サイバーセキュリティチームは長年、脆弱性スキャンと定期的なペネトレーションテストによって、攻撃者に悪用される前に弱点を洗い出してきました。しかし、現実のサイバー攻撃が予測可能な経路をたどることはほとんどありません。攻撃者は単一の脆弱性を突くのではなく、盗んだ認証情報、設定ミス、一見些細に思えるセキュリティ上の隙を組み合わせて組織のシステム内を進み、重要な資産にたどり着くことが少なくありません。
攻撃が巧妙化するなか、AIはさらに複雑さを加えています。攻撃者はAIを使って偵察を加速し、弱点を見つけ、攻撃の進行に合わせて手法を変えられるようになりました。それでも多くの組織は、依然として特定時点のセキュリティ評価に頼っており、攻撃者の動き方と企業の防御テストとの間の溝は広がっています。Filigranの調査では、セキュリティ担当者の97%が、特定した露出(エクスポージャー)が実際に悪用可能かどうかの判断に苦労していることがわかりました。脆弱性を個別に扱うことの限界が浮き彫りになっています。
IT Security Guruは、Filigranのシニアプロダクトマーケティングマネージャー、Pierre-Loic Kuhn氏に話を聞きました。テーマは、アタックチェーニング(攻撃の連鎖)の重要性の高まり、脆弱性の深刻度が現実のリスクを必ずしも反映しない理由、自律型AIエージェントがペネトレーションテストとレッドチーミングをどう変えているか、そして継続的なセキュリティ検証へ移行するうえで人による監督が不可欠な理由です。
Q:サイバーセキュリティチームは長年、個々の脆弱性や攻撃手法をテストしてきました。それが現実の攻撃の実態を反映しなくなっているのはなぜですか。
現実の攻撃者は、一つの攻撃を試して終わりにはしないからです。攻撃者には目的があり、うまくいくまで侵入口や手法、ツールを変えて試し続けます。家に侵入しようとする泥棒を考えてみてください。玄関が施錠されていても、そこで諦めはしません。鍵をこじ開け、裏口を試し、開いている窓がないか確かめます。中に入れば、合鍵を探し、警報を鳴らさずに動く方法を考え、金庫の場所とその開け方を突き止めようとします。サイバー攻撃も同じです。攻撃者はフィッシングメールや盗んだ認証情報、パッチ未適用のWebサーバーから最初のアクセスを得ます。その後、権限を昇格させ、横展開(ラテラルムーブメント)し、永続化の仕組みを作り、最重要資産を目指します。各ステップは、直前のステップで得た成果をすべて利用します。
つまり、単一のCVEや単一のATT&CK手法だけをテストするのは、玄関の鍵を確認して「この家は安全だ」と言うようなものです。それも有益ではありますが、庭から金庫までたどり着けるかどうかはわかりません。本当のリスクは、多くの場合、各ステップがどうつながるか、そして対策同士の隙間にあります。これが、敵対的エクスポージャー検証への転換です。「自社は脆弱か」と問うのをやめ、「実際の攻撃者が実際のやり方で攻めてきたとき、自社の防御は止められるか」と問い始めるのです。
Q:アタックチェーンとは具体的に何ですか。また、セキュリティリーダーが個々の脆弱性ではなく、攻撃者がたどりうる経路に注目すべきなのはなぜですか。
アタックチェーンとは、攻撃者が最初の足がかりから目的に到達するまでにたどる一連のステップのことです。実際には、侵害が一つの致命的な脆弱性だけに左右されることはまれです。攻撃者は弱点、認証情報、設定ミス、正規の機能を組み合わせ、価値あるものに到達するまで環境内を進みます。個々のステップだけを見ればそれほど危険に見えなくても、組み合わさることで侵害への現実的な経路になりえます。
だからこそ、セキュリティチームは個々の露出だけでなく、攻撃経路も理解する必要があります。深刻度が「中」の脆弱性や、それより低い弱点が組み合わさり、機密システムへの重大な経路ができることもあります。このチェーンに注目すると、対処をめぐる議論が変わります。脆弱性の一覧を順に処理するのではなく、一つの「チョークポイント」を断てば攻撃者がそれ以上進めなくなる箇所を特定できるからです。セキュリティリーダーにとっては、これが優先順位付けを実際のリスク低減につなげる方法です。
現実的に対処しきれないほどの脆弱性とアラートを、すでにセキュリティチームが抱えている場合、この考え方は特に重要です。たとえば、FiligranのState of Threat Management調査では、84%の組織が、すでに把握していながら優先順位を付けていなかったリスクを突く攻撃に直面していました。したがって目指すべきは、どの露出が実際に自社への攻撃に使われうるのか、それらがどうつながるのか、どれが最も重要なのかを見極めることです。
Q:比較的低い、あるいは中程度のリスクの弱点が組み合わさり、はるかに深刻な攻撃経路になることはありますか。それは組織の対処の優先順位付けをどう変えるべきでしょうか。
もちろんあります。実際、侵害はそうして起きることが非常に多いのです。CVSSのような深刻度スコアは有用な指標ですが、特定の環境で脆弱性がどう振る舞うかまではわかりません。単体では重要度が低く見える弱点でも、別のシステムへのアクセスを与えたり、認証情報を露出させたり、攻撃者が重要資産に近づくことを可能にしたりすれば、はるかに重大なものになりえます。たとえば、深刻度が低いと評価された情報漏えいがサービスアカウントのパスワードを明らかにし、それが機密ファイルサーバーへの直接の経路の第一歩になることもあります。
これは、組織が優先順位付けに苦労する理由の一つです。Filigranの調査では、セキュリティ担当者の97%が、露出が実際に悪用可能かどうかの判断に苦労していました。深刻度の順に脆弱性を処理するだけでは、技術的には深刻でも悪用しにくい問題の修正に貴重な時間を費やし、深刻度は低くても成立しうる攻撃経路を別の場所に残してしまうおそれがあります。
そのためセキュリティチームは、脆弱性管理と並行して攻撃経路管理を考え、スコアだけでなく、何が悪用可能か、何に到達できるか、経路の終点に何があるかに基づいて優先順位を付けるべきです。重要なのは攻撃者の視点から出発することです。「ここから始めたら、次に何ができるか」と考えるのです。継続的な検証は、それに答えるための根拠となり、将来にわたって対処の効果が最も大きくなるチェーン上のチョークポイントを特定する助けになります。
Q:Filigranの調査では、97%の組織が露出の悪用可能性を判断できずにいるとのことでした。脆弱性を特定することと、それが本当のリスクかどうかを理解することの間に、なぜこれほどの隔たりがあるのでしょうか。
脆弱性を見つけることと、それが悪用可能だと証明することは、まったく別の仕事だからです。スキャナーは前者が得意です。ソフトウェアのバージョンを既知のCVEと照合し、深刻度スコアを出します。しかし、コンテキストまではわかりません。そのシステムは実際に到達可能か。EDRやWAFはそのエクスプロイトを阻止するか。代替の対策はすでに講じられているか。攻撃者はそこから何に到達できるか。これらに答えるには、通常はペンテストやレッドチーム演習が必要でしたが、どちらも時間とコストがかかり、実施は年に1、2回です。一方で、新しいCVEは毎週公開されます。その結果、チームは理論上のリスクの長いリストを抱える一方で、攻撃者が実際に使えるのはどれかを示す根拠はほとんど持てません。この隔たりを埋めるには、露出を数えるだけでなく、攻撃者と同じやり方で継続的にテストすることが必要です。
Q:AIは、攻撃者が弱点を見つけ、組み合わせ、悪用する方法をどう変えていますか。防御側のセキュリティチームは追いつけているでしょうか。
端的に言えば、AIは攻撃を二つの面で変えています。各ステップを高速化し、チェーン全体をより適応的にしているのです。
AIは、これまで多くの手作業を要したタスクにかかる時間と労力を圧縮します。偵察、脆弱性の発見、フィッシング、コードの生成と分析は、いずれも加速できます。アタックチェーニングにとってより重要なのは、AIシステムが一つの行動の結果を解釈し、それをもとに次に試すことを決められる可能性があることです。これはまさに人間のオペレーターの振る舞いです。これにより、攻撃活動の速度と適応力が変わります。完全に決まったスクリプトに従うのではなく、AIを活用する攻撃者は予想外の突破口を見つけ、攻撃の途中で進路を変えられる可能性があります。いわば諸刃の剣です。防御側が脆弱性を特定しシステムを守るのに役立つのと同じ種類の技術が、攻撃者が弱点を見つけ、手法を適応させ、活動を拡大するのに要する時間も短縮しうるのです。
防御側にも検証で同等のスピードが必要ですが、多くはまだ後れを取っています。攻撃が数時間で適応する一方、ほとんどのセキュリティテストは年に数回しか行われません。ただし、この差を埋めるとは、あらゆるセキュリティプロセスにAIを加えることではありません。目標は、脅威インテリジェンス、露出データ、検証をつなげ、情報から意思決定へ、意思決定から行動へとチームがより速く進めるようにすることです。自動化が最も価値を発揮するのは、反復作業をなくし、人の専門知識を判断、調査、優先順位付け、対処に集中させられるときです。
Q:年次や定期的なペネトレーションテストは、現代の環境にはもはや遅すぎるという段階に来ているのでしょうか。
従来のペネトレーションテストは、今も非常に価値があります。熟練した人間のテスターが持つ創造性、経験、直感は、自動化システムでは簡単に代替できないからです。物理セキュリティをテストして実体のある脆弱性を探すこともでき、これは最先端のAIでも(少なくとも当面は)再現できません。
問題は、これらの演習が特定時点のものだという点です。クラウド環境、ID、アプリケーション、エンドポイント、設定は絶えず変化します。数か月前、あるいは昨日テストした環境が、今日攻撃者が目にする環境とはまったく違っている可能性があります。
だからこそ、定期的なテストを継続的な検証で補完する必要性が高まっています。Filigranの調査では、セキュリティチームが今も手作業のプロセスに大きく依存していることがわかりました。攻撃シミュレーションで何らかの形で手作業を使っている組織は88%に上ります。同じ調査で、脅威インテリジェンスを継続的で完全自動化された検証プロセスの中で活用しているのは、38%にとどまりました。
自動化により、組織は環境の変化に合わせて、既知の攻撃手法や経路を繰り返しテストできます。人間のレッドチームやペンテスターは、その分、複雑なシナリオや新たな手法、創造的な思考が求められる領域に多くの時間を割けます。そこでこそ彼らの専門性が最大の価値を生みます。「自動ペンテスト」や「継続的自動レッドチーミング(CART)」といった概念が攻撃側チームに取って代わるというのは誤解です。これらは、現代の脅威環境に立ち向かえるようチームの機能を拡張するために存在します。
Q:ペネトレーションテストやレッドチーミングで、自律型AIエージェントはどのような役割を担うべきでしょうか。人間はどこで主導権を保つべきですか。
自律型エージェントの役割は興味深いものです。セキュリティテストをより適応的にできるからです。決まった一連の動作を実行する代わりに、エージェントは目的に向かって作業を進め、各ステップの後に何が起きたかを評価し、最も適切な次の行動を判断できます。これは、現実の攻撃者の振る舞いに近づくものです。
その価値は、規模の拡大と、脅威インテリジェンスを実践的なセキュリティ上の意思決定に変えられる点にあります。セキュリティチームは、脆弱性、ID、設定、対策のあらゆる組み合わせを手作業で調査しテストすることはできません。FiligranのXTM Platformは、脅威インテリジェンス、エクスポージャー検証、リスク低減を、エージェント型の継続的脅威エクスポージャー管理(CTEM)として一つに統合しています。AIエージェントはこのプロセス全体で動作し、コンテキストを共有して、チームが関連する脅威を特定し、どの露出が悪用可能かをテストし、防御を検証し、対応の優先順位を付けるのを支援します。これにより手作業の引き継ぎが減り、アナリストは、どこが露出していてそのリスクをどう減らすかを把握するための、つながったワークフローを得られます。
ただし、人による制御は不可欠です。目的、範囲、許可する行動、エスカレーションの境界は、人が定めるべきです。自律型セキュリティテストは、実務担当者が調査できる範囲を広げるものであるべきで、その行動は、環境に責任を持つ人々から見える状態で、説明責任を果たせるものでなければなりません。
OpenAEVのAttack Chainingでは、攻撃側チームがどこまで自動化するかを選べます。すべてのステップを完全に手動で制御しながら構築・実行することも、シナリオ生成から実行までのプロセス全体をエージェントに完全に任せることも可能です。その中間のどこかに人を介在させることもできます。
Q:自律型セキュリティテストには、それ自体のリスクがありますか。どのようなガードレールが必要でしょうか。
もちろんあります。稼働中の環境の中でAIシステムに行動を取らせるには、モデルにアラートを要約させるよりはるかに慎重な検討が必要です。範囲の定義が不十分だと、テストが本番システムに影響したり、機密資産と相互作用したり、予期しない結果を招いたりするおそれがあります。
そのため、ガードレールは最初から自律型テストに組み込んで設計しなければなりません。組織には、どの資産を対象にできるか、どの行動を許可するか、テストをどこまで進めてよいかについての明確な境界が必要です。システムが何をなぜ行っているかを可視化できることに加え、包括的な監査可能性と、人間のオペレーターが介入できる仕組みも欠かせません。すべての行動は記録・監査され、テストが残したものはすべて、人間の攻撃側テスターと同じ規律で後始末されなければなりません。
ただし誤解のないように言うと、私たちはAIエージェントをネットワーク内で自由に動き回らせているわけではありません。エージェントはプラットフォームから指揮・判断を行い、すべての行動は、厳密に定義された範囲内で、管理された同じ実行機構を通じて実行されます。この点は押さえておくべきニュアンスです。
エージェント型セキュリティには、より広い教訓もあります。コンテキストや制御のない自動化は、誤った判断をただ速く自動化するだけになりかねません。組織はAIを導入しても、ある程度の制御を維持するよう努めなければなりません。セキュリティにおいて、自律性には透明性、明確な限界、人間の説明責任が伴う必要があります。
Q:テストで組織の重要システムに至る複数の経路が見つかった場合、セキュリティチームは何から修正するかをどう決めるべきでしょうか。
ここでアタックチェーニングが特に役立ちます。最も重要な発見は、深刻度スコアが最も高い脆弱性とは限りません。複数の成立しうる攻撃経路が共有するチョークポイントにある、対策、認証情報、権限、あるいは露出であることが多いのです。
一つの問題を修正することで、重要資産に至る複数の経路を断てるなら、その対処は、無関係な複数の脆弱性に対処するよりもはるかに大きなリスク低減をもたらす可能性があります。したがってセキュリティチームは、対処を個別の発見事項が積み上がっていく待ち行列として扱うことをやめ、どの介入が最も大きな防御効果を持つかを理解する方向へ移れます。その方が実態に合っています。
OpenAEVでは、テストした攻撃経路の中で「チョークポイント」が自動的にフラグ付けされます。そこを掘り下げれば、経路がどのように通過したのか、なぜそれが重要なのかを確認できます。チョークポイントを修正すれば、その地点以降の経路は断たれ、一つの修正で下流の多くの攻撃経路を遮断できます。
この判断には脅威インテリジェンスも活用すべきです。自組織に関係する攻撃者、現在彼らが使っている手法、最も重要な資産を把握していれば、どの経路から優先的に対応すべきかを判断するコンテキストが得られます。CTEMのアプローチは、構造化された脅威コンテキストをスコーピング、探索、優先順位付けに取り入れ、さらに検証によって悪用可能性と対策の有効性を確認することで、この課題に取り組みます。
最終的にCISOにとって有益な問いは、「いくつの脆弱性を塞いだか」から、「最も重要な資産に至る現実的な経路のうち、実際にどれをなくしたか」へと変わっていきます。