侵害はアイデンティティから始まります。それにもかかわらず、ITDRの料金体系は予算担当者を混乱させます。プラットフォームのモジュール、IdPのSKU、E5バンドル、マネージドサービスがすべて同じ略語を名乗っているためです。
結論を先に述べます。中小企業やMSPにとって公開価格が最も明快なITDRはHuntressです。Microsoft Defender for Identityは、事実上E5環境に標準バンドルされる存在といえます。Sophosはミドルマーケット向けチャネルにマネージドアイデンティティ防御を提供しており、Silverfort、CrowdStrike、SentinelOneといったエンタープライズプラットフォーム層は互いに激しい価格交渉を繰り広げています。
本記事では12のソリューションを1つの表にまとめ、その料金の仕組みを明らかにします。
ITDR比較表(2026年版)
| # | ソリューション | 最適な用途 | 料金モデル | 無料/トライアル | カバー範囲の中心 |
| 1 | Huntress | 中小企業/MSP向け公開価格 | 公開ユーザー単位料金 | トライアルあり | M365/Entraアイデンティティ |
| 2 | Microsoft Defender for Identity | E5環境 | E5バンドル/アドオン | E5トライアル | AD + Entra |
| 3 | Sophos ITDR | ミドルマーケット/MSPチャネル | Sophos Central経由の見積もり | トライアルあり | M365 + ADシグナル |
| 4 | Silverfort | レガシー環境 + サービスアカウント | プラットフォーム見積もり | デモ/PoV | 認証を行うすべてのもの |
| 5 | CrowdStrike Falcon Identity Protection | SOC統合 | モジュール見積もり | トライアルあり | AD/Entra + エンドポイント連携 |
| 6 | Push Security | SaaSアイデンティティの拡散対策 | 公開従業員単位料金 | 無料プランあり | ブラウザ/SaaSアイデンティティ |
| 7 | Semperis | ADレジリエンス | 見積もり | 無料ツール(Purple Knight) | AD/Entra + 復旧 |
| 8 | Delinea(Authomize系列) | PAM隣接型ITDR | プラットフォーム見積もり | デモ | クラウドアイデンティティ + 権限 |
| 9 | Okta Identity Threat Protection | Okta導入企業 | Okta SKU見積もり | Okta経由 | IdPセッション |
| 10 | SentinelOne Singularity Identity | デセプション主導の防御 | モジュール見積もり | デモ | AD + エンドポイント認証情報 |
| 11 | Permiso | クラウド/マルチIdP検知 | 見積もり | デモ | IdP + クラウド + SaaSランタイム |
| 12 | Proofpoint Identity Threat Defense | 攻撃経路の是正 | 見積もり | デモ | エンドポイント/AD経路 + デセプション |
2026年、ITDRの実際のコストとは
公開価格層: Huntressはマネージド型ITDRを中小企業向けの公開料金でユーザー単位・月額課金しています。Push Securityも従業員単位の公開料金を提示しており、小規模チーム向けの無料プランを用意しています。
バンドル層: MicrosoftはDefender for IdentityをM365 E5に組み込んでいます(すでにE5を導入済みであれば追加コストはほぼゼロですが、単体アドオンも存在します)。Okta/Sophosも、すでに導入しているかもしれないプラットフォーム内のSKUとしてITDRを価格設定しています。
プラットフォーム見積もり層: Silverfort、CrowdStrike、SentinelOne、Semperis、Delinea、Permiso、Proofpointはアイデンティティ/ユーザー単位で年額見積もりを提示しており、エンタープライズ規模での導入は通常、数十万ドルから数百万ドル台半ばに達します。複数年契約では20~40%の割引があり、比較検討の場では激しい価格譲歩が行われるのが常です。
注意すべきコストの落とし穴もあります。無料/コミュニティツール(Semperis Purple Knightなど)はセキュリティ態勢の可視化はできても、対応機能は持ちません。「アイデンティティ」の定義もベンダーによって異なります(人間のみを対象とするのか、サービスアカウントやNHI(非人間アイデンティティ)を含むのか、契約書上で明確にする必要があります)。マネージド対応プランは別料金であることが多く、M&Aによってこの市場の価格体系は絶えず変化しています。CrowdStrikeは2026年1月にSGNLを6億2,790万ドルで買収し、Silverfortは2024年11月にRezonateを吸収しました。こうした動きがあるため、契約時の価格固定は重要な検討事項です。【要確認: Huntress/Pushの最新の公開料金】
12のITDRソリューション概説
1. Huntress ― 公開価格で選ぶならベストのITDR

Microsoft 365アイデンティティ向けのマネージドITDRを公開ユーザー単位料金で提供しています。24時間365日体制のSOC担当者が、セッションハイジャックやトークン窃取、不正な受信トレイルール、不審なログインを検知し封じ込めます。対応まで料金に含まれており、追加料金を求められることはありません。MSPによるマルチテナント運用にもネイティブ対応しています。守備範囲はM365中心ですが、中小企業にとってはまさにそこが主戦場です。
ネットワークセキュリティ
2. Microsoft Defender for Identity ― バンドルの標準格

ドメインコントローラーレベルのセンサーが、Kerberoasting、DCSync、パスザチケットといったADキルチェーンを検知します。プラットフォームの所有者だからこそ得られるテレメトリを活用し、Defender XDRに統合されることで自動的な攻撃遮断も実現しています。
E5環境内であれば追加コストはほぼゼロに近づき、この事実がすべての比較軸を変えてしまいます。サードパーティ製IdPやレガシー環境への強制適用には補完が必要です。【要確認: 単体SKUの料金】
3. Sophos ITDR

Sophos専用のITDRは、アイデンティティ検知機能(M365、ADシグナル)をエンドポイントやMDRと並べてSophos Centralに統合しています。チャネル向けに配慮された見積もり、MSP経済性、さらにはSophos MDRと同じSOCによる完全マネージド対応もオプションで選択できます。
ミドルマーケットの統合という点では価値がありますが、アイデンティティの分析の深さでは上位の専業ベンダーに一歩譲ります。
4. Silverfort

認証レイヤーでのインライン強制が特徴です。MFAとリスクポリシーを、他社では守れないレガシーアプリ、コマンドラインアクセス、サービスアカウントにまで拡張します。さらに、Rezonate買収によりクラウドアイデンティティのカバレッジも獲得しています。
クラウドストレージ
プラットフォーム単位の見積もりとなりますが、その分の対価として、競合他社が単なるアラートにとどまる場面でも実際に強制対応を行える点が魅力です。サービスアカウントの問題だけでも、選定候補に入れる価値があります。
5. CrowdStrike Falcon Identity Protection

Falconコンソール内でAD/Entraのリアルタイム認証分析をエンドポイントテレメトリと融合させ、危険なログインをその場でブロックまたは段階的検証にかけると同時に、アイデンティティインシデントをエンドポイントの状況と自動的に紐付けます。
Falcon導入企業には相性の良いモジュール単位の見積もりです。SGNL買収は、アクセスオーケストレーションへのさらなる野心を示すものといえます。
6. Push Security ― SaaSアイデンティティの挑戦者

ブラウザベースのITDRです。拡張機能が全SaaSアプリにわたる従業員のログインを監視し、シャドーアイデンティティ、パスワードの使い回し、MFA未設定、セッションを狙ったブラウザ内フィッシングを検出します。料金は公開の従業員単位制で、無料プランもあります。
どのIdPも把握できない拡散状況こそ、Push Securityがまさに可視化する対象です。ただし、エンドポイントやADの深掘りは本来の使命ではありません。
7. Semperis

検知に加え、他社が到達できない復旧機能まで備えているのが特徴です。Directory Services Protectorが悪意あるAD変更を自動的にロールバックし、無料のPurple Knight/Forest Druidがセキュリティ態勢と攻撃経路を可視化し、Forest Recoveryはランサムウェア被害後にADをクリーンな状態で再構築します。
料金は見積もりベースですが、AD停止が事業停止に直結する組織にとって、これは単なるツール料金ではなくレジリエンスへの投資といえます。
8. Delinea(Authomize系列)

PAMから発展したITDRです。2024年のAuthomize買収により、Delineaはクラウドの複数IdPにまたがるアイデンティティ脅威検知能力を獲得しました。SaaS権限の乱用、シャドー管理者、危険なセキュリティ態勢を検出し、自社の特権アクセス管理プラットフォームに組み込んでいます。
すでにDelinea環境を導入し、権限管理とアイデンティティ脅威の可視化を統合したい企業には自然な選択肢です。単体での導入を検討する場合は、専業ベンダーとの機能比較をおすすめします。
9. Okta Identity Threat Protection

IdP内部でセッションリスクを継続的に評価します。EDRやセキュリティスタックからの共有シグナルをトリガーに、セッションの最中でも一括ログアウト、段階的検証、あるいはアプリの権限取り消しを実行できます。
Okta中心の企業にとっては、セッションが実際に存在する場所で対応を行える点が強みです。料金はOktaのプレミアムSKUとして設定されています。AD深部を狙う攻撃には別ツールとの併用が必要です。
10. SentinelOne Singularity Identity

Attivo系列によるデセプション主導の防御です。おとりの認証情報やAD オブジェクトが攻撃者の手口を高精度なアラートに変換し、エンドポイントでの認証情報窃取対策やXDR連携も備えています。
料金はSentinelOneのエンドポイントプラットフォームと並ぶモジュール単位の見積もりです。誤検知がほぼゼロという検知精度が持ち味ですが、デセプションの導入には計画的な展開が求められます。
11. Permiso

IdP、クラウドインフラ、SaaSにまたがるランタイムのアイデンティティ検知を実現しています。単一のコンソールで、人間および非人間のアイデンティティ活動を50以上のインテグレーションを通じて追跡でき、クラウドインシデント対応の実務経験者によって開発されました。
独立系企業として3,910万ドルの資金を調達しており、マルチ環境にまたがるアイデンティティランタイムに特化しています。料金は見積もりベースで、強制対応中心のソリューションを分析面から補完する存在として有力です。
12. Proofpoint Identity Threat Defense

Illusive系列の製品です。悪用可能なアイデンティティリスク(キャッシュされた認証情報、シャドー管理者など)を継続的に発見し、攻撃経路の是正を行うとともに、Proofpointの人間中心のセキュリティスタックの中で「引き算による予防」を実践するデセプション検知を提供します。
料金は見積もりベースで、Proofpointのメール由来の認証情報窃取対策と組み合わせることで最大の効果を発揮します。
価格と適合性でITDRを比較する方法
まず自社のアイデンティティ環境を基準に据え、そのうえで見積もりを「保護対象アイデンティティ1件あたりのコスト」に換算して比較しましょう。その際、「アイデンティティ」の定義にサービスアカウントやNHIを含めるのか、意図的に除外するのかを明確にしておく必要があります。
E5導入企業は、Defender for Identityの限界費用がほぼゼロである点を基準にすべてを価格評価し、実際に不足している部分だけを追加購入すべきです(レガシー環境の強制対応にはSilverfort、復旧にはSemperis、SaaSの拡散対策にはPushといった具合です)。
中小企業やMSPは、コンソールそのものではなく、公開価格(Huntress、Sophos)で成果を買うべきです。
エンタープライズ企業は、Kerberoasting、DCSync、トークン窃取、MFA疲労といった具体的な攻撃手法を軸に2つのプラットフォームベンダーを比較検討し、アラート量ではなく対応能力(ブロック/ロールバック/失効)を評価してください。契約に際しては、統合の波を見据えて価格固定、ロードマップの確約、データエクスポートの条件を盛り込むべきです。
ITDRはゼロトラストプログラムを拡張するものであり、ZTNAと組み合わせて使われることが多く、すでに導入済みのEDRスタックとの重複領域も年々広がっています。
FAQ(コストに関する質問)
2026年、ITDRの料金はどのくらいですか?
公開価格層では、中小企業向けのユーザー単位月額料金が主流です(Huntress、無料プラン付きの従業員単位課金のPushなど)。
バンドル層では、M365 E5内であれば追加コストはほぼゼロ、またはIdPのSKUとして課金されます。プラットフォーム層では、エンタープライズ規模でアイデンティティ単位の年額見積もりが数十万ドルから数百万ドル台半ばに達し、複数年契約であれば20~40%の割引交渉が可能です。
Defender for IdentityはE5導入企業にとって本当に「無料」なのですか?
すでにE5の料金を支払っているのであれば、追加コストはほぼゼロに近くなります。この事実が、Microsoft環境におけるITDR比較のすべての前提を変えてしまいます。
正確に評価するなら、E5そのものの費用に加えて、Defender for Identityが埋め切れない部分、すなわちレガシー/サービスアカウントへの強制対応、サードパーティ製IdP、SaaSセッションの拡散対策、AD復旧の費用も含めて考える必要があります。
中小企業にとって最も低コストで信頼できるITDRは何ですか?
Huntress Managed ITDRです。公開されたユーザー単位料金でありながら、24時間365日体制の実際の対応が料金に含まれています。あるいは、SaaSアイデンティティの拡散が喫緊の課題であるなら、Push Securityの無料プランも選択肢です。どちらも、監視の行き届かないエンタープライズ向けコンソールをどんな価格であっても凌ぎます。
なぜエンタープライズ向けITDRの見積もりはこれほどばらつくのですか?
「アイデンティティ」の数え方がベンダーごとに異なるためです(ユーザーのみか、サービスアカウントを含むか、さらにNHIまで含むか)。対応の深さも異なり(アラートのみか、インラインでのブロックか、復旧まで含むか)、プラットフォームベンダーはバンドル販売の中でモジュールを大幅に値引きすることもあります。保護対象アイデンティティ1件あたりのコストに換算し、対応能力を項目ごとに洗い出したうえで比較検討してください。
無料のITDRツールは存在しますか?
実際に有用なものとして、Semperis Purple KnightとForest Druid(ADのセキュリティ態勢と攻撃経路の可視化)、Push Securityの無料プラン、Microsoftの標準搭載Entraシグナルが挙げられます。これらはリスクの露出を可視化するものであり、継続的な検知と対応には有料プランが必要です。
注意すべき隠れたコストは何ですか?
検知プランより高額なマネージド対応プラン、プラットフォームベンダーによるモジュールごとの積み上げ課金、アイデンティティテレメトリのログ/SIEM取り込み費用、インライン方式のアーキテクチャ(Silverfortなど)向けの導入サービス費用、そしてSemperisのように検知とは別料金となる復旧ライセンスなどが挙げられます。
契約前にこれら5点をすべて項目化して確認しておきましょう。
まとめ
公開価格の分野ではHuntressが王座を占め、Microsoftはバンドルの標準格として存在感を示し、Pushは挑戦者としてのポジションを確立しています。一方、エンタープライズ層ではSilverfort、CrowdStrike、SentinelOne、Semperisがそれぞれ強制対応、連携分析、デセプション、復旧を武器に競い合っています。SophosとOktaは既存の顧客基盤を活用し、DelineaはPAMとの橋渡し役を担い、Permisoはマルチクラウドのランタイムを監視し、Proofpointは攻撃経路そのものを消し去ります。
保護対象アイデンティティ1件あたりの価格を比較し、具体的な攻撃手法でテストを行い、対応力を買うべきです。アラートだけでは、結局のところ高価な読み物にすぎません。
翻訳元: https://gbhackers.com/itdr-solutions-compared-features-pricing/