研究者が、eMudhraの中間認証局8件の秘密鍵を数秒で復元しました。証明書の偽造やWebサイトのなりすましにつながるおそれがあります。
GoogleとMozillaによると、インドのデジタルトラストプロバイダーであるeMudhraが運用する中間認証局8件の秘密鍵が漏えいしました。攻撃者が信頼される証明書を偽造し、Webサイトやサービスになりすます可能性があります。
「10月17日20時06分(UTC)、Chrome Rootプログラム経由で転送された報告が[email protected]に届きました。eMudhraの中間証明書8件の秘密鍵が漏えいしているという内容です」。Mozillaのエンジニアリングチームに所属するDennis Jackson氏は、Mozillaの公開バグレポートにこう書いています。「漏えいした中間CAのいずれかの秘密鍵を入手した攻撃者は、あらゆるWebサイトやサービスになりすませます」
Mozillaはその日のうちに、独自に鍵を復元し、脆弱であることを確認しました。
「Mozillaは、最初の報告者が用いた手法を知らない状態でも、21時48分(UTC)に対象証明書の秘密鍵を独自に復元できました」とJackson氏は報告に追記しています。同氏は、この結果から「鍵の生成プロセスに欠陥があり、悪用は極めて容易だ」と確認できたと述べています。
報告を寄せたのはWayneと名乗る研究者で、Chrome Rootプログラムが転送しました。Mozillaは報告を受理し、続いてFirefoxで該当証明書のブロックを開始しました。
Mozillaの報告によると、eMudhraは報告を認め、調査中だと説明しました。
「eMudhraの認証局秘密鍵の一つは、数字の4です」。セキュリティ研究者のScott Helme氏は、別の分析でこう書いています。ほかの2つの鍵の値は56と115だったといいます。Helme氏は、公開されている証明書から8件すべての鍵を1秒未満で復元しました。
Googleのセキュリティブログによると、影響を受けた8件の中間証明書のうち6件は、ブラウザやアプリケーションがWebサイトの認証と暗号化接続の確立に使うTLS(Transport Layer Security)向けでした。残る2件はコード署名用です。
「これらの証明書の秘密鍵は、ランダム性が不十分な状態(暗号学的エントロピーが弱い状態)で生成されていました。そのため、これらのCAへの信頼をまだ解除していないクライアントに対しては、誰でも信頼されるHTTPS証明書を偽造し、あらゆるWebサイトになりすませる状況でした」とGoogleはブログに記しています。
ブラウザーによるブロックと企業への影響
Googleのセキュリティブログによると、同社のChrome Rootプログラムは報告を受けて、対象の中間認証局をブロックするChrome Revocation List Setの更新を配信しました。
「Chromeユーザーは、ブラウザーの更新や再起動をしなくても、これらの鍵を共有するすべての証明書から直ちに保護されました」とGoogleはブログに追記しています。AndroidデバイスとChromebookにも、Google Play開発者サービス経由で同等の更新が配信されました。
Googleによると、ブロック措置の前に、影響を受けた6件の中間証明書にチェーンするTLS証明書がCertificate Transparencyログに現れた形跡はありませんでした。また、これらの認証局が発行した不正な証明書は、Chromeの既定設定を含め、Certificate Transparencyを強制するクライアントに対して使えなかったとしています。
Mozillaはセキュリティブログで、標準設定のFirefoxユーザーへのOneCRLブロックの配信が完了したと説明しました。カスタム設定のためにブロックを受信できなかった可能性があるユーザー向けにも、更新を発表しています。
Googleは、影響を受けた中間証明書に署名していたemSign ECC Root CA – G3証明書をChrome Root Storeから削除したと明らかにしました。この変更は、同ストアに依存するすべてのデバイスに10月27日に反映される予定です。
企業のアプリケーションには別途の確認が必要
Security Brigadeの創業者兼CTOであるYash Kadakia氏は、移行が必要な正規の証明書は約3万件に上ると推計しています。同氏によると、影響を受けた階層を使う政府機関や公共部門のWebサイトでは、代替の証明書を期限内に導入できなければ、ブラウザーの警告表示やアクセス障害が起きる可能性があります。
「これは8つの鍵が漏えいしただけの問題ではありません。世界のインターネットにおける信頼の連鎖そのものにかかわる問題です」とKadakia氏は語ります。「一つの認証局の失敗が、その認証局と一度も取引のない組織の認証まで揺るがしかねません」
Kadakia氏は、企業のセキュリティチームは、決済ゲートウェイ、ベンダー連携、古いJavaアプリケーション、モバイルアプリ、ネットワーク機器を確認すべきだと指摘します。これらはブラウザーとは別の証明書トラストストアを使っている場合があるためです。
「セキュリティチームは、自社のサービスが提示する証明書と、自社のアプリケーションが信頼する認証局の両方を洗い出す必要があります」と同氏は述べました。さらに、相互署名(クロスサイン)されたチェーンも含め、影響を受けるクライアントが漏えいした鍵で署名された証明書を拒否するかをテストするよう、各組織に助言しています。
Cloudflareは10月20日付のインシデントレポートで、10月19日に漏えいを把握し、コンテンツ配信ネットワーク、開発者向けサービス、Zero Trust製品の全体に緩和策を展開したと説明しました。共有のトラストストアとベースイメージも更新し、Cloudflare OneクライアントとCloudflare Tunnel向けの更新も公開しています。
「当社のセキュリティレビューでは、Cloudflareのサービスにおいてこの問題が実際に悪用された形跡は確認されていません」と、同社はレポートで述べています。
eMudhra「エンドエンティティ証明書は発行していない」
eMudhraはインシデントに関する声明で、影響を受けた中間認証局は2025年4月の鍵生成セレモニーで作成されたと説明しました。ルートCAの秘密鍵やほかの中間認証局には影響がないとしています。
「本番環境に展開済みのものを含め、これらの中間CAがエンドエンティティ証明書を発行した実績はありません」と同社は述べています。社内分析は公開されているCertificate Transparencyの記録でも裏付けられており、インシデントの調査とセキュリティ統制の見直しを進めているといいます。
Kadakia氏は、エンドエンティティ証明書が発行されていないことは安心材料だとしたうえで、漏えいした中間鍵を持つ者は、eMudhraに申請しなくても不正な証明書を生成できると指摘しました。
eMudhraは、コメントの求めにすぐには応じませんでした。