セキュリティ
イスラエルの広告テクノロジー企業が、Googleのお墨付きを得たままスパイウェアベンダーによるスマートフォン感染を手助けしていた疑い
オンライン広告業界は、自らの評判をさらに落とす新たな手口を生み出してしまったようです。ある広告テクノロジー企業が、ユーザーが広告をクリックしなくてもスパイウェアベンダーによるスマートフォンへの感染を手助けしていたとして、告発されています。
Citizen Labの研究者らは、ターゲット型のオンライン広告を通じて、ゼロクリックの傭兵型スパイウェア攻撃が仕掛けられた事例を、公に確認された初のケースとして発見したと発表しました。感染した端末の中には、Al Jazeeraの端末も含まれています。
「AdFection」と名付けられたこの手法は、広告ネットワークをスパイウェアの配信システムに変えてしまいます。Webサイトやアプリを開くだけで攻撃が発動する可能性があり、不審なリンクやダウンロードは一切必要ありません。
Citizen Labの研究者らによると、この作戦の背後にいるとされるのは、イスラエルの広告テクノロジー企業Discover-Techです。同社は、オンライン広告業界と複数のスパイウェア・ハッキングベンダーとの間を取り持つ仲介役として機能しているといいます。
研究者らは「イスラエルに拠点を置くDiscover-Techは、正当な広告会社を装いながら、実際には大規模な広告スパイ行為の隠れ蓑であることを示す技術的証拠を提示する」と記しています。さらに「実際、この橋渡し役を担うことこそが、Discover-Techの主たる目的であるとみられる」と指摘しています。
Discover-Techの「Controlium」プラットフォームは、Webサイトやアプリにどの広告を表示するかを決める入札システム(リアルタイムビッディング)を悪用しています。ユーザーがページを読み込むたびに、広告主は利用可能な広告枠をめぐって競い合い、その過程でユーザーの端末や位置情報を受け取ります。Discover-Techはこのデータを使って特定の標的を割り出し、悪意ある広告を配信していたとされています。
この作戦に関連するスパイウェアベンダーの一つが、現在はIntegrity Labsとして知られるイスラエルの開発企業Candiruです。Citizen Labは、2024年から2025年にかけてAl Jazeeraの少なくとも45台の端末に対して行われた攻撃を、Discover-Techの広告経由で配信されたCandiruのスパイウェアによるものと突き止めました。
Discover-Techは広告システムに忍び込む必要すらありませんでした。GoogleとIAB Europeが2020年から同社を承認済みベンダーとして登録していたためです。両者は、Citizen Labが主張するような目的でDiscover-Techがそのアクセス権を使っていたことに、どうやら気づいていなかったようです。
Citizen Labは約40億件の広告入札記録を精査し、2026年3月から6月にかけて、7万を超えるモバイルアプリと12万のWebサイトでDiscover-Techの広告を確認しました。
一部は政府機関、防衛関連組織、NATOに属するネットワークにも到達していました。研究者らは、これらの組織が感染したことを示す証拠は見つからなかったとしていますが、広告が当該ネットワーク上の端末のプロファイリングに使われた可能性があると指摘しています。
研究者らによると、この作戦は数百万台の端末を、Candiruに関連するサーバーへ密かに誘導してもいました。ただし、こうした接続が必ずしもスパイウェア感染を意味するわけではありません。
Googleはその後、Discover-Techの広告取引所へのアクセスを停止し、承認済みベンダーリストからも削除しました。IAB Europeもこれに続き、Beeswax、Vungle、Eskimiも対応を取っています。
Discover-TechとCandiruは、Citizen Labからのコメント要請にも、当媒体の要請にも応じませんでした。
研究者らは、今回の調査結果は広告業界の深刻な欠陥を浮き彫りにしていると主張します。商用監視ツール事業者と関係のある企業が、審査済みとされる広告エコシステムの内部で何年も活動を続けられたためです。
Citizen Labは「Discover-Techによる大規模な悪用、プライバシー侵害、そして傭兵型スパイウェア攻撃の手助けは、オンライン広告システムの構造的な欠陥を示している。本報告書で記録された悪用を、この仕組みは検知も防止もできなかった」と述べています。
これまでターゲット広告の最大の問題点は、あなたのことを知りすぎていることでした。ところが、一部の広告関係者はあなたの購買傾向よりもはるかに多くのことに関心を持っていたようです。®