WhatsApp上で、被害者のアカウントを丸ごと乗っ取ることを目的とした詐欺が広がっています。
きっかけとなるのは、一見無害で見慣れたメッセージです。多くの場合、すでにアカウントを乗っ取られた知人から、「友人や親戚を応援してほしい」とオンラインコンテストへの投票を頼まれます。テーマはバレエの発表会、犬のコンテスト、学校行事などさまざまです。文面はカジュアルで、時に緊急性を装っており、受け取った相手にすぐクリックさせるよう作られています。

この詐欺は、当社が匿名化して収集しているScam Guardの報告データの中で確認されました。WhatsAppはサイバー犯罪者に好まれるツールであり、詐欺の配信経路としてはウェブサイト、メールに次いで3番目に多く見られています。
一見しただけでは何も不審な点はありません。しかし、そのリンクは実際の投票ページには繋がりません。代わりに、WhatsApp関連に見えるページ(正規のwa.meドメインが使われることも多い)にリダイレクトされ、そこから本当の攻撃が始まります。
この詐欺が成立するのは、「信頼」と「好奇心」を巧みに組み合わせているためです。メッセージの送り主が知り合いであれば、疑うことなく「ちょっとした頼み事」に応じてしまう可能性がぐっと高まります。
この詐欺の一部のバージョンでは、リンクをクリックするとWhatsAppの正規機能である「連携デバイス」機能を悪用する流れに誘導されます。
使用しているデバイスによっては、WhatsAppのページのように見える画面が表示され、「続行」「確認」「接続」を促されます。中には、WhatsApp Webのセットアップや新しいデバイスの連携によく似た手順を踏まされるケースもあります。
その狙いは、被害者を騙して新たな連携セッションを承認させ、攻撃者にWhatsAppアカウントへのアクセス権を与えさせることです。
典型的な流れは次のとおりです。
- 「投票」リンクをタップする。
- WhatsApp関連に見えるページが開く。
- 接続や確認のステップを完了するよう求められる。
- その操作によって、WhatsAppアカウントが攻撃者の管理するデバイスに連携されてしまう。
この詐欺には、もう少し遠回しな手口を使うバージョンもあります。偽の投票ページに誘導する代わりに、メッセージや誘導先のページで「WhatsAppを開いて『連携デバイス』に移動し、詐欺師から提示されたコードを入力するように」と指示するのです。
これらの詐欺師はパスワードを盗もうとしているわけではありません。その代わりに、被害者自身の手でアカウントへのアクセス権を与えさせるよう仕向けているのです。
WhatsAppの「連携デバイス」機能の仕組み
WhatsAppには「連携デバイス」機能があり、ウェブブラウザやデスクトップアプリなど、複数のデバイスで同じアカウントを利用できます。
通常、この機能は次のような手順で使われます。
- スマートフォンでWhatsAppを開く。
- 別のデバイスに表示されたQRコードをスキャンする。
- 接続を承認する。
連携が完了すると、そのサブデバイスは次のことが可能になります。
- メッセージを読む。
- 本人になりすましてメッセージを送信する。
- 進行中の会話にほぼリアルタイムでアクセスする。
しかし、詐欺の手順どおりに操作してしまうと、攻撃者にメッセージや連絡先、進行中の会話へのアクセス権を与えてしまうことになります。
これは正規の機能であり、特にWhatsApp Webでは広く使われています。しかし今回の詐欺では、攻撃者はこの機能を悪用し、被害者の正当な同意を得ないまま同等のアクセス権を得ています。
詐欺師が自分のデバイスをWhatsAppアカウントに連携させてしまうと、そのデバイスが削除されるまで会話へのアクセスを続けられてしまいます。
そこから、攻撃者は次のようなことが可能になります。
- 被害者になりすましてメッセージを送信し、同じ詐欺を被害者の連絡先にも転送する。
- 友人や家族に金銭や機密情報を要求する。
- チャットを読み取り、個人情報を収集する。
この手口は従来のログインを伴わないため、パスワードリセットメールやログイン失敗の警告といった分かりやすい兆候がありません。攻撃者のデバイスは、単にアカウント上の「もう一つの連携セッション」として表示されるだけです。
連携デバイスを確認しない限り、乗っ取りにしばらく気づかないままになる可能性があります。
安全を守るために
この種の詐欺は、被害者の素早い反応と誤った信頼につけ込んで成立しています。いくつかのシンプルな対策で大きな違いが生まれます。
- 知人からの連絡であっても、予期しない「投票」や「応援」の依頼には注意する。
- 予期しないリンクはクリックしない。特に、すぐにWhatsAppアカウントの確認・接続・連携を求められる場合は要注意。
- 自分から操作を開始した場合を除き、デバイスの連携やQRコードのスキャンを指示されても絶対に従わない。
- WhatsAppの連携デバイス一覧(設定 > 連携デバイス)を定期的に確認し、見覚えのないデバイスはログアウトさせる。

- さらに一段階の保護としてWhatsAppの2段階認証を有効にする。
- メッセージに違和感を覚えたら、行動を起こす前に別の手段で送り主に確認する。
- Malwarebytes Scam Guardも、こうした詐欺の発見に役立ちます。Android・iPhone向けのMalwarebytes Mobile Securityアプリに標準搭載されています。
すでにアカウントが乗っ取られた疑いがある場合は、直ちにすべての連携デバイスからログアウトし、連絡先の相手にも注意を促して、後続の詐欺に引っかからないようにしてください。
侵害指標(IOC)
これらのドメインは通常短命で、すぐに新しいものに置き換わります。しかし、同様の詐欺を見分ける手がかりとして役立つかもしれません。
ngdance[.]fun/votefokindenfo1[.]lol/home/voteeeg3
stardancer[.]fun/home/voteCZ03
thebestscollato[.]top/home/scolatica
vatiter[.]click/home/voteerok
megadencer[.]top/home/eng10