アフリカで2カ月にわたって実施された作戦により、アフリカ20カ国と米国でサイバー犯罪の容疑者あわせて約1,500人が逮捕されました。盗まれた資金1億500万ドルが回収され、約11,000の悪意あるネットワークが閉鎖されています。
Interpol(国際刑事警察機構)によると、「Operation Serengeti III」と名付けられたこの作戦は、サイバー犯罪者や金融詐欺グループの一斉摘発としては3回目にあたります。ランサムウェア、フィッシング、サイバー手口を使った詐欺を行う集団の壊滅を狙いました。2024年と2025年に実施された過去の取り締まりでは、最初の「Operation Serengeti」で1,006人、昨年の「Operation Serengeti 2.0」で1,209人の容疑者を摘発しており、今回はサイバー犯罪捜査の成果をさらに広げた形です。
逮捕者が増えているのは、各国の法執行機関が捜査手法や、管轄をまたいだ連携の面で成熟してきたからだと、Interpolでサイバー犯罪を統括するNeal Jetton氏は説明します。
「逮捕者数の増加は取り締まりが強化されたことを示すものであり、犯罪の規模が変わったことを意味するわけではありません」と同氏は話します。「法執行の成果は、特定の作戦で逮捕した容疑者の数や特定した被害者の数ではなく、時間の経過とともに被害者が減っているかどうかで判断すべきです」
今回の摘発は、地域のサイバー犯罪者が手口の高度化を進めるなかで行われました。アフリカの加盟国を対象とした調査では、アフリカ36カ国のうち72%が犯罪組織の運営する詐欺拠点を確認しており、サイバー犯罪事件の半数以上でAIが使われていました。内訳は「頻繁に使用」が8%、「時々使用」が47%です。これはInterpolの「African Cyberthreat Assessment Report 2026」によるものです。
このデータは、サイバー犯罪のインフラが急速に改良されていることを示していると、Team Cymruのグローバルデータパートナーシップ担当バイスプレジデントであるJacomo Piccolini氏は指摘します。
「かつては個人が行う手口のように見えた詐欺が、いまでは企業のように運営されています。人材の採用ルートがあり、国際的なスタッフを抱え、人身取引で連れてこられた労働者を使うケースも増えています」と同氏は話します。
国境を越える犯罪組織を摘発
たとえばウガンダでは、2つの国際犯罪組織(TCO)が、台本に沿ったやり取り、偽のウェブサイト、偽の取引プラットフォームを使い、コールセンターを入れ替えながら運営する手口で、アジアの高齢者に金融詐欺への投資を信じ込ませていたと、InterpolはOperation Serengeti IIIの成果に関する声明で述べています。ウガンダの法執行当局はこれらの詐欺組織の解体に成功し、外国籍の365人を逮捕しました。ほぼ全員がアジア各国の国籍だったと、InterpolのJetton氏は話します。
作戦の別の一環として、アンゴラでは国家警察が容疑者9人を逮捕しました。違法な暗号資産マイニング拠点2カ所を解体し、マイニングに使われていた2,000台超の機器と、100万米ドル超相当の違法な変圧器6台を押収しています。サイバー犯罪者によるマイニングは暗号資産を手に入れる常套手段だと、Jetton氏は説明します。暗号資産は、不正な収益を現金化する際に好まれる手段でもあります。
「収益の移動では暗号資産が大きな役割を果たしました」とJetton氏は話します。「この種の詐欺では、いまや主要な資金の流れとなっています」
ナイジェリアでは、警察が2つの詐欺組織を摘発しました。Interpolによると、一方は210万件のメールアドレスを使って大規模なフィッシングとビジネスメール詐欺(BEC)を展開し、もう一方は国際的な投資詐欺に注力して少なくとも240万米ドルの利益を上げていました。
これらの事件は、サイバー犯罪の作戦を支えるAIの役割を浮き彫りにしています。フィッシングとBECの攻撃では、メールアドレスとAIエージェントを使ってLinkedInなどのソーシャルメディアから情報を収集し、価値の高い標的を割り出していたと、Jetton氏は話します。
「AIによって、攻撃者は経営幹部や同僚、取引先の文体をまねた、極めて個人に合わせたフィッシングメールを作成できました」と同氏は述べます。さらに「AIは、犯罪者が何百万件ものメールアドレスを管理して優先順位を付け、大規模な攻撃を仕掛ける助けになりました。音声クローン、ディープフェイク動画、AIチャットボットと組み合わせ、ソーシャルエンジニアリング攻撃をいっそう説得力のあるものにした例もあります」と付け加えました。
成熟する法執行機関の連携
法執行機関どうしの連携により、各国は国境をまたぐサイバー犯罪にいっそう効果的に対処できるようになっています。国際的なパートナーとの協力で、各国は自国内のサイバー犯罪活動の兆候に関する情報を得られると、Team CymruのPiccolini氏は説明します。
「最大の変化はタイミングです。Serengeti 2.0以降、捜査官は作戦の開始前から、不審なIPアドレスやドメイン、コマンド&コントロール(C2)サーバーに関する情報を持って臨んでいます。オープンソース、暗号資産、ランサムウェアの捜査に関する研修も受けています」
こうした連携がなければ、TCOは責任を逃れかねません。アジアの投資詐欺組織のように、他国の市民だけを標的に活動を絞っている場合はなおさらです。
「欧州や北米の被害者を狙う攻撃者は、複数の管轄にまたがるインフラを使うため、1カ国だけでは追及しにくくなります」とPiccolini氏は話します。「国境を越えて見渡せるパートナーと進めるSerengetiのような国際作戦が非常に重要なのは、その点が大きな理由です」
InterpolとTeam Cymruはいずれも、押収したデータなどの情報を捜査官が引き続き活用し、サイバー犯罪の容疑者を追っており、複数の作戦が現在も進行中だと強調しました。