AIがn-day攻撃を加速、脆弱性の開示件数とエクスプロイト件数はともに倍増

2026年、AIは二重の影響を及ぼしています。脆弱性の発見が急増しているだけでなく、既知の脆弱性を狙ったエクスプロイトも同時に急増しています。

攻撃者は、新たなゼロデイ脆弱性よりも、すでに公開された脆弱性を悪用するケースを増やしています。AIツールが、その悪用までの時間を短縮している可能性があります。

Googleの脅威インテリジェンスグループ(GTIG)が公表したレポートによると、今年これまでに実環境で悪用された脆弱性の数は、昨年1年間の総数をすでに上回りました。毎月開示される脆弱性が急増するなか、AIツールは、公開済みのバグに対する実用的なエクスプロイトを作成する時間を短縮する役割を果たしています。

GTIGが記録した悪用済みの脆弱性は、2026年1月から8月までで141件でした。2025年は年間で127件です。月間の脆弱性開示件数もこの間に倍増し、1月の5,045件から8月には10,740件に達しました。

月間の悪用件数は、昨年の10.5件から2026年には約18件へと増加しました。ゼロデイの悪用は、2025年の月8件から今年はこれまでに月11件へと微増にとどまっており、n-dayの増加幅がはるかに上回っています。

Foundryが近く公開するセキュリティ優先事項の調査では、セキュリティ責任者はゼロデイよりもn-dayを大幅に懸念していることがわかりました。ソフトウェアのn-day悪用への懸念は38%、ネットワークのn-day悪用への懸念は37%で、ゼロデイエクスプロイトの25%を上回っています。

GTIGの研究者らはレポートで次のように述べています。「脅威アクターは、新たなゼロデイを発見するよりも、LLMやAIツールを使って製品バージョン間の差分、パッチ、脆弱性の開示情報、概念実証(PoC)コードの分析を自動化し、n-dayを素早く武器化するほうが、手軽で効率的だと考えている可能性があります」

悪用された脆弱性の種類にも特徴があります。高リスクの脆弱性に対するエクスプロイトは、2025年の28件から2026年の最初の8カ月間で75件へと倍増しました。これは、年が進むにつれて高リスクの脆弱性の開示が1月の131件から8月の350件へと急増したことと一致します。

Exabeamでr AI戦略・セキュリティ研究担当バイスプレジデントを務めるSteve Povolny氏は、CSOの取材に次のように語っています。「これは確かに懸念すべきことですが、予想外ではありません。AIモデルが、人間にはほとんど不可能な速度、規模、効率を実現できることは、すでにわかっています。既知の欠陥を見つけ出し、それを悪用する方法を探ることは、AIにとってはいわば当然の用途です」

新規CVEの急増

新たな脆弱性の件数は倍増しました。その一因は、AIモデルやエージェントの活用にあります。ただしGTIGは、オープンソースのエコシステムにおけるCVE採番機関(CNA)の自動割り当てポリシーが、基準値を押し上げている可能性があると警告しています。

たとえば、説明文にLinuxカーネルのみを挙げた脆弱性だけで、1月から8月に約5,000件のCVEが生まれました。そのうち、実環境で悪用されたゼロデイはありません。一方で、特定のベンダー単独で、年内の各時期に高リスクの脆弱性が異常に急増した例もあります。

Totolinkは4月と5月に、コンシューマー向けルーターのファームウェアで高リスクの脆弱性75件にパッチを適用しました。これが、コマンド実行の脆弱性を年央に急増させる要因となりました。また、WebLogicやCoherenceといったミドルウェアを対象とするOracleの四半期ごとの重要パッチ更新(CPU)に、Linuxカーネルのネットワークドライバーに関するアドバイザリが重なり、8月だけで高リスクの脆弱性が128件に上りました。

悪用の面では、開示された脆弱性のうち実際に悪用された割合は0.23%、約431件に1件と、依然としてごくわずかです。ただしGTIGの研究者らは、月ごとの傾向として、CVE悪用の指数化した伸びが脆弱性開示の指数化した伸びとほぼ完全に連動していることに気づきました。このことは、悪用の増加が必ずしも開示の増加を上回っているわけではないことを示唆しています。

実際、脆弱性を追跡している他の企業も、これまで悪用に比べて開示が増えていると指摘してきました。たとえば脆弱性インテリジェンス企業のVulnCheckは、2026年上半期のレポートで、開示された脆弱性に対する悪用された脆弱性の比率が、2023年の2.7%をピークに1.4%まで低下したと報告しました。開示件数のほうが悪用よりはるかに速く増えたことがうかがえます。一方で、CVEの公開から悪用が確認されるまでの期間の中央値は、2025年の120日から2026年上半期には80日に短縮しており、攻撃におけるAIエージェントの影響を示している可能性があります。

攻撃者は境界部分を狙い続ける

GTIGによると、1月から8月に悪用された脆弱性の14%はエッジ機器やセキュリティ機器のもので、その3分の2は重大度が高またはクリティカルでした。エンタープライズ向けのディレクトリやコラボレーション基盤も、さらに11%を占めています。ネットワークエッジの機器は、国家支援のAPTグループとランサムウェア集団の双方に狙われ、過去2年間、主要な初期侵入経路の一つとなってきました。

GTIGの研究者らは、攻撃者がとりわけ認証不要で公開された管理インターフェースを狙うのは、企業のEDR(エンドポイントでの検知と対応)エージェントが見通せないシステムに到達できるためだと説明しています。「CVEの発見件数は急増していますが、攻撃者の悪用活動は、境界に置かれた機器と、公開されたエンタープライズサービスに集中したままです」

AIが発見した脆弱性は深刻度が高い

どの脆弱性がAIモデルの支援で発見されたのかを特定するのは困難です。この情報はアドバイザリに記載されず、記載の慣行もまだ標準化されていないためです。それでも、GTIGがAIエージェントによる発見と判断した脆弱性では、半数以上が深刻度「中」以上でした。開示された脆弱性全体では、その割合は3分の1に届きません。さらに、AIが発見した脆弱性の50%はリモートコード実行を影響として含んでおり、従来の方法で開示されたものでは26%でした。

研究者らは次のように述べています。「この分布は、研究プログラムがこれらのシステムをどのような範囲で、どのように運用しているかを、おおむね反映していると考えられます。外観上の欠陥やコンプライアンス上の警告を探して広範な自動スキャンを実行するのではなく、研究者は、重要インフラや機微な権限境界の監査を自律型エージェントにあえて指示し、影響の大きい発見に焦点を当てています」

悪用の面では、攻撃者がAIエージェントを使ってソフトウェアのパッチを解析し、n-dayの脆弱性に対するエクスプロイトを開発していることを示す証拠があります。たとえばGTIGは5月、「APT45」として追跡している北朝鮮の国家関連グループが、既知の脆弱性の解析とPoCエクスプロイトの検証のため、Geminiに数千件のプロンプトを送信したと報告しています。

Hacktron AIがAI調査エージェントの支援で発見した、BeyondTrust Privileged Remote Access(PRA)およびRemote Support(RS)のOSコマンドインジェクションの脆弱性は、公開から4日以内に、標的型の初期侵入キャンペーンで武器化されました。7日以内には、GTIGがこの脆弱性を悪用する脅威クラスターを合計6つ確認しています。

企業にはAI支援の脆弱性管理が必要

脆弱性の発見と悪用は、中期的にどちらも増えると予想されます。企業は、脆弱性を一括でパッチ適用するやり方から、脅威インテリジェンスを使ってトリアージし、エージェントによる自動修復を導入する方式へ移行する必要があります。

顧客の外部攻撃対象領域の露出をマッピングし、測定しているDetectifyは、インターネットに面した資産に存在する重大度「クリティカル」と「高」の脆弱性の大半が、90日を超えて露出したままになっていると報告しました。同社が12カ月間監視した組織では、検証済みのインターネット公開ドメインが米国で20%、英国で14%増えています。既存の露出を守りきる前に、新たな露出が生まれているということです。

米国サイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は9月22日、CVEプログラムを同庁のいう「成長の時代」から「品質の時代」へ移行させるためのフレームワークを公表しました。同庁は、2026年に9月18日までに公開されたCVEが6万7,000件を超え、年末までに9万6,000件に達する見通しだと指摘しています。フレームワークでは、レコードの品質と網羅性の向上、APIの応答性とシステム稼働率の改善などの施策を提案しています。

しかしFlashpointのシニアディレクターであるFarzad Bakhtiar氏は、整ったレコードが必ずしも実用的であるとは限らないと警告しています。

同氏はCSOの取材に、次のように語っています。「セキュリティチームが知る必要があるのは、その脆弱性に実用的なエクスプロイトがあるか、攻撃者が使っているか、自社の公開資産に関係するか、修正策があるかどうかです。今年のCVE件数は10万件近くに達するペースで、そもそもCVEが一度も割り当てられない脆弱性も多くあります。そうした背景情報があって初めて、脆弱性データは優先順位を決める判断材料になります」

翻訳元: https://www.csoonline.com/article/4230247/ai-accelerates-n-day-attacks-as-flaw-disclosures-and-exploits-double.html

本記事は csoonline.com の記事を翻訳・要約したものです。