欧州電気通信標準化機構(ETSI)は、技術報告書「ETSI TR 104 171」を公開しました。量子乱数生成器(QRNG)の構築と評価に関する指針をまとめたものです。報告書が焦点を当てているのは、装置本体やそれを支えるシステムの弱点です。こうした弱点があると、生成される乱数の安全性が損なわれるおそれがあります。

QRNGの構成要素(出典:ETSI)
QRNGは、量子的なプロセスを測定し、得られた生の結果を利用可能な乱数に変換します。暗号システムは、鍵の生成をはじめとするセキュリティ機能を果たすために、予測不能な数値に依存しています。攻撃者がこれらの数値を予測できれば、システムの保護は弱まりかねません。
ETSI TC Quantumの議長を務めるMark Pecen氏は、次のように述べています。「量子物理学は真の予測不能性をもたらすのに長けていますが、安全な乱数は実装全体の完全性があってこそ成り立ちます。今回の指針は、重要な時期に登場しました。組織は、量子源をどう検証し、エントロピーが適切に抽出・監視・保護され、それを必要とするアプリケーションへ安全に届けられていることをどう確認するかを、理解する必要があるからです」
報告書は、乱数の発生源から、それを利用するアプリケーションまでの流れを追っています。製造事業者が、発生源を検証し、生の出力を処理し、装置の稼働中に故障を確認するための方法を説明しています。さらに、物理的な改ざん、情報漏えい、そして乱数を他のシステムに届ける接続経路にも触れています。
懸念の一つは、統計テストではランダムに見える数値でも、将来の出力について攻撃者に手がかりを与えてしまう場合があることです。このため、QRNGを評価する際は、装置の仕組みを理解する必要があります。量子源の周辺にある構成要素や、動作条件も含めて考慮しなければなりません。
AIがQRNGの弱点を突く可能性
AIは、QRNGのセンサー、電源、信号処理回路に起因するパターンを、攻撃者が見つける助けになりえます。こうした構成要素は出力にノイズを加えることがあり、そのノイズの一部は予測可能かもしれません。攻撃者は大量のデータを分析し、装置が生成する数値の手がかりになるパターンを探せます。ただし報告書によると、そうした手がかりを見つけて悪用するには、相当な時間と労力がかかる可能性があります。
装置は、消費電力や電磁信号の変化を通じても、手がかりを漏らすおそれがあります。AIは、攻撃者がこれらの信号と生成された数値を結び付ける助けになりえます。この懸念は、同様の構成要素を使う他の種類の乱数生成器にも当てはまります。
この指針は、機密性の高いハードウェアのシールド、生の出力を処理する信頼性の高い手法の採用、運用中の予期せぬパターンの確認を推奨しています。監視を行えば、運用者は故障や干渉の可能性を検知できます。影響を受けた出力を使い続ける前に、対処できるようになります。
あらゆる段階でのチェック
規制対象の環境や高いセキュリティが求められる環境で使うQRNGについて、報告書は「エントロピー・ゼロトラスト」と呼ぶアプローチを推奨しています。このアプローチでは、量子源を検証し、装置の稼働中を通じて監視を続けることを求めています。ハードウェアとソフトウェアの保護策が改ざんを防ぎ、安全な接続が、出力をアプリケーションに届ける途中で守ります。
このアプローチは、複数のユーザーが共有するシステムにも及びます。個別の保護策を設ければ、あるユーザーの出力に生じた問題が、別のユーザーに波及するのを防ぎやすくなります。
装置には、乱数を生成した時刻、稼働していたソフトウェア、出力を発生源までたどれる情報を記録することが求められます。こうした記録は、組織が故障を調査する際に役立ちます。セキュリティシステムが使う乱数を生成した時点で、装置がどのように動作していたかを示す材料にもなります。
ETSIはまた、QRNGを比較するための、より一貫した方法も求めています。比較の対象は、セキュリティ機能、速度、消費電力、サイズ、統合のしやすさなどです。
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/09/28/quantum-random-number-generator-qrng-guidance/