Help Net Securityによるこのインタビューで、KuppingerCole Analystsのリードアナリスト兼AI部門プラクティスリードであるJonathan Care氏は、AIセキュリティのスタートアップを、自身がGartnerで定義に携わった黎明期の不正対策市場になぞらえています。同氏は、どのカテゴリーが製品として生き残り、どのカテゴリーが大手プラットフォームの一機能になるのかを解説しています。
Care氏は、第3四半期の資金調達が少数の大型ラウンドに集中していること、サイバー分野のベンチャー投資に占めるイスラエルの割合、エージェントが本番環境に触れる前に組織が整えるべき5つの統制について語っています。さらに、2028年に向けて有望とみる3つのカテゴリーと、そうでない3つのカテゴリーも挙げています。

Care氏はGartnerに長年在籍し、不正対策市場の定義を担当されました。新たなAIセキュリティのカテゴリーのうち、黎明期の不正対策市場を思い起こさせるものはどれでしょうか。また、他社プラットフォームの一機能に収まると予想されるものはどれでしょうか。
不正対策は、当初は製品カテゴリーではありませんでした。決済部門、リスク部門、IT部門の間に横たわる課題で、予算を持つ部署もありませんでした。ベンダーが売っていたのは個別のソリューションです。デバイスフィンガープリンティング、ルールエンジン、後付けの行動分析といったものでした。これが市場へと変わったきっかけは、購入者が、それらのシグナルを統合し、取引の時点でリアルタイムに判断する必要があると気づいたことです。
エージェント型AIのセキュリティもよく似ています。ディスカバリーツール、プロンプトフィルター、ガードレール、AIポスチャー管理があり、それぞれが課題の一部に答えています。生き残るのは、エージェントに何を許可するかを、誰のために動いているのかという文脈を踏まえて実行時に判断するカテゴリーでしょう。つまり、不正対策の判定エンジンの再来です。
では、何が一機能になるのでしょうか。モデルスキャン、AI部品表(AI BOM)、そしてAIセキュリティポスチャー管理の大半です。これらはクラウドセキュリティプラットフォーム、データセキュリティプラットフォーム、開発パイプラインの内部に収まるべきものです。単体のプロンプトインジェクション検知も、先は長くありません。ゲートウェイやモデル提供企業自身のガードレールに吸収されるでしょう。統合はすでに始まっています。今年はCiscoがAstrixを、1PasswordがApono を買収し、Check PointはCyataの獲得に動きました。いずれも、エージェントやマシンのアイデンティティのセキュリティを大手プラットフォームに取り込む狙いです。
第3四半期の資金調達額は前四半期から約50%増加しましたが、案件数はすべてのステージで減少しました。ピッチ資料に「AI」の看板がない、優れたアイデアを持つシリーズAの創業者はどうなるのでしょうか。
資金調達は厳しくなりますが、不可能ではありません。資金は少数の大型ラウンドに集まっており、投資家はEXITが見込めるのはAIだと考えて、AIというパターンで案件を選んでいます。看板のない創業者はそのパターンに逆らうことになるため、代わりに実績で示す必要があります。また、見出しの印象はデータよりも悲観的です。Pinpointの集計では、第3四半期のシード・シリーズAラウンドは62件で、全案件の60%を占め、合計11億6,000万ドルを調達しました。資金はあるのです。ただし、言葉ではなく証拠で勝ち取る必要があります。
私のアドバイスは単純です。面談を取りつけるためだけに、資料へ「AI」と書かないでください。投資家も購入者も見抜きますし、デューデリジェンスで信頼を損ないます。予算枠を持つ購入者、測定可能な成果、具体的に説明できる販売サイクルを示してください。損失を減らす、アナリストの工数を削る、監査指摘を解消するといった成果があるなら、数字で示すべきです。
あまり目立たない好機もあります。エージェントを導入すれば、アイデンティティ、データの取り扱い、ログ記録、サードパーティリスクといった地味な領域のセキュリティに新たな問題が生じます。これらをうまく解決する創業者は、AI企業である必要はありません。AIの導入に欠かせない存在になればよいのです。
イスラエルのスタートアップは第3四半期に少なくとも24億2,500万ドルを調達し、世界のサイバーベンチャー投資の半分近くを占めました。この集中は業界にとって強みでしょうか、それとも単一障害点でしょうか。
どちらでもありますし、この問い方は本当の論点を隠しています。まず数字からです。「半分近く」になるかどうかは、どの世界合計を使うかで変わります。Pinpointの52億6,000万ドルを基準にすれば約46%ですが、Crunchbaseの68億ドルなら3分の1に近づきます。いずれにしても、人口約1,000万人の国としては驚くべき割合です。イスラエルには、攻撃者の側から問題を学んだ創業者が途切れなく輩出されており、これは本物の強みです。投資家はその実績に賭けていますし、その判断はおおむね正しいでしょう。
リスクは地理よりも、モノカルチャーにあります。これほど多くの資金が1つのエコシステムを通じて流れると、創業のパターンも市場投入の定石も似通い、資本政策表に並ぶ投資家まで同じ顔ぶれになりがちです。それが、どの課題に資金が付くかを左右します。技術的に深く、攻撃側の知見を生かした製品は成功しやすい一方で、欧州やアジアの規制対象の購入者を相手に腰を据えて取り組む必要がある課題には、あまり目が向きません。
実務上のレジリエンスの問題もあります。重要インフラや政府の購入者は、ベンダーの開発・サポート部隊がどこにあるかをより注意深く見ています。だからといってイスラエルのベンダーを避ける理由にはなりません。集中している他のサプライヤーと同じように、事業継続に関する質問をするべきだというだけです。
投資家のテーマは、自律的に動作できるソフトウェアの保護に集中しています。宣伝文句を取り払ったとき、エージェントに本番システムを触らせる前に組織が整えるべき最低限の統制は何でしょうか。
エージェントはアプリケーションの一機能ではなく、新しい種類のアイデンティティとして扱ってください。本番環境に触れる前に、次の5つを求めます。
第1に、すべてのエージェントが、所有者、目的、ライフサイクルを備えた固有のアイデンティティを持つこと。共有のサービスアカウントも、人間の認証情報の借用も認めません。
第2に、有効期間が短く範囲を絞った認証情報による最小権限です。エージェントに与えるのは職位ではなくタスクのためのアクセス権であり、そのアクセス権は期限が来れば失効します。
第3に、データの削除、送金、アクセス権の変更、本番環境へのプッシュなど、元に戻せない操作や影響の大きい操作に対する人間の承認ステップです。
第4に、エージェントが何を指示され、何を判断し、実際に何を行ったかについて、インシデント対応担当者が読める形式での完全なログ記録です。
第5に、実際に機能し、誰かがテストしたことのある緊急停止スイッチです。
特別なものは何もありません。自ら判断を下すソフトウェアに、アイデンティティガバナンスと変更管理を適用するだけです。苦労するのは、人間に対するこれらの規律を省いてきた組織で、機械にも必要だとようやく気づいている状況です。
2028年に向けて賭けたい3つのカテゴリーと、賭けたくない3つのカテゴリーを挙げてください。
1つ目は簡単です。エージェントの実行時の認可、つまりエージェントが動く瞬間に、誰のために動いているのかという文脈を踏まえてポリシー判断を行うものです。
2つ目は、人間以外のアイデンティティを第一級の対象として扱うアイデンティティ脅威検知(AI-TDR)です。この母集団は人間よりはるかに速く増えているからです。投資家もすでに同じ見方で、Pinpointの第3四半期データではアイデンティティが23件の取引で最も活発な分野でした。そして3つ目が、AI支援のセキュリティオペレーションです。信じるしかないデモではなく、監査可能な成果によってアナリストの業務負荷を確実に減らすものを指します。
単独のカテゴリーとしては賭けたくないものが3つあります。1つ目は、プロンプトインジェクションのフィルタリング単体です。ゲートウェイやモデルプラットフォームに吸収されるからです。2つ目は、独立した製品としてのAIセキュリティポスチャー管理です。既存のクラウドやデータのセキュリティプラットフォームの内部に収まるべきものだからです。3つ目は、検査だけであらゆるモデルを安全にできると謳う「AIファイアウォール」です。検査は役に立ちますが、設計の代わりにはなりません。
念のために言えば、あるカテゴリーに賭けないことは、そこに属する企業に賭けないことではありません。そのうちの何社かは、より大きなものの一部になることで大きく成功するでしょう。
翻訳元: https://www.helpnetsecurity.com/2026/10/27/jonathan-care-kuppingercole-analysts-ai-security-market/