Hack The Box(HTB)が発表した3年間にわたるベンチマークデータの最新版によると、AIエージェントはすでに、トップクラスの実力を持つセキュリティチームの働き方に浸透し始めています。2026 Global Cyber Skills Benchmarkによれば、登録アカウント全体に占めるAIエージェントの割合はわずか2.7%にすぎない一方で、上位25チームのうち68%がAIエージェントを組み込んでいたことが判明しました。この結果は、AIが人間の専門知識と並んで実務的なセキュリティ業務にどのように取り込まれているかを示す早期の手がかりとなっています。
今回の競技全体では、上位25チームのうち17チームがAIエージェントを活用していました。全体として、エージェントは提出された旗(フラグ)の4.2%、獲得ポイントの4.6%を占めていました。
HTBは、これらの数値がAIの活用によってチームの成績が向上したことを証明するものではないと注意を促しています。とはいえ、最も実力のあるチームにエージェントが偏って多く存在しているという事実は、AIが試験的な段階を超えて、経験豊富なセキュリティ専門家が使うツールキットの一部になりつつあることを示唆しています。
サイバーチームの課題解決速度が向上
今回のベンチマークは、過去3年間でセキュリティ全体のパフォーマンスが大きく向上したことも示しています。解決までの所要時間の中央値は、2024年の26.1時間から2026年には13.8時間へと、12時間以上短縮されました。
また、課題ボードをすべて完了できるチームも大幅に増加しました。2024年にこれを達成したのはわずか2チームでしたが、2025年には3チーム、2026年には15チームへと増加しています。しかもこの期間中、課題ボード自体の規模は拡大していました。
この結果が示されたのは、組織がAIによってセキュリティチームを強化する方法を模索する一方で、AIが新たな攻撃対象領域やリスクをもたらしてもいる時期です。AIエージェントがより高い自律性を獲得し、システムやアプリケーション、データへのアクセス権を拡大していくにつれ、セキュリティチームはその活動をどう方向づけ、AIが下す判断や生成する成果物をどう検証すべきかを理解する必要に迫られます。
今回の調査結果は、今後セキュリティ人材に求められるスキルがどう変化していくのかという問いも投げかけています。AIの活用が進んでも専門的な技術知識の必要性がなくなるわけではなく、むしろ実務者がAIの生成した結果を評価し、誤りを見抜き、人間による介入が必要な場面を判断する能力の重要性が、これまで以上に高まる可能性があります。
人間の判断力が依然として不可欠
Hack The Boxの創業者兼CEOであるHaris Pylarinos氏は、AIの役割が拡大する中で、組織はこの技術を安全に活用するために必要なスキルに注力する必要があると述べています。
「セキュリティ部門のリーダーにとって、もはや問題はAIがサイバーセキュリティ業務の一部になるかどうかではありません。それはすでに、攻撃側・防御側の両方で現実に起きていることです」と同氏は語ります。
「今問われているのは、チームがそれを安全かつ効果的に使いこなすための専門知識を備えているかどうかです。我々のデータが示しているのは、AIが優れた実務者に取って代わるのではなく、彼らのそばに寄り添う形で最も多く登場しているという事実です。エージェントの能力が高まるほど、人間の判断力、検証能力、そして実践的な技術力の重要性は、低下するどころかむしろ増していきます」
HTBによれば、今回の調査結果は、実務者がAIと共に作業する際のパフォーマンスを検証してきた同社のこれまでの研究の延長線上にあるといいます。これまでの検証は管理された条件下でのAI活用を対象としていましたが、今回のベンチマークでは、競技者が自らのアプローチを自由に選択できる状況において、エージェントがどのように採用されているかが明らかになりました。
これらの結果は、サイバーセキュリティにおけるAI活用の次の段階が、技術面の課題であると同時に、スキル面の課題でもあることを示唆しています。組織には、自律システムが生成する結果に疑問を持ち、それを検証し、確かめる能力を備えた実務者が求められることになるでしょう。