Googleのマンディアントは、複数のAIエージェントを連携させてソースコード内の脆弱性を探索する社内ツールの仕組みを公開しました。窃取された企業リポジトリを対象とした実際の調査において、わずか2日間で検証済みの深刻な脆弱性を100件以上発見したといいます。
このツールは「Agentic Vulnerability Discovery Harness(AVDH)」と呼ばれ、マンディアント内部で10か月にわたり稼働してきました。Google Threat Intelligence Groupが公開したブログ記事によると、この間に数千万行に及ぶコードをスキャンし、数万件の検出結果を生成したとのことです。
マンディアントの研究者であるAlex Tselevich氏とMichael Maturi氏によると、このツールは広く利用されているWeb拡張機能やオープンソースプロジェクトにおいて、担当者に割り当て可能な数十件の脆弱性を発見しました。その結果、CVE-2026-13242やCVE-2026-55803を含む12件のCVEが割り当てられ、「さらに十数件が現在開示手続き中」だといいます。
パイプラインの仕組み
AVDHはGoogleのAgent Development Kit上に構築された、専門化されたエージェントの連鎖として動作します。各エージェントが処理結果を次のエージェントへと引き継いでいく仕組みで、以下の段階から構成されます。
脅威モデリング: あるエージェントがコードベース全体をマッピングし、対象がどのような種類のソフトウェアかを判別したうえで、テストディレクトリなど除外すべき部分にマークを付けます。この段階で生成された脅威モデルは、次の処理に進む前に必ず人間がレビューします。
エントリポイントの発見: 複数のエージェントが対象範囲内のすべてのファイルをスキャンし、Webルートからプロセス間通信のリスナーに至るまで、ユーザー入力がアプリケーションに入り込む箇所を特定します。
コンテキストの充実化: 各エントリポイントについて、あるエージェントが権限チェックや入力サニタイザーなど、本来レビュー担当者が手作業で追いかけなければならない関連コードをまとめて収集します。
仮説生成: 別のエージェント群が、認可の欠落や権限昇格、クロスサイトリクエストフォージェリといったアクセス制御の問題や、SQLインジェクション、クロスサイトスクリプティング、コマンドインジェクション、パストラバーサルにつながるような危険なデータフローを探索します。
仮説の検証: 複数のエージェントが、推論の幅を広げるためあえて高い「temperature」設定で動作し、それぞれの仮説について検討します。その後、統合エージェントが各仮説を「確認済み」「反証済み」「却下」のいずれかに振り分けます。
確認済みとされた検出結果であっても、有効と見なされるには必ず人間の確認を経る必要があります。マンディアントのコンサルタントが実際にエクスプロイトを再現し、概念実証(PoC)コードを実行することで、その脆弱性が本物であること、また見落とされた対策によって無効化されないことを確認します。この検証に失敗した検出結果は破棄されます。

人間参加型(Human-in-the-loop)の引き継ぎフロー図(出典: Google)
マンディアントの研究者Alex Tselevich氏とMichael Maturi氏は、「同様の脆弱性検出ハーネスの導入を検討しているネットワーク防御担当者には、検出結果を手作業で検証することを推奨します」と述べています。
誤検知の削減
自動コードスキャナーには、紙の上では妥当に見えても実際に確認すると成立しない検出結果、いわゆる「ノイズ」が多いという評判が長らくつきまとってきました。マンディアントによれば、AVDHはまさにこの問題に対処するために構築されたものであり、既知のバグに似たコードパターンに単純にフラグを立てるのではなく、複数のエージェントが互いの結論に異議を唱え合い、自社コンサルタントが作成したルールと照合する仕組みを採用しています。
これらのルールはソフトウェア領域ごとに整理され、さらに言語、フレームワーク、脆弱性の種類という3つのグループに分割されています。これにより、ツールを異なるコードベースに適用する際にも、蓄積された知見を再利用できるようになっています。
マンディアントは自社ツールの性能を評価するにあたり、公開されている脆弱性データセットに頼るのではなく、意図的に脆弱性を組み込んだ合成コードベースのセットを独自に構築しました。これは、現在のモデルがすでにこうした公開データセットを学習時に見ている可能性があり、推論ではなく記憶に基づいて回答している恐れがあるとの懸念からです。
「ソフトウェア開発パイプラインの保護は、現代の企業防御における決定的な課題として浮上しています」
研究者らは次のように付け加えています。「こうした新たな脅威に対抗するには、コードパイプラインの保護を最新の防御戦略における重要な要素と位置づける必要があります。手作業によるソースコードレビューではAIのスピードに追いつくことができず、従来型のスキャンエンジンも、現代のソフトウェアに潜む幅広い脆弱性を一貫して見逃してしまいます」
「しかし、当社のハーネスが示した成果は、防御側が敵対的AIに対して優位性を取り戻せることを証明しています。専門家が定義したハーネスの中に最先端モデルを組み込むことで、防御側はありふれた脆弱性の検出を自動化できるのです」と、研究者らは結論づけています。
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/08/19/google-mandiant-avdh-ai-vulnerability-discovery-tool/