自律的な攻撃を超えて、マシンスピードのセキュリティへ

オピニオン

2026年10月21日7分

AIはセキュリティ上の欠陥をほぼ完璧に見つけられますが、修正では失敗を繰り返しています。本当に必要なのは、検出と同じ速さでパッチを適用できる、サンドボックス化され、適切に統制されたシステムの構築です。

最先端AIの進歩により、攻撃が防御を上回る世界が到来しました。企業がパッチ適用に要する期間は平均32〜43日ですが、脆弱性が悪用されるまでの平均時間は10時間です。この非対称性は、企業が自律型AIをどのように信頼し、自社環境のあらゆる場所で動作させられるのかという疑問を生んでいます。先週のTechCrunch Disruptのステージでも述べたとおり、マシンスピードのセキュリティとは、AIが「見つける」ことと同じ速さで「直す」ことも加速させるという意味です。以下は、その議論を拡張した内容です。

攻撃者と防御側の非対称性は、パッチ適用の問題をさらに悪化させています。従来のセキュリティモデルは、手作業で重大度に応じたトリアージを行うため、数週間から数カ月分の対応待ちが発生します。ところが高度なモデルを使えば、攻撃者は低・中程度の重大度の欠陥を連鎖させ、深刻度の高い問題を作り出せます。こうした欠陥は、もともと目立たないものです。たとえば、クロスサイトスクリプティングの欠陥、セッションCookieの乗っ取り、データベースの漏えいは、それぞれ単独では中程度の重大度のインシデントとして記録されます。ところが連鎖したエクスプロイトとして見ると、クロスサイトスクリプトによって攻撃者はブラウザへの侵入口を得ます。そこからセッションCookieを乗っ取り、ユーザーとして認証されると、本番データを完全に読み取れるデータベースアクセスを手にします。 

プロンプトのジレンマ

マシンスピードのセキュリティが抱える難題は、検出が極めて高精度である一方、パッチ適用がまだ追いついていないことです。CyberGymで実施したテストでは、複雑な一連のイベントに起因するバグの発見で95%の精度が出ました。発見の能力は機能しているのです。しかし、最先端モデルは98%を超える確率で修正のプロンプトの実行を拒否します。組み込みのガードレールが、脆弱性に関わるコードを直接指示するプロンプトの76〜99%を誤って不正なものと分類するためです。パッチ適用を試みた場合でも、55%は主要な問題を修正するものの副次的な問題を見逃し、40%のパッチは本番コードを壊します。検出率が高い一方で修正の精度が低いため、プロンプトだけでは非対称性を解消できません。

エンジニアリング上のギャップを埋める

高度なモデルにプロンプトを与えるだけでは不十分です。答えは、マルチエージェントのオーケストレーション、コンテキストの注入、サンドボックスでの検証、反復的な修復を組み合わせた統合システムです。このハーネスの精度を支えるのは、コンテキストグラフ、サンドボックス基盤、検証パイプライン、そしてセキュリティのプリミティブを実装してきた経験から得られる知見です。

溝を越えるための3つの進化

エンジニアリングを前進させるには、技術が3つの限界を乗り越える必要があります。まず、人間が介在する運用を超えて、自律的かつ継続的に動作しなければなりません。次に、トリアージを平易な英語で説明するだけでなく、証拠に裏付けられた解決策を伴う、永続的なissueを生成する必要があります。そして、最先端モデルの裏に人間が隠れた「オズの魔法使い」型のハーネスであってはなりません。

目指すべきは、すべてのアクションとセッションにIDおよびアクセス管理を適用し、きめ細かなアクセスポリシーをCedarで強制するマルチエージェントシステムです。このシステムは、単なる生のモデル呼び出しではなく、IAMとCedarが統制するアクションへとシグナルを集約します。 

堅牢なマルチエージェントシステムの5つの要素

堅牢なマルチエージェントシステムは、5つの設計上の選択によって成り立ちます。

  • サイバー対応モデル: 第一の要素は、脆弱性の発見に最適化された複数のサイバー対応モデルを使うことです。
  • 5段階のハーネス: 次に、偵察、脅威モデリング、ハンター、検証、修復からなる5段階のハーネスを構築します。
  • ゼロ・イグレスのサンドボックス: 3つ目は、インターネットアクセスもIAMロールもなく、毎回まっさらな状態で起動するゼロ・イグレスのmicroVMをサンドボックスにすることです。
  • 2層の検証: サンドボックス内で、L1の静的解析とL2の動的セキュリティテストを実行して検証します。クローズする前に、トリガーできることの証明を必須とします。
  • 豊富なコンテキスト: 最後に、精度を高める乗数となるのが、インフラ、アプリケーション、ビジネス固有のコンテキストをシステムに与えることです。

このシステムは、発見、優先順位付け、検証、修復を行う継続的なループを作り出します。数千のリポジトリにスケールしても、毎回同じ答えを証明可能な形で導き出せます。

セキュリティの役割をモデルにした3つのエージェント

優先順位付けエージェントは、脅威インテリジェンスアナリストのように考えます。コンテキストグラフを徹底的に調べ、重要資産(クラウン・ジュエル)への近さをスコアリングし、分類を実行して、ビジネスへの影響を確認します。

検証エージェントは、レッドチームのオペレーターのように考えます。攻撃経路をマッピングし、被害範囲を評価し、補完的なコントロールの有無を確認したうえで、「悪用可能」「判断不能」「悪用不可」の3値で答えを出します。

修復エージェントは、セキュリティエンジニアのように考えます。実証済みのエクスプロイトをもとにパッチを作成します。コード1行ではなくパターンを修正し、該当箇所をすべて網羅します。そして、プルリクエストとともに、サンドボックス内のテストスイートも提供します。 

これらのエージェントは、永続的なレコードを用いた共有状態の中で連携します。それぞれが自分の役割の範囲で作業し、結果を書き戻します。

システムの精度を支えるコンテキストという堀

CyberGymのテストでは、コンテキストがLLMの精度を高めました。汎用LLMの精度は約65%でした。インフラのコンテキストを加えると90%に向上し、ビジネスのコンテキストも加えると95%に達しました。マシンスピードのセキュリティシステムには、インフラレベルのセキュリティに根ざした強力なコンテキストが必要です。それは5つの柱で構成されます。

  1. すべての経路を形式検証し、ネットワークの到達可能性を判定する。
  2. IAMポリシーに対する自動推論を活用し、ポリシーが意図しないアクセスを許可していないかを数学的に証明する。
  3. クラウドへのパブリックアクセスをデフォルトでブロックする。
  4. すべてのリソースと構成変更を、リアルタイムで継続的に棚卸しする。
  5. 大規模に展開されたセキュリティの正しさを数学的に証明する。

では、この自律型システムをどう信頼するのか

すべての呼び出しは、4段階のゲートからなる認可チェーンを通過します。第1のゲートは、2層構造のポリシーエンジンです。IAMによるスコープ設定で、定めた境界の外に出ることを防ぎます。Cedarは、どのリソースに対し、どのような条件で、エージェントにどの操作を許可するかというツールアクセスを、きめ細かく強制します。これにより、認可の判断にLLMを介在させることなく、エージェントの行動に決定論的なガードレールを設けられます。第2のゲートは、スキーマチェックとアカウントバインディングによる入力検証です。第3のゲートは、フェイルクローズ型の監査です。すべての操作は実行前に記録され、監査に失敗すれば何も実行されません。第4のゲートは、1つの操作、1つのリソースに限定され、有効期間(TTL)が15分のクレデンシャルブローカーです。

前述のとおり、サンドボックスはゼロ・イグレスで、インターネット接続もサービスエンドポイントもありません。メモリはタスクごとに破棄されます。サンドボックス内で問題が起きても、影響はその内部にとどまります。

さらに、リスクの幅に対応するため、段階的な自律性を重ねます。ガードレールの許容度は、次のようになります。

  • 未使用の権限の削除は、80%を自律的に実行
  • セキュリティグループの厳格化は、60%を自律的に実行
  • IAMロールの変更は、20%の自律性
  • リソースの削除は自律性ゼロ。実行できるのは人間のみ

最後に、3値による出力の透明性を加えます。すべての判断は、信頼度スコアとともに証拠を示します。LLMによる判断は、決定論的な数学的処理と切り離されます。W3Cのトレース機能をフルに備え、90日間保持します。

これらの要素により、チャットではなく永続的なレコードを、プロンプトではなく明示的な状態を備えた、LLMのための統制されたシステムが成立します。

マシンスピードのセキュリティを実現する

モデルをハーネスで包み、ユーザーインターフェースを作るだけなら、誰にでもできます。しかしそれはコモディティ化した取り組みであり、精度の低さや修復の不完全さが増す運命にあります。堅牢なシステムには、ワークロードが稼働する場所のインフラコンテキスト、追跡可能な結果を生む形式検証、そして統制されたコントロールプレーンが必要です。

検出の問題は解決済みです。市販のスキャンツールなら、どれでもセキュリティイベントを見つけられます。難しいのは、自社の環境で問題が何を意味するのかを理解し、組織を適切な対応へと導く、信頼できる自律型システムを構築することです。

Rudra Mitraは、Amazon Web Services(AWS)のバイスプレジデントで、同社のセキュリティサービス群における製品のインキュベーション、開発、事業拡大を率いています。

それ以前は、Microsoftで27年間、Microsoft Security Purview、Microsoft 365、Microsoft Office Live、Microsoft Windows Liveなど、複数の成功した製品群を手がけました。これらの製品は数十万の組織から信頼され、世界中で数億人のユーザーに活用されています。

Rudraは、生産性、セキュリティ、コンシューマー、エンタープライズといった製品カテゴリーをまたいで活躍するビルダーであり、多才なリーダーです。大きなアイデアに挑み、ユーザーに愛される製品を生み出すことを使命としています。

翻訳元: https://www.csoonline.com/article/4237926/moving-past-autonomous-exploitation-to-machine-speed-security.html

本記事は csoonline.com の記事を翻訳・要約したものです。