- 米国防総省が、「技術支援室(Technology Support Office)」と呼ばれる新たな秘密工作機関を設置
- 同室の目的は、米軍の優位を脅かしかねない外国の技術開発を妨害すること
- 情報機関の関係者の多くはこの構想に賛同する一方、作戦の監督体制を懸念する声も
米国防総省に新たな組織が水面下で設置されました。米国の優位を脅かしかねない外国の技術プログラムを、米軍が攻撃する際に支援する組織です。
「技術支援室」という名前を聞いたことがなければ、国防総省のITヘルプデスクか、トラブル対応の窓口だと思っても無理はありません。しかし、この名称が登場する国防総省の記録は、ごくわずかです。
国防総省内で「TSO」と呼ばれるこの組織は、2023年から活動していた2つの機密情報プログラムを統合する形で、4月にひそかに発足しました。2つのプログラムの目的は、外国の技術を秘密裏に妨害することでした。Politicoの取材に応じた米国家安全保障当局の現職・元職員らによると、TSOの役割は、この秘密の妨害活動を世界規模に拡大することにあります。
米国、秘密裏の技術妨害能力を拡大
Politicoの取材に応じた関係者によると、TSOは、スティーブ・ファインバーグ国防副長官と、その上級顧問トム・ラクサン氏の発案です。ファインバーグ氏はTSOの設置前、トランプ政権の第1期にホワイトハウスの情報諮問委員会(Intelligence Advisory Board)の委員長を務めていました。ラクサン氏は、長年CIAの秘密工作部門に携わってきた人物です。
国家安全保障の観点では、TSOは外国から米国への脅威に対抗する役割を担うとされます。対象には、人工知能(AI)の悪用や、ドローン、ロボット工学といった新興技術が含まれます。対抗手段は、外国の敵対勢力が米国に危害を加えるときと同じ手法、つまりサイバー攻撃、サプライチェーンの混乱、偽情報工作です。
Politicoの取材に応じた人々の多くは、TSOに賛成の立場を示しました。世界は、より不確実で技術的にも高度な新しい時代に入り、壊滅的な混乱を引き起こすためのハードルが大幅に下がっています。米国の安全と優位を確保することは、その中で最大の関心事だというのです。
国防総省の情報部門の元高官の1人は、Politicoに次のように語りました。「政府の最高レベルがこの種の活動に改めて焦点を当てたことは、切実に必要とされていました」
一方、別の国防総省の元高官は、TSOの監督体制や規則に疑問を投げかけています。「承認の仕組みはどうなっているのか。監督は誰が行うのか。活動内容を知らされるのは誰か。こうした点が示されなければ、米国民は、その活動が私たちの価値観に沿っていると安心できません。5年後に極めて問題だったと見なされるものを作り出していないとも言い切れないでしょう」と、この元高官は述べました。
過去の時代の諜報活動の再来か
Politicoは、現職・元職の高官らへの取材を通じて、TSOには作戦を直接実行する権限がないことを把握しました。TSOは、エンジニア、特殊作戦要員、情報機関の職員からなるチームを通じて、外国の敵対勢力を妨害するために必要なツールを調達するといいます。
TSOは基本的に、国防総省内の他のプログラムをつなぐパイプラインとして機能します。あわせて、承認済みのサイバー妨害ツールをまとめ、国防総省の他部門が使えるようにする拠点の役割も果たします。
しかし、国防総省の上層部には、活動の透明性が十分でなければTSOが権限を逸脱しかねないという懸念があります。TSOの秘匿性は、この点で諸刃の剣です。活動を知る人が少ないほど秘匿性は高まります。その一方で、議会による監督を受ければ、TSOの活動があまりに多く公になる恐れがあります。
米国家安全保障当局の現職職員の1人は、「機密の領域なので、隠したり、ごまかしたりする機会はさらに増えます」と語りました。
PoliticoがTSOとその目的について質問したところ、国防総省のジェイコブ・ブリス報道官代理は、次のように答えました。「この問い合わせは、事実ではない情報に基づいているようです。そうした主張を伝えている人物は、ひどい誤解をしているか、自らの空想を広めるために意図的にあなたを欺こうとしているかのどちらかです」
米国の情報機関には、国家安全保障を追求するあまり、管轄の範囲を逸脱してきた歴史があります。NSAの前身で「ブラック・チェンバー(Black Chamber)」と呼ばれた組織は、電信会社に圧力をかけ、外国の電信通信を違法に提出させました。「プロジェクト・シャムロック(Project SHAMROCK)」は、米国に出入りするすべての電信データの収集という、その活動を引き継ぎました。
20世紀後半のCOINTELPROと呼ばれる一連のプログラムは、偽情報や国内監視から、不当な投獄、政治的暗殺にまで及びました。より最近でも、愛国者法(PATRIOT Act)や通信傍受支援法(CALEA)に基づく監視が、権限を大きく逸脱していたのではないかという懸念が出ています。