OpenAI、Linuxの脆弱性を発見・悪用・修正するAIパイプラインを構築

120万ドルを投じた実験は、AIが脆弱性の検証とパッチ生成を自動化できることを示した。修正はメンテナーに提出される前に、人間の研究者が確認する。

OpenAIは、ソフトウェアの脆弱性を特定し、その影響を検証するための実用的なエクスプロイトを開発し、人間によるレビュー用のパッチを生成する、自律型のAIパイプラインを開発しました。同社が11月4日に公開した調査レポート「A thousand fewer paths to root」によると、10月にLinuxカーネルを対象に実施した実験で、このパイプラインは948件の異なるローカル権限昇格(LPE)脆弱性に対するエクスプロイトを作成しました。APIコストの合計は120万ドルでした。

このシステムは、脆弱性の発見、動的検証、エクスプロイト開発、パッチ生成を自動化します。ただしOpenAIによると、調査結果をメンテナーに報告する前に、根本原因の分析、概念実証(PoC)エクスプロイト、修正案を人間の研究者がレビューしています。

この研究は、OpenAIの「Patch the Planet」イニシアチブを土台にしています。同社は6月、サイバーセキュリティ施策「Daybreak」の一環としてこのプロジェクトを発表しました。その際、GPT-5.5 CyberがLinuxカーネルの脆弱性を特定し、24件のLPEエクスプロイトを開発したと説明していました。今回の実験では、この取り組みを発見・悪用・パッチ生成までを網羅するパイプラインへと拡張したと、レポートは述べています。

AIが変える脆弱性研究の経済性

OpenAIによると、10月のキャンペーンに要したAPIクレジットは1,213,430ドルで、作成した異なるLPEエクスプロイト1件あたりの平均は1,279ドルでした。

OpenAIは、今回の研究費用を、Pwn2OwnやTyphoonPWNといったハッキングコンテストでLinuxカーネルの脆弱性に支払われてきた過去の報奨金と比較しました。これらの大会では、LPEエクスプロイトに2万ドルから7万ドルが支払われています。この金額をもとに、OpenAIは作成した948件のエクスプロイトの価値を1,890万ドルから6,630万ドルと見積もっています。これはパイプラインのコストの16倍から55倍に相当します。ただし、この比較は実際の報奨金の支払額を示すものではなく、すべての発見が報奨の対象になると立証するものでもありません。

OpenAIによると、今回のキャンペーンで特定した固有のLPE脆弱性は、GPT-5.6 Solを使った以前の実験の5倍に上りました。2回のスキャンの間に、Linuxカーネルでは3カ月分の追加の堅牢化が進んでいたにもかかわらずです。また、166件のエクスプロイトのサンプルを分析した結果、同社のエージェントは少なくとも10種類の新たなLinux攻撃手法を使っていたと報告しています。

OpenAIによると、パイプラインは検証済みの脆弱性に対する修正パッチの候補を生成し、反復テストとバリアント分析で改良を重ねました。初期のパッチには、不要なコード変更や性能面のトレードオフが含まれていたり、関連する脆弱性のバリアントに対処できていなかったりする場合もあったといいます。

なお必要な人間の関与

キャンペーンの実施中、OpenAIが結果をLinuxカーネルのメンテナーに報告する前の時点で、発見した脆弱性のうち61件はすでにアップストリームで修正され、43件にはステージングパッチがあり、さらに299件が公開の場で議論されていました。

OpenAIは、数百件の脆弱性報告とパッチをメンテナーに提出したと説明しています。ただし、レポートには948件すべての対応状況の詳細な内訳はありません。

AIが生成したエクスプロイトの検証が必要なことも、報告を遅らせる要因です。初期の実験では、成功したとされる200件のエクスプロイトのうち20件が、分析対象として割り当てた脆弱性とは別のゼロデイ脆弱性を突いてroot権限を取得していたことが判明しました。OpenAIはその後、AIが割り当てられた作業を確実に実行するよう、追加のチェックを導入しました。

Security Brigadeの創業者兼CTOであるYash Kadakia氏は、自律型セキュリティツールを評価する企業は、再現可能なエクスプロイト、正確な根本原因の特定、独立した検証を求めるべきだと指摘します。「結果を出すことと、その方法を正しく説明することは別の話です」と同氏は述べました。

企業のパッチ適用は依然として課題

OpenAIは発見したエクスプロイトの数に注目していますが、最大の脅威はそこではないと、IDCのリサーチディレクターであるSakshi Grover氏は話します。「リスクは948件という数よりも、発見から修正が本番環境に届くまでの期間の長さにあります」と同氏は述べました。

Grover氏によると、アップストリームでパッチが適用されても、企業環境で稼働するLinuxディストリビューションのカーネルに修正が反映されたとは限りません。同氏は、マルチテナントのホスト、CI/CDランナー、共有踏み台サーバー、コンテナープラットフォーム、開発者向け端末群を優先して対応するよう勧めています。あわせて、Linuxディストリビューターにバックポートの時期を確認するよう促しました。

SUSEの最高技術・製品責任者であるThomas Di Giacomo氏は、同社も同様のAIツールを使って脆弱性の発見と修正を進めており、アップストリームのコミュニティーとも連携して開示とパッチ適用に取り組んでいると説明しました。

「コード分析やバグ探しをAIが加速させることは、脅威の状況における根本的な転換を意味します」とDi Giacomo氏は述べています。

同氏によると、SUSEのエンタープライズ向けLinuxのセキュリティ対策は、複数層の防御と、顧客アプリケーション向けの堅牢化されたランタイムを組み合わせ、権限昇格やコンテナーエスケープのリスクを軽減するものです。

OpenAIはさらに、Patch the Planetを通じて、この研究を他の重要なソフトウェアプロジェクトにも広げる計画だと述べました。メンテナーやセキュリティパートナーと協力し、脆弱性の発見、検証、自動パッチ適用に取り組みます。

Gyana Swainは、通信・IT分野を20年以上取材してきたベテランのテクノロジージャーナリストです。VARINDIAのコンサルティングエディターを務め、以前はCyberMedia、PTI、9dot9 Media、Dennis Publishingで編集職を歴任しました。2冊の著書があり、業界への深い洞察と物語性を兼ね備えています。仕事以外では、旅行とクリケットを愛しています。ウトカル大学で学士号を取得しています。

翻訳元: https://www.csoonline.com/article/4245265/openai-built-an-ai-pipeline-to-find-exploit-and-patch-linux-flaws.html

本記事は csoonline.com の記事を翻訳・要約したものです。