エージェントと戦うにはエージェントが必要——Microsoftでコーポレートバイスプレジデント兼AIセキュリティ担当を務めるDavid Weston氏は、7月27日に開催されたMicrosoft Securityのローンチプレビューでこう聴衆に語りました。
このイベントで、レドモンドに本拠を置く同社は新しいAI・セキュリティ関連の製品や施策を次々と発表しました。
まずMicrosoftは、サイバー防御担当者がセキュリティリスクを継続的に特定・評価・低減できるよう支援する新しいエージェント型セキュリティシステムProject Perceptionを発表しました。
MicrosoftのPerceptionは、時間の経過とともにセキュリティ態勢を改善するために連携する3種類の専門エージェントを統括します。
- 赤(Red)エージェント:悪用される前に潜在的な攻撃経路や脆弱性を特定
- 青(Blue)エージェント:検出結果を調査し、セキュリティ上の文脈を加味した上で、意味のあるリスクかどうかを判断
- 緑(Green)エージェント:是正措置を講じ、環境全体の防御力を強化
これは、2026年5月にリリースされたGoogleのAI Threat Defenseプラットフォーム(Wizの赤・青・緑エージェントを基盤とする)によく似た構成です。
Microsoft Securityのエグゼクティブバイスプレジデント、Hayete Gallot氏はMicrosoftのローンチイベントで、同社の事業がグローバルに展開されているため、1日あたり約100兆件ものシグナルを観測していると説明しました。
「私たちはIDやデータ、クラウド、コード、さらにはAIのレイヤーに位置しています。そこにセキュリティ研究、脅威インテリジェンス、レッドチーム活動の成果を加えれば、シグナルの数はさらに膨れ上がります」と同氏は述べています。
「しかし、その生のデータにそのままエージェントを適用すると、処理は非常に遅くなり、結果も芳しくないものになってしまいます。だからこそ私たちは、あらゆるシグナルを連携・相関させることで『セキュリティコンテキスト』を提供し、エージェントが効率的に扱えるよう整理しているのです」
Weston氏はさらに、Project Perceptionはマルチモデル対応になると付け加え、セキュリティオペレーションセンター(SOC)が直面しうる一連の運用シナリオに基づいた複数の「プレイブック」を聴衆に披露しました。
「私たちは、エージェントと戦うにはエージェントが必要だと本質的に考えています」と同氏は語りました。
Perceptionは8月3日から、Microsoftの全顧客向けにプレビューモードで提供されます。
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Microsoft初のサイバー特化型AIモデル「MAI-Cyber-1-Flash」
Gallot氏はまた、ソフトウェアの脆弱性分析をはじめとするサイバーセキュリティ用途向けに特化した、Microsoft独自の新しい生成AIモデルの発表も行いました。
Microsoft AI(MAI)が開発したこのモデルMAI-Cyber-1-Flashは、同社が社内で開発した推論モデル「MAI-Thinking-1」をベースにしています。このモデルはMicrosoft Securityのマルチモデル型エージェンティックスキャニング基盤「MDASH」に統合されています。
Microsoft AIのCEO、Mustafa Suleyman氏によると、このシステムはさらにGPT-5.4によって強化されており、CyberGymベンチマークではAnthropic、OpenAI、Googleの競合ソリューションを上回る成績を記録したとのことです。
MAI-Cyber-1-FlashとGPT4.5による強化を組み合わせたシステムは、CyberGymベンチマークで95.95%という成功率を達成しました。
これに対し、OpenAIの「GPT-5.5 Cyber」は85.6%、「GPT-5.6 Sol」は83.6%、Anthropicの「Mythos」は83.8%、Googleの「Gemini 3.5 Flash Cyber」は83.2%という結果でした。

MDASH内では、MAI-Cyber-1-Flashがクエリの約90%を処理し、ソフトウェアの脆弱性を特定・修正した上で、修正が正しく機能するかどうかを検証します。残りの10%を占めるより複雑なタスクは、より大規模なGPT-5.4モデルに引き継がれます。
Suleyman氏によると、GPT-5.4はMAI-Cyber-1-Flashのおよそ10倍の規模を持ち、引き継がれたクエリを解決できるといいます。
同氏は、両モデルの連携によって競合システムを上回る性能を発揮しながら、コストはおよそ50%削減できると主張しています。
DARPA AIxCC優勝チームからMicrosoft Security FORGE Labへ
同社はまた、Microsoft Security Frontier Offensive Research and Generative Exploration(FORGE)Labの立ち上げも発表しました。
このラボを率いるのはTeam Atlantaです。同チームは、2025年夏のDEFCONで開催された米国防高等研究計画局(DARPA)のAI Cyber Challenge(AIxCC)で優勝したサイバーセキュリティ研究者集団であり、Microsoftはこのチームを新施策の統括役として採用したとGallot氏は述べています。
FORGE Labを率いるのは、Team Atlantaも率いていたTaesoo Kim氏です。
Microsoftのローンチイベントで、Kim氏はDARPAの競技会を「現実世界を舞台にしたAIサイバーチャレンジ」と表現し、優勝チームは最先端の研究と実践的なエンジニアリングを組み合わせたと述べました。
同氏によれば、DARPAの選考プロセスは各チームに対し「競技を通じてエンジニアリングとハイリスク・ハイリターンな研究のバランスを取る」ことを促すものであり、Microsoftはこうした成果を実運用に落とし込む上で理想的な環境を提供したといいます。その理由として、AzureとGitHubにまたがる同社の圧倒的な規模を挙げました。
Kim氏はさらに、このラボの使命は「攻撃的セキュリティ研究の最前線を切り拓き、AI支援による脆弱性発見から自律的なセキュリティ研究への進化を加速させること」だと付け加え、FORGEをDARPAレベルのブレークスルーと企業の防御力を橋渡しする存在に位置づけました。
External Red Team Allianceの発足
最後にMicrosoftは、AI安全性研究の裾野を広げることを目的とした二本柱の施策、External Red Team Alliance(EXTRA)を発表しました。
その第一の柱は、MicrosoftのAIレッドチームが、6大陸にまたがる18の大学研究室に対し「無条件の助成金」を提供し、AI安全性に関する研究を支援するというものです。
MicrosoftのAIレッドチームを率いるRam Shankar Siva Kumar氏は、7月17日に公開したブログ記事の中で、この助成金には一切の条件が付かないと説明しています。特定の製品や既定の成果へと研究の方向性を誘導することが目的ではないためだといいます。
同氏によれば、これらの大学の一部はAIシステム自体がもたらすサイバーセキュリティリスク——実世界の環境でこうしたモデルがどのように悪用・改ざん・誤用されうるか——を掘り下げて研究している一方、別の大学ではその裏返しとして、AIをどのように活用すれば防御力を強化しサイバー運用を向上させられるかを探求しているとのことです。
この施策の第二の柱は、ニッチな分野におけるレッドチーム活動に貢献できる専門家からなる分散型ネットワークの構築に焦点を当てています。
Siva Kumar氏によれば、このネットワークには、特定の攻撃手法や言語、文化的なニュアンス、あるいは専門技術分野に精通した研究者・実務家・地域専門家が参加する予定です。これらは、Microsoftの社内チームだけでは十分にカバーしきれない領域だといいます。
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翻訳元: https://www.infosecurity-magazine.com/news/microsoft-ai-security-initiatives/