コンテンツにスキップするには Enter キーを押してください

異例の容疑者:Gitリポジトリ

2025年7月14日The Hacker Newsシークレット管理 / SaaSセキュリティ

Image

フィッシングやランサムウェアが話題を独占する一方で、もう一つの重大なリスクが多くの企業で静かに存在し続けています。それは、機密データを漏洩するGitリポジトリの露出です。このリスクは、コアシステムへのシャドウアクセスを密かに生み出します。

Gitは現代のソフトウェア開発の基盤であり、世界中の何百万ものリポジトリをホストし、何千もの組織にサービスを提供しています。しかし、日々の開発業務の中で、開発者がAPIキーやトークン、パスワードなどを設定ファイルやコードファイルにうっかり残してしまい、攻撃者に「王国の鍵」を渡してしまうことがあります。

これは単なる不注意の問題ではなく、システム的かつ拡大し続けるサプライチェーンリスクです。サイバー脅威が高度化するにつれ、コンプライアンス要件も厳格になっています。NIS2、SOC2、ISO 27001などのセキュリティフレームワークは、ソフトウェアデリバリーパイプラインの堅牢化やサードパーティリスクの管理を証明することを求めています。メッセージは明確です。Gitリポジトリのセキュリティ対策はもはや選択肢ではなく、必須事項です。

以下では、公開・非公開のコードリポジトリにおける認証情報やシークレットの露出リスク、その攻撃ベクトルが過去にどのように利用されてきたか、そしてリスクを最小限に抑えるためにできることを解説します。

Gitリポジトリの脅威の状況#

Gitリポジトリを取り巻く脅威の状況は、いくつかの要因によって急速に拡大しています:

  • DevOpsプラクティスの複雑化
  • GitHubなどの公開バージョン管理プラットフォームへの依存拡大
  • 人的ミスや設定ミス全般:アクセス制御の不備から、テスト環境のまま本番にプッシュされるケースまで

開発スピードが上がるほど、攻撃者が公開コードリポジトリを武器化する機会も増えるのは当然です。GitHubだけでも2024年に3,900万件以上のシークレット漏洩が報告されており、前年比67%増加しています。これにはクラウド認証情報、APIトークン、SSHキーなどが含まれます。多くの漏洩は以下のようなケースから発生しています:

  • 個人開発者アカウント
  • 放置された、またはフォークされたプロジェクト
  • 設定ミスや監査されていないリポジトリ

攻撃者にとって、これらは単なるミスではなく、侵入経路です。公開されたGitリポジトリは、内部システムや開発者環境への直接的かつ低コストな経路を提供します。小さな見落としが、しばしばアラートも出さずに、深刻な侵害へと発展します。

攻撃者は公開されたGitリポジトリをどう利用するのか?#

公開ツールやスキャナーを使えば、公開されたGitリポジトリからシークレットを収集するのは簡単です。攻撃者は、公開コードからインフラ侵害へと素早くピボットする方法を熟知しています。

リポジトリに侵入した攻撃者は、以下を探します:

  • シークレットや認証情報:APIキー、認証トークン、パスワードなど。多くは設定ファイルやコミット履歴にそのまま残っています。
  • インフラ情報:ホスト名、IP、ポート、アーキテクチャ図など内部システムの詳細。
  • ビジネスロジック:認証、セッション管理、APIアクセスの脆弱性を示すソースコード。

これらの情報は、次のような形で武器化されます:

  • 初期アクセス:有効な認証情報を使って認証を突破
    • クラウド環境 — 例:公開されたアクセスキーによるAWS IAMロール、Azureサービスプリンシパル
    • データベース — 例:ハードコードされた接続文字列を使ったMongoDB、PostgreSQL、MySQL
    • SaaSプラットフォーム — 設定ファイルやコミット履歴から見つかったAPIトークンを利用
  • ラテラルムーブメント(横展開):侵入後、さらにピボット
    • 公開されたOpenAPI/Swagger仕様書を使って内部APIを列挙
    • GitHub Actions、GitLab CI、Jenkinsから漏洩したトークンでCI/CDパイプラインにアクセス
    • 設定ミスの権限を利用して内部サービスやクラウドアカウント間を移動
  • 永続化と情報窃取:長期的なアクセス維持とデータ窃取
    • 新しいIAMユーザーやSSHキーを作成して潜伏
    • 悪意あるLambda関数やコンテナをデプロイし、通常のワークロードに紛れる
    • S3バケット、Azure Blob Storage、CloudWatchやLog Analyticsなどのログプラットフォームからデータを窃取

たった1つのAWSキー漏洩で、クラウド全体が危険に晒されることもあります。忘れられた.git/configファイルや古いコミットにも、まだ有効な認証情報が含まれている場合があります。

これらの漏洩は、従来型の境界防御を完全に回避することが多いです。攻撃者が公開Gitリポジトリ → 開発者のPC → 社内ネットワークへとピボットする事例も確認されています。この脅威は理論上のものではなく、Penteraを使った実際の本番環境で検証済みの「キルチェーン」です。

露出リスクの低減は基本から始まります。単一の対策でGitベースの攻撃を完全に防ぐことはできませんが、以下の実践によりシークレット漏洩の可能性を下げ、万一漏洩した場合の影響も抑えられます。

1. シークレット管理#

  • HashiCorp Vault(オープンソース)、AWS Secrets Manager、Azure Key Vaultなど、専用のシークレット管理ソリューションを使い、シークレットをコードベース外で保管しましょう。これらのツールは安全な保管、細かなアクセス制御、監査ログを提供します。
  • ソースファイルや設定ファイルにシークレットをハードコードしないでください。代わりに、環境変数やセキュアAPI経由でランタイム時に注入しましょう。
  • シークレットの自動ローテーションで露出期間を短縮しましょう。

2. コード衛生#

  • .gitignoreポリシーを厳格に適用し、.env、config.yaml、credentials.jsonなど機密情報を含む可能性のあるファイルを除外しましょう。
  • Gitleaks、Talisman、git-secretsなどのスキャンツールを開発フローやCI/CDパイプラインに組み込み、コミット前にシークレットを検出しましょう。

3. アクセス制御#

  • 全てのGitリポジトリで最小権限の原則を徹底しましょう。開発者、CI/CDツール、サードパーティ連携には必要最小限のアクセス権のみを付与します。
  • 可能な限り短命トークンや有効期限付き認証情報を使用しましょう。
  • Gitプラットフォームで多要素認証(MFA)やシングルサインオン(SSO)を必須化しましょう。
  • ユーザーやマシンのアクセスログを定期的に監査し、過剰な権限や不審な挙動を特定しましょう。

攻撃者より先にGitデータの露出を発見しよう#

公開Gitリポジトリは、特殊なリスクではなく、特に高速なDevOps環境では主流の攻撃ベクトルです。シークレットスキャナーや衛生管理は不可欠ですが、それだけでは全体像を把握できません。攻撃者はコードを読むだけでなく、それをインフラへの地図として利用しています。

しかし、ベストプラクティスを守っているチームでも、「実際に攻撃者がこの露出を使って侵入できるのか?」という重要な問いには答えられないことが多いです。リポジトリの保護には静的なチェックだけでなく、継続的な検証、積極的な修復、そして攻撃者視点が必要です。コンプライアンス要件が厳しくなり、攻撃対象が拡大する中、組織はコード露出をセキュリティ戦略の中核として扱うべきであり、後回しにしてはいけません。

この取り組みについて詳しく知りたい方は、ウェビナー They’re Out to Git You(2025年7月23日開催)にご参加ください。

翻訳元: https://thehackernews.com/2025/07/the-unusual-suspect-git-repos.html

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です