9月に英国の航空管制サービス会社NATS(National Air Traffic Services)で発生した大規模なIT障害について、サイバーインシデントが原因ではなかったものの、経済に数千万ポンド規模の損失をもたらしたことが、新たな報告書で明らかになりました。
サイバー・モニタリング・センター(CMC)は11月4日に公表した報告書で、英国経済への損失額は約3,300万ポンド(4,400万ドル)、影響を受けた国内組織は70に上ったと説明しています。
ただしCMCのモデル化した推計範囲によると、損失は最大4,200万ポンド(5,660万ドル)に達した可能性があります。この数字は、1,152便の欠航に加え、大幅な遅延や目的地変更が発生したことで、英国の航空会社、空港、地上業務、ツアーオペレーターが被った損失を反映したものです。
海外の航空会社への影響を含めると、1,800便の欠航を前提に、損失は最大7,600万ポンド(1億240万ドル)に達する可能性があります。英国以外のその他の組織への影響は評価されていません。
CMCは、欠航または2時間を超える遅延の影響を受けた乗客は45万人に上ると推計しています。
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悪意ある攻撃によるものではありませんが、今回のインシデントは、重要分野における事業とITのレジリエンス(回復力)向上が依然として課題であることを浮き彫りにしました。
報告書は次のように指摘しています。「2024年のCrowdStrikeのソフトウェア障害と同様に、単一の重要な技術の不具合が英国の組織全体に広範な混乱を引き起こしうることを、今回の件も示しています」
「今回の事案の重要性は、損失の規模そのものよりも、航空システムの実態を示している点にあります。単一の重要システムで起きた短時間の停止が、航空会社の運航スケジュールを数日間にわたって混乱させました。しかも、コストのほとんどはNATSではなく、航空会社などの組織が負担しました」
CMCによると、NATSはすでに2018年のNIS規則により、特定のセキュリティとレジリエンスに関する義務を課されています。新たなサイバーセキュリティ・レジリエンス法案には、同様のインシデントの再発防止に役立つ内容は含まれていないということです。
ただしCMCは、新しい制度によってインシデントの報告や監督のあり方が改善される可能性はあるとしています。
得られた教訓
CMCによると、障害の原因は、国家空域システム(NAS)のレガシーソフトウェアに存在していた「未知の欠陥」でした。「航空機識別コードの定型的な要求と、より優先度の高いシステムメッセージが、約1ミリ秒以内に衝突した」ことが引き金になったといいます。
破損したフライトデータは午前10時に最初に現れ、午後12時45分には英国発のすべての出発便が停止されました。午後1時32分に自動化システムのリンクが失われると、NATSは重大インシデントを宣言し、大幅な交通制限を含む手動の代替手順に移行しました。
フライトデータシステムは3時間半以内に復旧しましたが、飛行制限が解除されたのは夜になってからで、旅行者への影響ははるかに長引きました。
CMCは航空業界に対し、次の取り組みを推奨しています。
- システム停止中に、NATS、航空会社、空港の間の連携がどの程度機能したかを検証する
- 状況が確定するのを待つよりも、停止期間の見込みをより早く、より頻繁に評価するほうが、航空会社や空港が混乱をより効果的に抑えられたかどうかを検討する
- 「数時間に及ぶ航空交通容量の制限」を想定し、障害そのものよりはるかに長く続くシナリオも計画に含める
CMC技術委員会の委員長を務めるCiaran Martin氏は、次のように述べています。「組織は、自社が所有するシステムだけでなく、依存しているシステムに潜むリスクも理解し、備える必要があります」
CMCは、未特定のソフトウェア欠陥に起因する障害のリスクについて、「NATSがレガシーシステムに依存し続ける限り、高まっている」と警告しました。
翻訳元: https://www.infosecurity-magazine.com/news/nats-air-traffic-control-fail-cost/