Anthropicがハッキング活動でClaudeを悪用したロシア系スパイ組織を摘発

Anthropicは、政府機関・情報機関・外交機関・防衛関連組織など20以上の組織を標的としたハッキングキャンペーンにおいて、AIツール「Claude」を悪用していたロシア系のサイバースパイ集団を検知・阻止したと、木曜日に発表しました。

2025年12月から2026年8月までの活動を対象とした脅威レポートの中でAnthropicは、「国家の支援を受けたハッカー、犯罪グループ、個人のハクティビスト」が同社のツールをサイバー作戦に悪用しようとする事例を確認したと述べています。

「いずれのケースでも、私たちは当該の活動を阻止した上で、そこから得た知見をもとに安全対策を強化し、必要に応じて当局や業界パートナーと情報を共有しました」と同社は述べています。

このレポートはセキュリティ専門家からおおむね高く評価されていますが、Anthropicが検知した悪用の規模に関する全体的な数値は公表されていない点が特徴です。とはいえ、競合であるOpenAIによる同種のレポートとは異なり、Anthropicは複数のキャンペーンや悪用の種類について詳細な分析を行っており、セキュリティチームが活用できる侵害指標(IOC)も併せて公開しています。

Anthropicによれば、今回確認された活動は「Midnight Blizzard」(別名BlueBravo、APT29、Cozy Bear)と一致するとのことです。これは西側諸国の情報機関がロシア対外情報庁(SVR)に帰属させているハッキング集団です。

このハッカーたちは、ホテルのWi-Fiプロバイダーを侵害し、DNSレコードを改ざんして旅行者を攻撃者の管理するインフラへリダイレクトさせていたことが確認されています。Anthropicは、この活動をMidnight Blizzardのサブクラスターである「Storm-2945」に関連付けたMicrosoftの調査を引用しています。

このロシア系スパイ集団は、「ウクライナ政府・軍・外交関係者」に加え、ドローンのサプライチェーンに関わる組織を繰り返し標的にしていました。ドローン部品メーカー2社のメールボックスへのアクセスを確立した後、スパイたちは「軍事用ドローンメーカーを標的にし、ドローン視覚システムの独自ソフトウェア開発キット一式を窃取した」とされています。

その後、彼らはClaudeを使ってこのドローン視覚システムをリバースエンジニアリングし、「その製品アーキテクチャ、ハードウェアの部品構成表、サプライヤーの依存関係、さらには未発表製品の詳細を復元した」ということです。

「軍事用ドローンの制御およびAI視覚関連のファームウェアが特に関心の対象となっていたようです」とレポートは述べています。

このグループはまた、自分たちのハッキングツールがセキュリティ製品に検知されているかどうかを監視する目的でもAIを利用していました。「彼らのインプラントがセキュリティ製品によってフラグを立てられた際、攻撃者はClaudeを使って検知された成果物を体系的に特定・改変し、再展開していました」とレポートは記しています。

「この結果として、AIは防御側にとってのコスト構造を逆転させてしまいました。従来であれば、防御側は新たな検知手法を導入することで攻撃者の作業テンポを鈍らせることができたかもしれません。しかし今や、少なくとも理論上は、能力の高い攻撃者は『ループを閉じる』ことができ、防御側が検知手法を開発・展開するよりも速く従来型のセキュリティ検知を回避できるようになっています」

これがサイバーセキュリティに与えうる影響は甚大なものになる可能性があります。Five Eyes(ファイブアイズ)情報同盟は6月、最先端のAIモデルが「現在の業界予測を上回り、攻撃・防御双方のサイバー能力を根本的に変えてしまう可能性が高い。その時間軸は年単位ではなく、月単位だ」と警告していました。

他のケースでは、サイバー犯罪集団ShinyHuntersの関係者とみられる人物たちが、AIを使って認証情報をスキャンし、不慣れなシステムをマッピングし、被害者からデータを窃取して恐喝に利用していました。Anthropicによれば、あるケースでは、攻撃者は盗んだ開発者トークンから被害者のクラウド環境への完全な管理者アクセスまで、約3時間で到達したということです。

Claudeは、中国湖南省の大学の学部生と特定された2人を含む、中国語話者のグループによっても利用されていました。このグループの活動の一つには「自律的な脆弱性研究プログラム」の維持があり、その「中核をなしていたのは、あるメジャーなセキュリティ製品に対する継続的な調査」であり、そこから複数のゼロデイ脆弱性を発見していたということです。

Anthropicはまた、複数の欧州の政党、メディア組織、シンクタンクへの攻撃でClaudeを使用したフランス語話者のハクティビストについても説明しています。このハクティビストの具体的な動機については明らかにされていません。

同社は、これらの事例――とりわけこのハクティビストによる複数被害者を対象としたキャンペーン――が、複雑なキャンペーンの遂行に必要な労力と専門知識を減らすことで、AIが国家支援グループと小規模な攻撃者との差を縮めつつあることを示していると述べています。

ただし同社は、AIが従来型の攻撃手法に取って代わっているわけではなく、フィッシング、盗まれた認証情報、公開されたサービス、ソフトウェアの脆弱性が引き続きハッキング成功の中核を占めていると指摘しています。

サイバー作戦以外にも、このレポートは「影響工作、監視、詐欺・不正行為、生物兵器関連の悪用、通常兵器の開発、そして蒸留(distillation)」といった他の悪用事例も取り上げています。

「私たちがこの調査結果を公開しているのは、自社サービスの悪意ある悪用を開示する責任があると考えているからです」とAnthropicは述べています。「モデルの能力が高まるにつれ、AI開発者と社会の防御側が対策を講じてより安全にしない限り、そのリスクも増大していくでしょう」

米国家安全保障会議(NSC)の元ロシア担当ディレクターであるデイビッド・アグラノビッチ氏は、SNS上の投稿で、このレポートは――かつての商用スパイウェア業界と同様に――AIがサイバー作戦への参入障壁を引き下げ、本来自力では構築できなかったはずの国家級の能力を一部の主体に与えつつある実態を浮き彫りにしていると述べました

その後Metaの脅威阻止チームを立ち上げ、現在はGoogleで敵対的セキュリティに携わっているアグラノビッチ氏は、「一部の報道はこのレポートを『Claudeが[悪事]に使われた』という切り口で伝えるだろうが、そもそも私たちがそれを知り得たのは、Anthropicがこの問題を掘り下げて調査し、阻止したからだという点には触れないだろう」と警鐘を鳴らしています。

「こうした情報開示を企業に促す(あるいは義務付ける)インセンティブがなければ、企業は開示をやめてしまうでしょう」と同氏は述べています。

翻訳元: https://therecord.media/anthropic-russia-hackers-claude

本記事は therecord.media の記事を翻訳・要約したものです。