インド当局、金融・暗号資産企業を狙うAI駆動の新たなサイバー攻撃に警告

新たに確認されたサイバー攻撃グループ「Crafty Falcon」が、AIやエージェント型AIのツールを使い、金融企業を相次いで攻撃しています。これらのツールの中には、これまで中国系ハッキンググループによる使用が指摘されてきたものも含まれます。

インドのコンピュータ緊急対応チーム(CERT-In)は11月4日に公開した新たなセキュリティ勧告で、デジタル融資プラットフォーム、フィンテック企業、決済アグリゲーター、決済サービスプロバイダー、暗号資産取引所を含むノンバンク金融会社が、繰り返しサイバー攻撃の被害を受けたと報告していると警告しました。

このうち一部の企業は、10月初旬に配布先を限定した勧告を受け取っていました。この勧告は、攻撃者が従来から決済や資金支払い取引に使われてきたアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)を悪用し、不正送金を行っていると注意を促すものでした。

これらの金融機関は先の警告を受けて対策を講じたものの、再び攻撃を受けました。CERT-Inは、その原因として対策が「不完全だった」ことを指摘しています。

CERT-Inによると、攻撃は祝祭日や週末、「その他の監視が手薄な時間帯」に多く観測されています。検知や対応を遅らせる狙いがあるとみられます。

Crafty Falconの攻撃の流れ

CERT-Inの金融部門(CERT-Fin)によると、Crafty Falconはこれまで報告のなかった攻撃者です。さまざまなAIやエージェント型AIのペネトレーションテストツールを使い、被害組織のシステムに侵入します。

初期侵入の経路は、インターネットに公開された非本番環境が一般的です。具体的には、ユーザー受け入れテスト(UAT)環境、ステージング環境、テスト環境などが狙われます。

侵入後は、環境間で共有されている認証情報、認証トークン、ネットワーク経路を悪用し、非本番環境から本番システムへと侵入範囲を広げます。

攻撃者は組織のアプリケーションコードをリバースエンジニアリングし、標的に合わせたエクスプロイトを開発します。続いて、改変したアプリケーションパッケージを使って不正なAPI呼び出しを行います。これにより、正規のクライアントアプリだけがAPIと通信するという前提で設計されたセキュリティ制御を回避します。

IPアドレスの許可リストによる制限も回避します。コンテンツ高速化サービスやアプリストアの審査用フェッチャーなど、許可リストに登録されたサードパーティのフェッチャーIPプールを経由して通信するのです。こうした共有サービスは、インターネット上の誰でも任意のURLを取得するよう指示できます。攻撃者はこの仕組みを利用し、組織がすでに信頼しているIPアドレスから通信を発信できます。

Crafty Falconは、被害組織のクラウドインフラも標的にします。対象はコンピュート、サーバーレス、管理サービスなどです。AWS Systems ManagerやLambdaといったクラウド管理サービスを悪用してコマンドの実行や悪意あるファイルの展開を行い、不正な活動を正規のクラウド管理業務に紛れ込ませます。

高額の送金を実行する前には、1ルピーなどの少額のテスト取引を行い、不正な資金移動が可能かどうかを確認します。資金の移動には、決済アグリゲーターが持つ加盟店向け精算APIを悪用します。

暗号資産取引所や暗号資産サービスプロバイダーも標的で、ウォレットの鍵を盗み、暗号資産ウォレットから資金を抜き取ります。

CERT-Inによると、Crafty Falconは新たに公開された脆弱性も、公開されしだいすぐに悪用します。ファイルアップロードやデシリアライゼーションのエクスプロイトチェーンを使い、PHPやNode.jsアプリケーションにウェブシェルを設置しています。

こうした活動の間、Crafty Falconはその場で大量のカスタムスクリプトを作成します。機能が同一のバリアントを短時間で次々と改良しており、AIが生成したコードや、AIの支援による反復的な開発に見られる特徴と一致します。

特に、CERT-InとCERT-Finは、被害組織に対して複数のAI搭載攻撃ツールが使われ、しかも組み合わせて運用されていたことを確認しました。確認されたのは次のツールです。

  • ペネトレーションテストツールARTEX:大規模言語モデル(LLM)と接続できる自律型マルチエージェントフレームワーク「PetAGI」がベース
  • ペネトレーションテストフレームワークCyberStrikeAI
  • 攻撃用検索エンジンCairn

CERT-Inは、これらのツールによって攻撃者が「攻撃チェーン全体をマシンスピードで自律的に実行し、標的に合わせた大量の攻撃スクリプトを短時間で次々と生成・改良し、標的の応答に応じてペイロードを調整できる」と指摘しています。

これらのツールは一般に公開されており、多くの攻撃者が使える状況にあります。ただ、これまでにツールが使われた悪意あるキャンペーンの大半は、中国を拠点とする攻撃者との関連が指摘されています。

CERT-In、Crafty Falconの脅威を軽減する推奨対策を提示

CERT-Inは今回の勧告で、組織がこの脅威を軽減するために取れるセキュリティ対策を多数挙げています。主な内容は次のとおりです。

  • 祝祭日、週末、監視が手薄になる時間帯でも、24時間365日の厳重なセキュリティ監視を維持し、人員を増強してアラートのしきい値を下げる
  • クラウド監査ログのリアルタイム監視を一元化し、リモートコマンド実行、サーバーレス関数コードの更新、ロール・ユーザー・アクセスキーの作成といった高リスクのイベントでアラートを出す
  • クラウド管理とサーバーレス実行を、承認済みのプリンシパルとアカウントに限定する
  • インスタンスメタデータサービスの保護、最小権限のロール、ワイルドカードによる外向き通信の制限、サーバーレス関数に対するインターネット向け外向き通信の原則拒否を実施する
  • UAT、ステージング、テストの各環境を本番環境から分離し、認証情報、トークン、APIキー、データベース、直接のネットワーク経路を共有しない
  • アプリケーションのデプロイ用ディレクトリを、実行ユーザーに対して読み取り専用にし、ファイル整合性監視を導入してウェブシェルを検知する
  • クライアントアプリとパッケージを信頼できないものとして扱い、サーバー側でのトランザクション検証、ナンスとタイムスタンプを用いたAPIリクエスト署名、アプリケーション認証(アテステーション)、証明書ピンニングを徹底する
  • インターネットに公開されたアプリケーションに対し、迅速なパッチ適用のSLAを設ける。特にPHPとNode.jsのファイルアップロードおよびデシリアライゼーションの脆弱性を優先する。暫定措置としてWAFの仮想パッチを利用する
  • リアルタイムのトランザクション監視を拡充し、新規の受取人への少額テスト取引と、それに続く高額送金を検知する。これらは不正送金の可能性が高い兆候として扱い、該当する取引は保留または確認する
  • 暗号資産ウォレットの鍵を、ハードウェアセキュリティモジュールまたはコールドストレージに保管する
  • 一般公開されているAI駆動の攻撃フレームワークを含め、許可されていないセキュリティツールや攻撃ツールを社内インフラで禁止する
  • LLMのAPI利用とキーを監視・管理する。サーバーや開発用でないホストから発信されるLLM API通信は、攻撃インフラや仕掛けられたオペレーターコンソールの存在を示している可能性がある
  • SIEMの相関ルールを調整し、マシンスピードで行われる複数手法の攻撃、並列の攻撃スレッド、ペイロードの適応的な変更、営業時間外の継続的な活動を検知できるようにする。SOARによる自動封じ込めを導入する
  • ゼロトラストの原則、マイクロセグメンテーション、すべてのユーザーとサービスに対するIDベースのアクセス制御、東西トラフィックの検査を採用する

CERT-Inはさらに、Crafty Falconに関連する可能性のある不審な活動を確認した場合は、関連するすべてのログを添えて[email protected]に報告するよう組織に促しました。あわせて、インド・サイバー犯罪対策調整センター(I4C)と、その市民金融サイバー詐欺報告・管理システム(CFCFRMS)にも連絡するよう求めています。

翻訳元: https://www.infosecurity-magazine.com/news/india-warns-ai-cyberattacks/

本記事は infosecurity-magazine.com の記事を翻訳・要約したものです。