今回の買収により、自動化されたAIセキュリティテストとエージェントの可観測性が、同社のFalconプラットフォームに加わります。
CrowdStrikeは、AIセキュリティ企業のFiddler AIとDreadnodeを、それぞれ別の取引で買収する計画です。自律性を高めるアプリケーションがもたらすセキュリティリスクに企業が対応を迫られるなか、Falconプラットフォームの対象を、AIシステムの自動テストとAIエージェントの挙動監視にまで広げます。
CrowdStrikeはバルセロナで開催された「Fal.Con Europe 2026」で今回の買収を発表しました。AIモデル、アプリケーション、エージェントを展開前にテストしてセキュリティ上の弱点を見つけ、本番環境ではその判断や行動を監視できるようになるとしています。
同社は、Dreadnodeの自動テスト技術とFiddlerのエージェント可観測性機能をFalconに統合する計画です。いずれも2027会計年度第4四半期の一般提供開始を予定しています。
CrowdStrikeが2件の個別の声明で説明したところによると、Dreadnodeは展開前のAIモデル、アプリケーション、エージェントの脆弱性を特定する自動セキュリティテストをもたらします。一方のFiddlerは、AIエージェントの可観測性と説明可能性を加えます。企業はエージェントの挙動を監視し、判断を追跡して、エージェントが特定の行動を取った理由を把握できるようになります。
CrowdStrikeによれば、Dreadnodeのチームは同社の「Cyber Superintelligence Lab」に加わります。Fiddlerのチームを社内でどのように統合するかは明らかにしていません。
AIテストと可観測性を拡充するCrowdStrike
CrowdStrikeは発表で「今回の買収により、Dreadnodeは企業がAIを構築・テストする層へFalconプラットフォームを拡張し、自動化されたAIセキュリティテスト機能を提供します」と述べています。
同社はさらに、Dreadnodeの技術によってセキュリティチームが100種類を超えるAI攻撃手法を使い、AIモデル、アプリケーション、エージェントの推論ループ、Model Context Protocol(MCP)サーバをテストできるようになると説明しています。攻撃手法には、ジェイルブレイク、プロンプトインジェクション、マルチターン攻撃、AIエージェントを狙う攻撃などが含まれます。
この技術では、テスト内容を自然言語で記述できます。検出結果は重大度順に並べられ、脆弱性はOWASP Top 10 for LLMs、OWASP Agentic Security、MITRE ATLAS、NIST AI Risk Management Frameworkといったフレームワークに対応付けられます。CrowdStrikeによれば、検出結果はポリシー推奨としてFalcon Guardianに取り込まれます。
2件目の買収となるFiddlerは、エージェントの可観測性と説明可能性をFalconにもたらします。CrowdStrikeは、この技術がエージェントが侵害されていなくても生じうるリスクに対処するためのものだと説明しています。
同社は声明で「エージェントは有効な認証情報と承認済みのツールを持っていても、根拠のない判断を下したり、指示を無視したり、実行していない作業を完了したと主張したりすることがあります。リスクを生むために、侵害されている必要はありません」と述べています。
CrowdStrikeは、Fiddlerの技術を「Falcon Observe」として提供する計画です。同社によれば、この製品は展開前にエージェントの精度、タスク完了率、ポリシー準拠を評価し、本番稼働後は判断、推論の経路、ツール呼び出しを追跡します。
Falcon Observeは、挙動の逸脱、ハルシネーション、意図しない動作も検出します。あわせて、コンプライアンスや監査の目的でエージェントの活動記録を保持します。同社は、OpenTelemetryのほか、LangGraph、Amazon Bedrock、AWS Strands、Google ADKなどのフレームワークにも対応する見込みだとしています。
ガバナンスは引き続き共同責任
Gartnerのシニアプリンシパルアナリスト、Apeksha Kaushik氏は、可観測性と自動テストがセキュリティプラットフォームに加わることで、企業はエージェントの挙動をIDやランタイムの活動、セキュリティイベントと関連付けやすくなると述べています。
ただしKaushik氏は、今回の買収によってセキュリティチームがAIエージェントのガバナンスを一手に担うわけではないと指摘します。信頼性、性能、運用テレメトリはプラットフォーム部門や可観測性部門が引き続き担い、安全な開発とテストはアプリケーションセキュリティ部門やAI部門が責任を持ち続けることになります。
Kaushik氏は「ビジネス部門、データ部門、コンプライアンス部門のリーダーも、ユースケース、データ、規制上の義務に対する説明責任を負い続けます」と述べました。
同氏は、CIOはエンジニアリング、セキュリティ、リスク、ビジネスの各チームにまたがる責任範囲を定めたガバナンスモデルを確立すべきだと述べています。一方でCISOは、セキュリティチームが最低限の統制を設定し、エージェントの挙動を監視し、活動が許容できないリスクを生む場合には介入できる権限を確保する必要があるとしています。
統合とロードマップをめぐる課題
CrowdStrikeは、通常のクロージング条件が満たされることを前提に、両取引とも2027会計年度第4四半期中に完了すると見込んでいます。両製品の一般提供も同じ四半期に予定しています。
Kaushik氏は、発表された時期を最終的な製品機能や統合計画の裏付けとみなさないよう、企業に注意を促しました。
同氏は「企業は、発表された計画と実証された製品機能を区別する必要があります。特に脅威環境の変化とAIの進化が速いなか、クロージングの時期や条件が変わる可能性もあります」と付け加えています。
また、顧客に対しては、価格、パッケージング、移行条件、サービスの継続性、サポートの提供範囲、導入モデル、データの取り扱い、テレメトリの保持、APIアクセスについて、明確な説明を求めるよう助言しました。
同氏は「既存顧客と導入を検討している顧客は、詳細が明らかになったら、ロードマップの変更、サポートの約束、サービスの継続性、契約と価格、データのポータビリティ、オープンな統合、過去データへのアクセスの変更について、あらためて整理しておくべきです」と指摘しています。CrowdStrikeは、いずれの買収についても金額などの条件を公表していません。