競合に後れを取りたくないという圧力から、プロジェクトで何が実現できるのか、自社のチームに導入する準備ができているのかを見極める前に、企業がリソースを投じてしまうことがあります。成果が出ないプロジェクトは、ほかの優先事項に充てるべき資金や人員の時間を奪いかねません。
「ユースケースが事業上の優先事項、リスク許容度、利用可能な能力、期待されるリターンと合致しているかを十分に検証しないまま、AI施策を進める組織はリスクを抱えます」と、Gartner Risk & Audit Practiceでリサーチ担当のシニアプリンシパルアナリストを務めるKevin Mercado氏は述べています。
サイバー脆弱性とエネルギーショックが上位を占める
AIによって、攻撃者はこれまで知られていなかったソフトウェアの欠陥を、セキュリティチームが評価、優先順位付け、修正を行うより速く発見し、悪用できるようになる可能性があります。未対応の脆弱性が積み上がれば、機密データや知的財産がより長く危険にさらされ、修復コストも膨らみかねません。
地政学的な対立、制裁、インフラの損壊は、エネルギーの生産や輸送を混乱させ、エネルギーや輸送のコストを押し上げます。安定したエネルギー供給に頼る企業は、操業の延期や減産を迫られる場合があります。
上位5位に入ったそのほか2件のAIリスクは、競争と人材の準備態勢に関するものです。AIプロジェクトが試験運用の段階にとどまる企業は、AIを活用してより良いサービスや低価格を打ち出す競合に顧客を奪われる可能性があります。社内では、従業員が必要なスキルを身に付けるより速く、職務要件が変わることもあります。研修や指針が不足すると、導入にばらつきが生じ、AI投資の見返りも小さくなりかねません。
組織はAIリスクをどう追跡し、リターンをどう測るか
Gartnerが2025年に上級のリスク・保証責任者225人を対象に実施した調査では、54%が、リスク登録簿でAIを独立した項目として記載し、さらにほかのリスク項目の中でも記録していると答えました。AIを独立したリスクとしてのみ追跡している割合は、2024年の36%から2025年には23%に低下しました。
過去のエマージングリスク報告書では、AIを利用した攻撃、従業員による不適切利用、知的財産の管理を取り上げていました。最新版では、企業がどのAI投資を選ぶのか、競合によるAI活用にどう対応するのかについても検討しています。
2026年に実施されたGartnerの3つの別個の調査は、財務責任者、取締役、監査委員会がテクノロジーリスクとAIのリターンをどう見ているかを示しています。CFO調査では、AIプロジェクトの半数超で測定可能な増収またはコスト削減を達成したと答えた割合は17%でした。取締役会調査では、株主価値を生み出すために、組織はテクノロジーリスクをもっと取るべきだと64%が答えました。監査委員会調査では、43%が今後1年以内にAI戦略の監査が行われると見込んでいました。

戦略的なAIアクションプランは、リスクを管理しながら価値を生み出せる(出典:Gartner)
企業は、AI戦略を誰が監督し、誰が実行に移すのかを明確にする必要があります。あわせて、個々の施策がほかの優先事項やリソースにどう影響するかを評価し、リターンをどう測定するかを決めておくべきです。AIで従業員の時間が節約できた場合は、従業員がその時間をどう使っているか、それが測定可能な生産性の向上につながっているかを追跡する必要があります。
「組織はAIを、事業判断のポートフォリオとして評価すべきです」とMercado氏は付け加えました。「持続的な価値を実現できる可能性が最も高いのは、AI投資を明確な事業成果に結びつけ、拡大する前に準備状況を検証し、責任ある実験を支えるガバナンスを整えた組織です」
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/11/04/ai-strategy-miscalculation-gartner-report/