AIは新しいタイプのリスクをもたらすと同時に、大半のテクノロジー・企業リスク機能では対応しきれないほどのスピードでビジネスプロセスを加速させています。ここでは、イノベーションを妨げることなく業務を守るための新しい発想法を紹介します。
AIが顧客体験や社内ワークフロー、さらにはサプライチェーン全体に組み込まれるようになるにつれ、セキュリティ責任者にはリスク管理以上の役割が求められるようになっています。事業がより的確な意思決定を下し、より速く動けるよう後押しすることが期待されているのです。
その一方で、AIはそれを統制するために構築されたプログラムよりも速いスピードで進化してきました。
その結果、変革のスピードと、セキュリティ・リスク・プライバシー・コンプライアンス・サードパーティリスクの各チームが事業のどこにリスクがあるかを把握する能力との間で、ギャップが広がり続けています。
スピードを保ちつつ、壊さない
AIはプロンプトインジェクションやジェイルブレイクといったリスクをもたらしますが、実際にCISOたちの頭を悩ませているのは、もっとなじみ深い問題です。過剰な権限が付与されたアカウント、不十分なロギング、古いリポジトリに残された認証情報、システム間に散らばる機密データ、脆弱なアクセス制御といったものです。
AIはこれらのリスクに、スピードと到達範囲、そして影響力を加えます。
AIエージェントが企業データやワークフロー、ベンダー、アプリケーションと接続されると、既存の弱点がもたらす被害範囲は急速に拡大します。かつては軽微だったインシデントも、検知しにくく、修復も難しくなり、事業への影響もより深刻になります。
だからこそ、取締役会や経営陣はセキュリティ責任者に対して、先を見据えた助言を求めているのです。彼らが知りたいのは、長期的な価値を損なうリスクを生むことなく、事業がAIを大規模に導入できるかどうかという点です。
「どの取り組みなら安全に加速できるのか、どこにリスクがあるのか、何が変革の足かせになりうるのか、そして今すぐ手を打つべきことは何なのか。それをリアルタイムで教えてほしい」
CISOに求められる役割は、リスク報告からイノベーションの後押しへと進化してきました。
すべてがリスクになれば、優先順位はなくなる
多くの組織では、リスクに関する情報が複数のチームに分散しています。セキュリティ、調達、プライバシー、IT、サードパーティリスクの各部門が、それぞれ独自の視点を持っているのです。
この分断が死角を生み出します。
顧客データを取得し、社内ナレッジベースにアクセスし、後続のワークフローを起動できるAIエージェントを例に考えてみましょう。セキュリティ部門はそのエージェントの存在を把握しているかもしれません。IT部門はどこに導入されているかを知っているかもしれません。調達部門は誰が購入したかを把握しているかもしれません。
しかし、全体を俯瞰する視点がなければ、そのエージェントが適切な権限を持っているか、ポリシーの範囲内で運用されているか、あるいは事業にどのようなリスクをもたらしうるかを判断するのは難しくなります。
とはいえ、可視性を確保するだけでは半分の解決にしかなりません。AIシステムやID、ベンダー、データがめまぐるしい速さで変化していく中、組織はポリシーが実際にリアルタイムで遵守されているかどうかを把握する必要があります。
半年前には有効だった統制も、新たなAI統合やベンダーのアップデート、権限の変更を経た後には、もはや十分ではないかもしれません。
今日のシステムはあまりにも動的であり、これまでの技術スタックに通用してきた運用モデルでは統制しきれなくなっています。
リスク審査からリスク意思決定へ
CISOには現在、何を前に進め、何にガードレールが必要で、何を止めるべきかを、迅速かつ説明可能な形で事業側が決断できるよう後押しすることが求められています。この役割を果たすには、これまでとは異なるアプローチが必要です。
- AIリスクを独立した分野としてではなく、企業リスク全体の一部として扱うこと。AIは、データ・ベンダー・ID・統制・ビジネスプロセスについて組織がすでに下している意思決定の中に組み込まれています。
- モデルではなく、ビジネスプロセスとその文脈から出発すること。そのシステムに依存しているプロセスは何か、扱っているデータは何か、失敗した場合に何が起きるかを理解します。
- 一度きりの承認から、継続的な保証へと移行すること。重要なのは、あるAIプロジェクトが半年前に審査を通過したかどうかではなく、現在、組織のポリシーとリスク許容度の範囲内で運用されているかどうかです。
- 意思決定のスピードを測定すること。何を前に進め、何にガードレールが必要で、何を止めるべきかを、組織がどれだけ迅速に判断できているかを示します。
リスクが事業全体で結びついていれば、優先順位はおのずと明確になります。セキュリティ責任者は、何に対処すべきかだけでなく、何が最も重要なのか、誰が責任を持つのか、そして事業への影響はどの程度になりうるのかを把握できるようになります。
承認済みの利用範囲について共通理解があれば、各チームは場当たり的な審査や画一的なアンケート、一律の制限に頼ることなく、より速く動けるようになります。目指すべきは、事業が現在動いているスピードに合わせて、テクノロジーリスクとサードパーティリスクを可視化し、優先順位をつけ、実行可能な状態にすることです。
この転換が、セキュリティ責任者が自信を持って「イエス」と言えるようにする助けとなります。
変革を守り、イノベーションを拡大する
多くのCISOが今まさに抱えているプレッシャーは、私自身よく理解しています。担当範囲は広がり続ける一方で、リソースは縮小し続けています。
経営陣は皆さんに対し、組織のあらゆる側面を守り、増え続けるリスクとコンプライアンスの要件に対応し、さらには事業戦略を導く上での重要な発言者となることを求めています。
本当に重要なリスクが何かを明確に把握し、それに対して行動を起こすためのツールを備えていれば、皆さんのリスクプログラムは責任ある拡張可能なイノベーションの原動力となり得ます。
OneTrustは、皆さんのビジネスの複雑さとスピードに見合ったリスク・コンプライアンスプログラムの構築を支援します。統合リスクソリューションについて詳しくはこちら。