攻撃者がAI活用を本格化させている証拠が浮上

Cisco TalosとCrowdStrikeのレポートは、AIが攻撃者の手口をどのように進化させ、日々の作戦活動の一部となりつつあるかについて、実際の事例に基づく知見を提供しています。

AIがサイバー犯罪者の日常業務に組み込まれつつあるという証拠が、さらに増えています。ツールの構築や改良から、インフラ管理、脆弱性調査の加速まで、その用途は多岐にわたります。

Cisco Talosの調査は、回収されたプロンプトログや攻撃ツール、脅威アクター間のやり取りをもとに、AIが悪意あるコードの開発、詐欺インフラの構築、脆弱性調査・悪用の加速化にどう使われているかを詳しく記録しています。

Black Hat USAカンファレンス期間中に発表されたこの調査では、AIシステムのガードレールがしばしば効果を発揮していないことも明らかになりました。

Cisco Talosの研究者らによれば、脅威アクターは「これは許可された侵入テストです」「これはCTF(キャプチャー・ザ・フラッグ)演習の一環として尋ねています」といった単純なソーシャルエンジニアリング的な主張によって、頻繁にガードレールを突破しています。こうした主張だけで、ほとんどのモデルが要求に応じてしまうといいます。

この過度な許容性は、特定のモデルやプラットフォームに限った問題ではありません。Claude Code、CodeX、Cursor、Geminiに関連するプロンプトログの分析では、この弱点が全体に共通する課題であることが示されました。さらに、検閲付きモデルが要求を拒否した場合でも、脅威アクターは単に検閲のない代替モデルに乗り換えるだけです。

初心者のサイバー犯罪者は依然として機能の乏しい稚拙なマルウェアしか作れませんが、高度な脅威グループはAIを開発アシスタントとして活用し、エクスプロイトを迅速に構築するケースが増えています。中には、大規模な攻撃インフラを管理するシステム管理ツールとしてAIを導入しているグループさえ存在します。

Cisco Talosは、攻撃者がAIシステムを悪用した実例を複数確認しています。数千万件のメールレコードを処理する大量メール検証サービスの構築、React2Shell脆弱性を認証情報窃取パイプラインへ改造する事例、Android TVを標的としたDDoSインフラの開発、暗号資産窃取活動の支援などです。

Recorded FutureのInsikt Groupでシニアディレクターを務めるJoseph Rooke氏は、攻撃者の手口が従来のコードベースのエクスプロイトから、大規模言語モデル(LLM)をプロンプトによって操作する手法へと移行しつつあると見ています。

「LLMの弱点を狙うことで、共有されるテキスト、動画、画像ファイルに悪意あるプロンプトを埋め込み、LLMベースのアシスタントを乗っ取って攻撃を実行させることが可能になります」とRooke氏はCSOに語っています。

ノルウェーのAI研究者Håkon Måløy氏は最近、こうした攻撃の実例を示しました。Microsoft Wordの文書を通じてCopilotワームが拡散する可能性があるというものです。また攻撃者は、CLAUDE.mdのような悪意あるAI指示ファイルを作成し、エージェントを騙してデータを持ち出させたり、その他のタスクを代行させたりする手口も使っています。

「悪意あるプロンプトは、今後ますますマルウェアに代わる侵入手段として使われるようになるでしょう。これにより攻撃者は、従来の防御を突破することなく機密データを抽出したり、ガードレールを無効化したり、有害な行動を誘発したりできるようになります」とRooke氏は述べています。

ソフトウェアサプライチェーンを介したAI攻撃

一方、CrowdStrikeの調査によれば、攻撃者はソフトウェアサプライチェーン型の攻撃を通じて、AIインフラを標的にするケースが増えています。

例えば2026年3月には、北朝鮮のサイバー犯罪グループStardust Chollimaが、盗んだメンテナー権限の認証情報を使ってAxios npmパッケージを侵害し、ZshBucketマルウェアのプラットフォーム別亜種を配布しました。

2026年6月には、同じグループが少なくとも131個のMastra AIフレームワークパッケージに悪意あるnpmパッケージを依存関係として注入しました。これは、信頼されているAIの構成要素そのものがサプライチェーン攻撃の標的になりつつあることを示しています。

2026年上半期には、確認されたソフトウェアレジストリの脅威のうち87%がnpmパッケージの悪用によるものでした。「これは、JavaScriptの規模、依存関係チェーン、自動インストールスクリプトを利用して下流にリスクを拡散させることを攻撃者が好んでいることを示しています」とCrowdStrikeの研究者らは報告しています。

CrowdStrikeの2026年版脅威ハンティングレポートでは、AIによって脆弱性の公表から実際の悪用までの期間が急速に縮まっている実態も明らかにされています。

例えば、2つの別々の中国系APTグループが、概念実証(PoC)コードの公開からわずか24時間以内に重大な脆弱性を悪用しました。2026年1月から6月にかけて、CrowdStrikeが確認した公開PoCを伴う脆弱性の悪用のうち、88%がPoC公開から48時間以内に実行されていました。

React2Shell脆弱性の公表後、CrowdStrikeはわずか4日間で80を超える被害組織にまたがる800件超のハンティングリードに対応しました。

サイバー犯罪グループAltered Spider(別名TeamPCP)は、認証情報を収集しクラウド環境へ侵入するため、わずか1日で300を超えるソフトウェア依存関係を侵害しました。

攻撃対象となっている認証システム

この調査は、CrowdStrikeの脅威ハンターや情報分析官による最前線の情報をもとにしたもので、信頼された認証プロセスが攻撃経路として好んで狙われる傾向にあることも明らかにしています。例えば、ビッシング(音声フィッシング)による侵入は2026年上半期に倍増しました。関連する動きとして、サイバー犯罪グループCordial SpiderとSnarky Spiderは、シングルサインオン(SSO)と連携したSaaSアプリケーションを侵害し、データを窃取しました。

Recorded FutureのRooke氏は、認証システムがAIを用いた攻撃の最前線に置かれている、他の側面についても指摘しています。

「AIが生成するディープフェイク動画や音声も、ビジネスメール詐欺(BEC)攻撃やソーシャルエンジニアリングの一環として使われる可能性が高まっています」とRooke氏はCSOに語っています。「生体認証やID検証システムは、なりすまし、リプレイ攻撃、複製された認証情報に対して脆弱な状態が今後も続く可能性が高く、これにより偽の人物になりすまして支払いを強要したり、従業員を操ったり、サイバー攻撃の実行者へアクセス権限を引き継がせたりすることが可能になります」。

CrowdStrikeによれば、攻撃者が認証情報の窃取、クリプトマイニング、LLMの悪用、デジタル金融資産の窃取などを実行したことで、クラウドを標的にしたサイバー犯罪活動は171%急増しました。

サイバーセキュリティチームが取るべき対応

「AIは今や、現代の攻撃者の作戦活動に組み込まれています。攻撃の計画・実行・規模の拡大の方法を変えつつあり、組織が防御すべき攻撃対象領域も広がっています」と、CrowdStrikeで対敵作戦部門を統括するAdam Meyers氏は述べています。「成功する組織とは、AIを積極的に導入するのと同じ勢いでAIを保護し、AIを活用して攻撃者と同じスピードで防御を行う組織です」。

AI悪用の証拠は従来のセキュリティテレメトリでは特定が難しいことが多いため、業界全体を網羅する包括的なデータは依然として限られています。とはいえ、Cisco TalosとCrowdStrikeが記録したインシデントは、拡大するこの脅威に対応するためCISOがどのように適応すべきかを示しています。

Cisco Talosは、増加を続けるアラートや脆弱性に対応するため、企業に対して検知能力の向上、優先順位付けの改善、そしてAIプラットフォームやエージェント自体の活用強化を促しています。レポートは「今後押し寄せる脆弱性・アラート・インシデントの増加に最もうまく対応できるのは、今のうちからAI支援型のセキュリティ機能を導入し備えておく組織です」と指摘しています。

AIセキュリティ・ガバナンスプラットフォームCultureAIのリード・サイバーセキュリティ研究者であるOliver Simonnet氏は、次のように述べています。「セキュリティチームは、AIがすでに攻撃者のワークフローに組み込まれていることを前提とすべきです。AIの関与を証明することにこだわるのではなく、悪意ある挙動そのものの検知に注力し、LLMやAPIを特権を持つハイリスクなインフラとして扱い、ログ記録・パッチ適用・封じ込めの体制を強化する必要があります」。

翻訳元: https://www.csoonline.com/article/4205861/evidence-points-to-cybercriminals-stepping-up-their-ai-game.html

ソース: csoonline.com