豪州で販売される4ドルの紙製パスワード帳に、セキュリティ専門家から支持の声

セキュリティ

かつてIT業界では敬遠されていた紙とペンによるパスワード管理ですが、2026年になって再び見直されています

パスワードマネージャーの管理にうんざりしている方、自分に合ったツール選びに苦労している方はいませんか。オーストラリアに住む読者であれば、最寄りのAusPost(オーストラリア郵便)の支店に行けば、わずかAU$4.90(US$3.51)で昔ながらの代替手段を手に入れられます。

パスワード帳は、一種の歴史的遺物と言える存在です。使用に伴うセキュリティ上の懸念や、こうした「オペセキ違反」とも言える行為を鼻で笑っていた今や白髪頭の年配者たちのおかげで、長らく廃れていました。

数多くのオンラインアカウントそれぞれに強力なパスワードを提案してくれるわけでもなく、自宅に空き巣が入った場合には何の役にも立ちませんが、紙とペンによるパスワード保管にも一定の価値があるという主張には一理あります。

これはまさに、あるオーストラリア人が地元の郵便局でパスワード帳が山積みで販売されているのを見つけて今週投稿したことをきっかけに、殺到した何千人ものSNSユーザーが下した結論です。

小型のものはAU$4.90(US$3.51)、大型のものはそれより1ドル高い価格で販売されています。

もちろん、デジタルアカウントのセキュリティを物理的な文書に頼ることには、数多くの問題があります。

まず、単一障害点になってしまう点です。この帳面を紛失したり盗まれたりすれば、すべてのアカウントへのアクセスを取り戻すのは骨の折れる作業になります。

自宅で保管していて盗まれるようなら、それ以前にもっと大きな問題を抱えていると言えるかもしれませんが、これほど多くの貴重品がオンラインで保管・アクセスされる時代においては、必ずしもそうとは言い切れないかもしれません。

とはいえ、暗号資産の富がますます一般化するにつれて増加している人質事件のような状況を、早期に終わらせる助けになる可能性もあります。

また、パスワード帳は現代のパスワードマネージャーほど管理が容易ではありません。テクノロジーを活用したパスワードマネージャーであれば、認証情報を自動入力でき、公開された情報漏洩の中に該当のものが見つかれば自動更新もでき、侵害リスクを最小限に抑えるためのユニークで強力な文字列も提案してくれます。

パスキーをパスワード帳に保存することもできません。世界が新たな認証標準への移行を進める中、これは大きな問題です。

しかし、パスワード帳を使うことは、かつてセキュリティ業界人の間で持たれていたような偏見を、もはや伴わなくなっています。

投稿に寄せられた数百件のSNSコメントから見えてくる全般的な見解は、自宅でパスワードを紙に記録して保管することに、もはや大きな問題はないというものです。

帳面に各サイト固有の強力な文字列が記載されている限り、複数のアカウントで同じ脆弱なパスワードを使い回すよりも、確実に安全と言えます。

今日ではインフォスティーラー(情報窃取マルウェア)が蔓延しているため、犯罪者が誰かの自宅に侵入してオンラインバンキングにアクセスするよりも、脆弱で使い回された、めったに変更されないパスワードを悪用してオンラインアカウントに侵入するケースの方がはるかに起こりやすい状況です。

さらに、多くの人が指摘しているように、Apple NotesやGoogleドキュメントなど、アクセス権を持つあらゆるデバイスから閲覧できてしまうクラウド上の文書にパスワードを書き留めるよりも、はるかに優れた方法と言えます。

もっとも、職場においては、やはりパスワードマネージャーを使い続けるべきだと、IT担当者たちは口をそろえます。

企業の最末端の従業員によるちょっとしたミスであっても、そのパスワード帳が悪意ある人物の手に渡れば、数百万ドル規模のサイバー攻撃につながりかねません。

ペネトレーションテストのコンサルタントは、雇われたホワイトハッカーを企業のオフィスに送り込み、侵入して得られる限りの価値を引き出させることがよくあり、時には配管を伝った侵入といった手段まで用いられます。

こうした侵入によって、悪意あるUSBメモリからのマルウェア感染、給水機付近に仕掛けられた盗聴器、さらにはデスクの引き出しからパスワード帳を盗まれるといった事態にまで発展する可能性があります。

まさかそんなことが、と思われるかもしれません。しかしセキュリティコンサルタントのAlethe Denis氏は2年前に本誌に語った際、自身のペネトレーションテストチームが1週間以上にわたり、ある企業の社内Wi-Fiを通じて密かに企業データを抜き取ることに成功した手口はまさにこれだったと明かしています。ゴミ箱をあさってWi-Fiの認証情報を入手し、堂々と会議室に入り込み、データを窃取するインプラントを仕掛けたのです。

すべて、物理的に盗んだ秘密情報だけを使い、まんまと出入りしてみせたわけです。

最悪の事態において役立つ存在

ここまで見てきたように、パスワード帳には数多くの潜在的な落とし穴があります。

しかし、しみじみと実感させられるのは、大切な人が亡くなった際に、パスワード帳が計り知れない価値を発揮することも多いという点です。

パスワード帳を持っているか、あるいは少なくとも死後にパスワードを共有する何らかの手立てを用意しておくことは、遺された家族や友人が、プラットフォーム提供事業者や裁判所を通じたアカウント復旧という骨の折れる手続きに煩わされることなく、悲しみに向き合う時間を確保するうえで非常に重要です。

多くのRedditユーザーもこれに同意し、そのおかげで一連の手続きがずっと楽になったと語っています。

ある投稿者は、母親ならではの独特なパスワード保管方法が、家族にとってかけがえのない「謎解き」につながったエピソードを紹介しています。

投稿者はこう綴っています:

「母はいつもiPadにパスワードをメモしていました。ありとあらゆる細かいことを本当に何でもメモする人だったので、私たちもそれを100%把握していました。何かのパスワードを聞きたくて電話をすると、母は決まって『ちょっとiPad出すね』と言っていたものです。だから母が突然亡くなり、私たちが何日もかけて彼女のスマホとiPadを隅々まで調べてパスワードを探すことになったときは、家族全員が驚きました。何も出てこなかったのです。メモも一切なし。あらゆる場所を探し尽くしました。

「結局、友人がヒントをくれました。母はスマホの連絡先のメモ欄にパスワードを保存していたのです。つまり、連絡先でNetflixに電話をかけようとすると、そこにパスワードが書いてある、という具合です。しかも全部暗号のように書かれていました。『昔の住所。私のあだ名。好きな言葉。兄弟のバスケのユニフォーム番号』といった具合に。それから私たちは、そのバスケのユニフォーム番号などの手がかりを、何日もかけて一つひとつ集めていきました。まるで、あの世からの奇妙な宝探しゲームのようでした。ともあれ、あんなに辛い時期の出来事なのに、なんだかこのエピソードが少し好きになってしまいました」

サイバーセキュリティの世界で長年、疎まれる存在だったパスワード帳ですが、今、再び脚光を浴びる瞬間を迎えています。

サイバーセキュリティ業界の第一線の頭脳たちが、フィッシング詐欺師によるアカウント乗っ取りや、不正なAIエージェントによる同様の行為を阻止する方法の開発に忙殺されている一方で、生と死のいずれの場面においても、昔ながらの防御策にはまだまだ称賛すべき価値が残っているようです。®


翻訳元: https://www.theregister.com/security/2026/08/24/security-vets-rally-around-4-paper-password-books-for-sale-in-australia/5291234

本記事は theregister.com の記事を翻訳・要約したものです。