AIは、恋愛やパートナーとの関係において「第三の存在」になりつつあります。私たちの最も親密な領域で、AIが果たす役割は着実に大きくなっています。
AIが顔を出す場面は、気を引くための最初のメッセージ、磨き上げたマッチングアプリのプロフィール、ケンカの後にパートナーへ使うカウンセリング風の言葉、失恋から立ち直るための心の支えなど、実にさまざまです。AIそのものを話し相手とする人もいます。自分がAIを使わなくても、交際相手や恋人、口論の相手、信頼している人がAIを使っている可能性は十分にあります。
AIが人間関係の奥深くまで入り込むにつれ、つながりのあり方は変わりつつあります。何が本物なのかは見えにくくなり、親密さを悪用する新たな手口も生まれています。
人との交流を置き換え始めたAI
AIは、かつて人間だけのものだった感情の領域にも踏み込んでいます。一部の人にとってAIはもはや単なる道具ではなく、支えであり、話し相手であり、恋愛感情の対象にさえなっています。
当社の最新調査によると、約6人に1人がチャットボットを話し相手や心の支えとして利用した経験があります。この割合はZ世代とミレニアル世代では約5人に1人、AIの日常的な利用者(毎日、または週に数回使う人)では4人に1人近くに上ります。AIと過ごす時間が長い人ほど、AIを人間のように捉える傾向が強まります。友人、相談相手、アドバイザー、さらにはパートナーとして位置づける人もいます。
AIが親密な役割を担うようになり、人間同士の関係の境界線も揺らぎ始めています。すでに特定のパートナーがいる状態でAIチャットボットと恋愛関係になることを「浮気とは違う」と考える人は、3人に1人以上(37%)でした。この見方は男性(女性30%に対して46%)、Z世代とミレニアル世代(それぞれ43%、45%)、AIの日常的な利用者(48%)で目立ちます。
友情であれ恋愛であれ、AIを人間のように扱うほど、そこに懸かるものは個人的で重いものになります。人に最も深い秘密を打ち明けるときに慎重になるのと同じで、AIを使うときも注意が必要です。AIとの私的なやり取りが流出するのではないかと不安に感じている人は、3分の2近く(65%)に達しました。
ある回答者は次のように述べています。
「チャットボットを心の支えとして使ったことがありますが、その会話が漏えいするかもしれないと思うと不安です」
技術は人工的でも、人がAIと築く関係は非常にリアルに感じられることがあります。他の人間関係と同じように、線引きを決め、プライバシーを守り、弱みへの備えをする必要があります。
親密さを悪用する新たな手口を生むAI
人の親密な関係にAIが深く関わるようになった結果、暗い側面も生まれています。安らぎや助言、話し相手を与えてくれるのと同じ技術が、私たちの最もプライベートな領域を踏みにじる目的にも使えるからです。
同意のない画像の悪用やセクストーション(性的脅迫)をはじめとする性的虐待は、以前からインターネットの暗部として存在してきました。生成AIは、そうしたコンテンツの作成を容易にしました。他人を食い物にしようとする者は、もはや本物の親密な写真や動画、私的なやり取りを手に入れる必要がありません。ごく普通の写真、あるいは顔立ちだけがあれば、本人が撮影も共有も同意もしていない性的コンテンツを作れてしまいます。
大半の人はこうした行為にはっきり反対していますが、全員ではありません。約6人に1人は、個人的な利用目的であれば、本人の許可なく露骨な画像を生成しても許容できると答えました。さらに14%が中立の立場で、明確に反対しない人は合わせて3人に1人近く(31%)に上ります。
考え方は年齢や性別によって大きく異なります。
- 若い世代ほど、AIによる同意のないコンテンツ生成に寛容です。Z世代(24%)とミレニアル世代(23%)ではそれぞれ4人に1人近くが「問題ない」と答えました。X世代は13%、ブーマー世代以上はわずか5%です
- 男性も寛容な傾向があります。「問題ない」と答えた男性は5人に1人以上(22%)で、女性は14%でした
こうした行為への態度は人によって分かれますが、標的にされることへの恐怖はそれよりはるかに広く共有されています。全体の3分の2近く(62%)が、自分の偽のヌード写真や性的な写真・動画を作られるのではないかと心配しています。この脅威をより切実に感じているのは女性で、7割近く(69%)が不安を抱いており、男性の57%を上回りました。
この恐怖がすでに現実になった人もいます。
- 10人に1人が、許可なくAIで自分のヌード画像や性的な画像を生成された経験があると回答
- 10人に1人が、AIで生成された自分の不名誉な画像や露骨な画像を公開すると脅された経験があると回答
ある回答者は次のように振り返っています。
「SNSに載せていた私の写真を使い、AIで偽のヌード画像を作られ、Facebookに投稿すると脅されました。この経験で、AIに対してより慎重になりました」
親密な素材は偽物でも、恐怖や強要、そして評判や精神面、金銭面で被害を受ける可能性は完全に現実のものです。
話している相手の正体を見抜きにくくするAI
脅威は、捏造された性的コンテンツにとどまりません。画面の向こうにいる相手が、名乗っているとおりの人物かどうかを見極めることも、AIによって難しくなっています。
人間は昔から、相手に合わせて自分を演出してきました。最も写りのいい写真を選び、送る前にメッセージを何度も書き直し、特に新しい関係では自分の魅力的な面を見せようとします。AIはこうした自己演出の幅を大きく広げました。しかも、人々はそれを使うことをためらっていません。
- 54%が、AIのおかげで最高の自分を見せられると回答
- 47%が、雇用主や友人、恋愛相手にAIで「最高の自分」を見せても、偽りの身元を示すことにはならないと回答
- この割合は、Z世代とミレニアル世代ではともに58%、AIの日常的な利用者では64%に上昇
では、どこまでが自分を良く見せる工夫で、どこからが欺瞞なのでしょうか。AIで磨き上げたマッチングアプリのプロフィールは、本当に自分らしいと言えるのでしょうか。自分で書いていないメッセージや、自分に似ていながら実物より見栄えのいい写真はどうでしょうか。
AIで自分を良く見せられるということは、裏を返せば、相手も同じことができるということです。自分で技術をコントロールできない状況では、人々の不安は一気に高まります。オンラインの友人や恋愛相手がAI生成の画像や動画などで自分をだますかもしれないと心配する人は、3分の2(67%)に上りました。
キャットフィッシングや偽の写真、プロフィール上の嘘は、今に始まったことではありません。AIはそうした欺瞞をさらに容易にしただけです。写真や生い立ち、メッセージ、さらには声まで、すべて偽造できます。
ある人は、やり取りしていた相手がプロフィールを少し磨いた程度ではなかったと気づき、マッチングアプリをやめたと語っています。
「プロフィールには偽の写真が使われていました。本当の出来事を面白く、よりロマンチックに見せるだけでなく、まったくの偽の写真や情報を作り出していたのです。またマッチングアプリをやめて、気持ちをリセットする必要がありました」
AIは逆方向にも、アイデンティティを歪める可能性があります。自分が選んだわけではない「もう一人の自分」が、世に出回るおそれがあるのです。
- 76%が、自分になりすました偽のプロフィールを作られることを心配
- 70%が、自分の偽の画像や動画を作られることを心配
- 71%が、AI生成コンテンツで自分の評判を傷つけられることを心配
人間関係は、お互いの信頼の上に成り立っています。AIは、その両側を歪めかねません。相手が誰なのかという認識と、相手から見た自分が誰なのかという認識の両方です。
人と人の間に静かに入り込むAI
AIが親密さに及ぼす影響は、すべてが劇的なものではありません。多くは静かに進行し、人々のコミュニケーションや関係の築き方に現れています。
- 3人に1人以上が、メッセージの作成や推敲にAIを利用
- 約7人に1人が、恋愛や個人的な決断についてAIに助言を求めた経験あり
- 10人に1人が、AIによってすでにデートや恋愛上のやり取りの仕方が変わったと回答。Z世代では5人に1人近くに上昇
調査の回答からは、実際の使われ方が見えてきます。たとえばある回答者は、パートナーとAIを使うことで、自分の視点から一歩離れられると述べています。
「個人的には役に立っています。私たちは二人の関係で、AIを振り返りのツールとして使っています。おかげで、相手の視点に立てることもありました」
別の回答者は、AIのおかげで嫉妬心と向き合えたと話します。
「以前は、パートナーを責めたり、独占欲が強くなったりしていました。でもAIに相談したところ、役立つアドバイスをもらえて、今では以前よりずっと絆が深まっています」
AIは、関係の中で生じる他の難しい場面にも登場しています。パートナーとの間で問題が起きたとき、AIのおかげで「冷静に気持ちを伝えられた」という人もいれば、返信する前に「立ち止まって考えを整理できる」という人もいました。
もっとシンプルな使い方もあります。AIからパートナーへの「新しい愛の言葉」をもらっているという回答者や、パートナーを笑顔にする方法をAIに尋ねたという回答者もいました。AIが関係に深く関わっていくことには不安も残りますが、人々が挙げるメリットは確かに存在します。
AIが手助けするのは、ふさわしい言葉選びだけではありません。そもそもどんな自分を見せるかを決める際にも、AIは使われています。マッチングアプリのプロフィールをAIで作成・改善することは問題ないと答えた人は3人に1人以上で、反対しない人は3分の2近くに上ります。ある回答者は、プロフィールを磨き、会話のきっかけを考えるために、AIを「クリエイティブなアドバイザー」として使っていると述べました。
AIは、関係を置き換えなくても、その形を左右できます。人々のコミュニケーションの取り方、受け入れる助言、自分をどう見せるかに影響を与えるのです。
AIの親密さの問題は、突き詰めれば信頼の問題
つながりから欺瞞、そして明確な被害に至るまで、問われるのは常に同じです。目の前にあるものを信頼してよいのか、そして信頼できないとき、それに気づけるのか、という問いです。
10人中9人近く(88%)が、AIのせいでオンラインのコンテンツが本当に人間によるものか、本物かを見分けにくくなっていると回答しました。84%は、説得力のある動画でさえ、もはや証拠とは感じられないと答えています。こうした不確かさは、デートや恋愛にも影響します。何を、そして誰を信頼するかは、きわめて個人的な問題だからです。
AIのおかげで、会話を始めたり、難しい話をうまく収めたり、孤独なときにつながりを感じたりすることは楽になるかもしれません。しかし、あらゆる種類の関係や親密さは、結局のところ信頼に行き着きます。AIは、その信頼をそのまま受け取ることを少し難しくしています。
調査について
本記事の調査は、AI、アイデンティティ、デジタル信頼の崩壊に関する2026年3月の調査に基づいています。対象は米国、英国、ドイツ、オーストリア、スイスの1,500人の回答者です。調査は独立した調査コンサルタントが準備し、Forstaを通じて実施されました。
翻訳元: https://www.malwarebytes.com/blog/ai/2026/10/artificial-intimacy-love-and-lies-in-the-age-of-ai